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5・作業と修行
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「ありがとな」
「ブルル」
城に帰ってきたユウイは自分を乗せてくれた馬への礼にブラシを掛けてやっている。気持ちよさそうに目を細めている馬が可愛らしい。
ユウイは馬の手綱を引いて厩舎に入れてやった。
「良くお休み」
馬たちに手を振る。
「ユウイ殿!購入したものは全て部屋に運んでおきました」
グレイが駆け寄ってきて言う。ユウイは頷いた。
「ありがとうございます、グレイ様。助かります」
購入した商品をユウイは、一人で全て抱えきれなかったのだ。グレイが一緒で良かったとユウイは心の中でホッとしていた。
「では、私はこれから剣技の訓練があるので失礼します」
ユウイに一礼してグレイは行ってしまう。ユウイはしばらく彼の背中を見つめていた。
(あぁ、グレイ様、本当かっこよ)
作業部屋に戻ると確かに購入した商品が置かれている。ユウイは作業の続きを始めた。今日はドレスの上部分を仕上げるつもりだ。袖は出来ているのですぐだろう。
ユウイはミシンを根気強く動かした。
「あ…」
ふと気が付くと日が暮れる寸前だ。先程から勇ましい声が部屋の外からしている。ユウイはそっと部屋を飛び出した。
声のする方へ向かうと、騎士たちが木刀を振り回しながら訓練している。もちろんその中にはグレイもいた。
(グレイ様…!)
心の中でグレイの名前を呼ぶと、グレイがちらりとこちらを見た。ユウイはそれにドキッとする。
咆哮を上げた騎士の一人がグレイに向かっていく。ユウイはいよいよ恐ろしくなって、目をぎゅっと閉じた。
「がっ!」
何かが落ちた音がしてユウイは恐る恐る目を開けた。グレイが倒れた騎士を背負っている。さすが騎士団長を名乗るだけあって、グレイは強いようだ。
(かっこいい)
ユウイはぽっとしながらグレイを見つめていた。
いつの間にか完全に日が落ちている。ユウイは部屋の灯りを頼りに部屋に戻った。
「ユウイ様!やっと帰ってきた!」
むうう、と昨日食事を持ってきてくれた女の子が膨れている。ユウイはしまった、と思ったが嘘を吐くわけにもいかず、正直に謝った。
「ユウイ様がグレイ様を好きなのは皆、知ってるんですよ?」
「えぇ?!」
どこからそんな噂が?と聞ける様子でもない。女の子は膨れながら腕を組んでいる。
「え、えーと」
「あたしはミユ。ユウイ様のお手伝いをするよ」
「ミユ、あ、ありがとう」
ミユは一転して表情を変えて、可愛らしくえへへと笑った。
「ね、ユウイ様。姫様のドレス、どうなるの?」
「あ、あぁ。まだ上部分しか出来てないよ」
ユウイがドレスを着せたトルソーを見せるとミユがわぁと声を上げた。
「可愛いー!いいなぁ、姫様は」
ドレスは女の子であれば一度は憧れるだろう。ユウイも幼い頃はドレスを可愛いな、着てみたいなと思っていた。だが、成人した今ではさすがに厳しいかなと思っている。
「ミユが結婚する時に作ってあげる」
「えー!本当?嘘は嫌だからね、ユウイ様!あたし、ずっと覚えてるよ!絶対だからね!」
「うん、約束ね」
ユウイは小指を立てた。ミユも小指を絡ませてくる。二人でゆーびきりげんまんと歌っていると、村のことを思い出してしまった。
寂しい。―
「ユウイ様?どうして泣いているの?」
ミユが不安そうに見上げてくる。
「ユウイ殿…」
「グレイ様!急にユウイ様が泣いちゃって!」
ミユの声が遠い。ユウイは目を閉じた。
「ブルル」
城に帰ってきたユウイは自分を乗せてくれた馬への礼にブラシを掛けてやっている。気持ちよさそうに目を細めている馬が可愛らしい。
ユウイは馬の手綱を引いて厩舎に入れてやった。
「良くお休み」
馬たちに手を振る。
「ユウイ殿!購入したものは全て部屋に運んでおきました」
グレイが駆け寄ってきて言う。ユウイは頷いた。
「ありがとうございます、グレイ様。助かります」
購入した商品をユウイは、一人で全て抱えきれなかったのだ。グレイが一緒で良かったとユウイは心の中でホッとしていた。
「では、私はこれから剣技の訓練があるので失礼します」
ユウイに一礼してグレイは行ってしまう。ユウイはしばらく彼の背中を見つめていた。
(あぁ、グレイ様、本当かっこよ)
作業部屋に戻ると確かに購入した商品が置かれている。ユウイは作業の続きを始めた。今日はドレスの上部分を仕上げるつもりだ。袖は出来ているのですぐだろう。
ユウイはミシンを根気強く動かした。
「あ…」
ふと気が付くと日が暮れる寸前だ。先程から勇ましい声が部屋の外からしている。ユウイはそっと部屋を飛び出した。
声のする方へ向かうと、騎士たちが木刀を振り回しながら訓練している。もちろんその中にはグレイもいた。
(グレイ様…!)
心の中でグレイの名前を呼ぶと、グレイがちらりとこちらを見た。ユウイはそれにドキッとする。
咆哮を上げた騎士の一人がグレイに向かっていく。ユウイはいよいよ恐ろしくなって、目をぎゅっと閉じた。
「がっ!」
何かが落ちた音がしてユウイは恐る恐る目を開けた。グレイが倒れた騎士を背負っている。さすが騎士団長を名乗るだけあって、グレイは強いようだ。
(かっこいい)
ユウイはぽっとしながらグレイを見つめていた。
いつの間にか完全に日が落ちている。ユウイは部屋の灯りを頼りに部屋に戻った。
「ユウイ様!やっと帰ってきた!」
むうう、と昨日食事を持ってきてくれた女の子が膨れている。ユウイはしまった、と思ったが嘘を吐くわけにもいかず、正直に謝った。
「ユウイ様がグレイ様を好きなのは皆、知ってるんですよ?」
「えぇ?!」
どこからそんな噂が?と聞ける様子でもない。女の子は膨れながら腕を組んでいる。
「え、えーと」
「あたしはミユ。ユウイ様のお手伝いをするよ」
「ミユ、あ、ありがとう」
ミユは一転して表情を変えて、可愛らしくえへへと笑った。
「ね、ユウイ様。姫様のドレス、どうなるの?」
「あ、あぁ。まだ上部分しか出来てないよ」
ユウイがドレスを着せたトルソーを見せるとミユがわぁと声を上げた。
「可愛いー!いいなぁ、姫様は」
ドレスは女の子であれば一度は憧れるだろう。ユウイも幼い頃はドレスを可愛いな、着てみたいなと思っていた。だが、成人した今ではさすがに厳しいかなと思っている。
「ミユが結婚する時に作ってあげる」
「えー!本当?嘘は嫌だからね、ユウイ様!あたし、ずっと覚えてるよ!絶対だからね!」
「うん、約束ね」
ユウイは小指を立てた。ミユも小指を絡ませてくる。二人でゆーびきりげんまんと歌っていると、村のことを思い出してしまった。
寂しい。―
「ユウイ様?どうして泣いているの?」
ミユが不安そうに見上げてくる。
「ユウイ殿…」
「グレイ様!急にユウイ様が泣いちゃって!」
ミユの声が遠い。ユウイは目を閉じた。
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