12 / 13
手がかり
しおりを挟む
「シン、いいか?」
明け方頃、ようやく眠気が襲ってきて、サーラは少し眠った。
夏祭りという楽しいイベントから事態が一転してしまった。
サーラはこれからシンと共に夢の世界に行こうとしている。
マヤが何か遺しているかもしれない。
周りにはナオ、ソフィーがいてくれていた。
「サーラ、無理はしないで」
「シンちゃんも気を付けてね」
夢の中にサーラ以外の人が入るのは初めてのことだ。何がおこるかわからない。
それでもシンはサーラと一緒に行くと言ってくれた。
「シン、目を閉じて私と一緒に数を数えてくれ」
サーラはしっかりシンの手を握った。
シンは頷く。
二人は数を数え始めた。
だんだん意識が深くなっていく。
気が付くと、二人は夢の中にいた。
「ここが夢の世界」
シンが呟く。あたりは暗くて何も見えない。
サーラはシンの手を引っ張った。
「シン、時間がない。早く行こう」
「わかった」
いつこの世界から自分たちがはじき出されるか、サーラはそれを案じていた。
この場所は、言ってしまえばマヤが作り出していた空間だ。
彼女が亡くなったことで、この空間がいつまでもつのか、サーラにもわからない。
早足でサーラは精霊の位置を探っていた。
少し先にぼんやりと灯りが灯っている。
あれは。
サーラの置いてきた精霊がいた。手には明かりのついたランプを持っている。
サーラは彼に駆け寄った。
ぴょこんと彼も跳ねる。
「よかった。無事だったんだな」
サーラは精霊の頭を撫でる。精霊はものは言わないが嬉しそうにまた跳ねた。
「お前はもうお帰り。あとは私がやっておく」
「サーラ、この建物が?」
シンはじっと建物を見つめていた。
「そっくりだ」
「え?」
サーラは彼の顔を見つめた。
「そっくりってどういうことだ?」
サーラの問いにシンは頷いて答えた。
「うん、多分偶然だろうけどさ、母さんと父さんが結婚式をした建物に似てるなあって」
「そうなのか」
だとしたらこの建物は現実に存在しているということだろうか。
「まあ似たような建物ってだけだけどね」
シンはそうはにかんでドアに手をかけた。
今日は札はかかっていない。
ぎいとドアが軋んで開く。
中は真っ暗だった。
誰かいる様子もない。
「サーラ、せっかく来たんだし、なにかないか探してみようか」
「そうだな」
二人は部屋の物色を始めた。
これと言って何かあるわけではない。
サーラはふと気になって手を伸ばした。
(羽根?)
それは青い鳥の羽根だった。
サーラはそれをしげしげと見つめる。
特に変わった様子もない。
「サーラ」
名前を呼ばれてサーラはシンに駆け寄った。
「これ見て」
シンが広げて見せたのはアルバムだった。
だいぶ古いらしい。写真が白黒だ。
その写真は異様だった。
王族らしい人間と、異形の姿をしたなにかが、一緒ににこやかに映っている。
「もしかして、これが神?」
神々は昔から人間に干渉してきていたのだろうか?
サーラはふと気が付いた。
誰かが中に入ってきている。
慌ててシンを引っ張って物陰に隠れた。
「サーラ?」
「しっ」
その誰かはそれ以上中に入ってはこなかった。そして姿を消してしまう。
二人はほう、と安堵の息をついた。
「シン、そろそろ戻ろう」
「うん、なんか僕、ヘトヘトだよ」
シンは疲れ切ったような顔をしている。
サーラは素早く意識を上に向けた。
明け方頃、ようやく眠気が襲ってきて、サーラは少し眠った。
夏祭りという楽しいイベントから事態が一転してしまった。
サーラはこれからシンと共に夢の世界に行こうとしている。
マヤが何か遺しているかもしれない。
周りにはナオ、ソフィーがいてくれていた。
「サーラ、無理はしないで」
「シンちゃんも気を付けてね」
夢の中にサーラ以外の人が入るのは初めてのことだ。何がおこるかわからない。
それでもシンはサーラと一緒に行くと言ってくれた。
「シン、目を閉じて私と一緒に数を数えてくれ」
サーラはしっかりシンの手を握った。
シンは頷く。
二人は数を数え始めた。
だんだん意識が深くなっていく。
気が付くと、二人は夢の中にいた。
「ここが夢の世界」
シンが呟く。あたりは暗くて何も見えない。
サーラはシンの手を引っ張った。
「シン、時間がない。早く行こう」
「わかった」
いつこの世界から自分たちがはじき出されるか、サーラはそれを案じていた。
この場所は、言ってしまえばマヤが作り出していた空間だ。
彼女が亡くなったことで、この空間がいつまでもつのか、サーラにもわからない。
早足でサーラは精霊の位置を探っていた。
少し先にぼんやりと灯りが灯っている。
あれは。
サーラの置いてきた精霊がいた。手には明かりのついたランプを持っている。
サーラは彼に駆け寄った。
ぴょこんと彼も跳ねる。
「よかった。無事だったんだな」
サーラは精霊の頭を撫でる。精霊はものは言わないが嬉しそうにまた跳ねた。
「お前はもうお帰り。あとは私がやっておく」
「サーラ、この建物が?」
シンはじっと建物を見つめていた。
「そっくりだ」
「え?」
サーラは彼の顔を見つめた。
「そっくりってどういうことだ?」
サーラの問いにシンは頷いて答えた。
「うん、多分偶然だろうけどさ、母さんと父さんが結婚式をした建物に似てるなあって」
「そうなのか」
だとしたらこの建物は現実に存在しているということだろうか。
「まあ似たような建物ってだけだけどね」
シンはそうはにかんでドアに手をかけた。
今日は札はかかっていない。
ぎいとドアが軋んで開く。
中は真っ暗だった。
誰かいる様子もない。
「サーラ、せっかく来たんだし、なにかないか探してみようか」
「そうだな」
二人は部屋の物色を始めた。
これと言って何かあるわけではない。
サーラはふと気になって手を伸ばした。
(羽根?)
それは青い鳥の羽根だった。
サーラはそれをしげしげと見つめる。
特に変わった様子もない。
「サーラ」
名前を呼ばれてサーラはシンに駆け寄った。
「これ見て」
シンが広げて見せたのはアルバムだった。
だいぶ古いらしい。写真が白黒だ。
その写真は異様だった。
王族らしい人間と、異形の姿をしたなにかが、一緒ににこやかに映っている。
「もしかして、これが神?」
神々は昔から人間に干渉してきていたのだろうか?
サーラはふと気が付いた。
誰かが中に入ってきている。
慌ててシンを引っ張って物陰に隠れた。
「サーラ?」
「しっ」
その誰かはそれ以上中に入ってはこなかった。そして姿を消してしまう。
二人はほう、と安堵の息をついた。
「シン、そろそろ戻ろう」
「うん、なんか僕、ヘトヘトだよ」
シンは疲れ切ったような顔をしている。
サーラは素早く意識を上に向けた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね


絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる