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ゆらめきのいし
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サーラの話に耳を傾けていたソフィーは頷いた。
「神様は私たちになりたいのよね?
それはどうしてなのかしら?」
サーラもそこまでは聞いていなかったことを思い出す。
夢の語る情報はいつも少ない。
「害がないなら構わないけど、いしが見つかったことが広まって、みんな気味が悪いって不安になってる」
シンの言葉はもっともだ。
サーラですら、枕元に煌めきのいしが置いてあった時、捨てたくてしょうがなかった。
「とにかく神様と話ができればなぁ」
シンがぽつりと言った言葉にみんな沈黙した。
「そうよ!シンちゃん!
話し合いましょう!」
「でもどうするの?」
ナオが首を傾げる。
シンとソフィーはサーラを見つめた。
「サーラ、夢に入れる?」
シンの言葉にサーラは頷いた。自分にできることはなんでもしたい。
「どうすればいいんだ?」
「サーラちゃん、神様が次に現れる場所を予測してほしいの。彼らが本当に人間になりたいと思っているのなら、きっと答えてくれるはず」
「わかった」
サーラは目を閉じた。夢に落ちるときはいつもあっというまだ。
目を開けると、景色が変わっている。どうやらうまくいった。
サーラは立ち上がってワンピースをはたいた。
どうやらここはアデスの広場のようだ。今の時期は夜にも市場が開催されており、明るく人も多い。
でもこれだけ人が多いと、誰が何かをしようとするのを見つけるのは容易くない。
サーラはそれでもと思い、周りを見回した。
屋台の活気で少し安心する。
ふとサーラは立ち止まった。
今は夏のはずなのに、マフラーをぐるぐる巻きにしてコートを着込んだ女性がいる。
彼女は急いでいるらしい。姿を見失わないように、サーラは追いかけた。
サーラが彼女を追いかけていくと、尖塔のある建物にたどり着く。
こんな場所、アデスにはないはずだ。
サーラは一瞬迷って中に入ることに決めた。
木製の扉に閉店の札がかけられている。
サーラはそっとドアを引っ張った。
中は暗かった。下に階段が続いている。
床がきしむ。サーラはなるべくそうっと下へ降り始めた。
「誰?」
階段をあと一段でおりきるといったところで、女性の怯えた声が聞こえた。
ぼんやりとした灯りのもと、サーラは前へ出た。
おそらく安全だろうと踏んだうえでの行動だ。
「お嬢ちゃん?あなた」
女性はサーラを見つめて驚いたような顔をした。
こうしてみると普通の女性だ。でもマフラーを外さない。
「あなたが神様ですか?」
サーラはきっぱり聞いてしまうことにした。
彼女は力なく笑う。
「そうね。昔はそうだった」
「じゃあ今は?」
彼女は笑う。
「今はなにでもないのよ」
「私はイリシアのサーラと言います。あなたに聞きたいことがあります」
彼女は考えているようだ。
「あなた、もしかしてイリシアのお姫様?」
サーラは頷いた。
「そうね、力になれるかはわからない。でもあなたとなら話しても大丈夫そうね」
彼女はマヤと名乗った。
彼女はサーラにぶどうジュースを注いでくれた。
「サーラ、私は人間になりたいの」
マヤはまっすぐサーラを見つめてこう言った。
「じゃあいしを撒いていたのはあなた?」
マヤは頷く。
「私にはまだ神としての力が残っている。それが痕跡として残ってしまうのね」
「でもなんで人間に?」
「神として生き過ぎた」
マヤはもう疲れてしまったと言っていた。
神としての務めに。
「サーラ、神は概念なの。生きているんじゃない。ただいるだけ」
「マヤさん。一度ちゃんとお話がしたいです。私のような子供ではなく、公的な場で」
「そうね」
マヤは頷いてくれた。
サーラは彼女に連絡が取れるよう、仲のいい精霊を彼女のそばに置いた。
「頼んだぞ」
ぴょこんと精霊は跳ねる。
「サーラ、ありがとう」
サーラは意識を上へ向けた。
「神様は私たちになりたいのよね?
それはどうしてなのかしら?」
サーラもそこまでは聞いていなかったことを思い出す。
夢の語る情報はいつも少ない。
「害がないなら構わないけど、いしが見つかったことが広まって、みんな気味が悪いって不安になってる」
シンの言葉はもっともだ。
サーラですら、枕元に煌めきのいしが置いてあった時、捨てたくてしょうがなかった。
「とにかく神様と話ができればなぁ」
シンがぽつりと言った言葉にみんな沈黙した。
「そうよ!シンちゃん!
話し合いましょう!」
「でもどうするの?」
ナオが首を傾げる。
シンとソフィーはサーラを見つめた。
「サーラ、夢に入れる?」
シンの言葉にサーラは頷いた。自分にできることはなんでもしたい。
「どうすればいいんだ?」
「サーラちゃん、神様が次に現れる場所を予測してほしいの。彼らが本当に人間になりたいと思っているのなら、きっと答えてくれるはず」
「わかった」
サーラは目を閉じた。夢に落ちるときはいつもあっというまだ。
目を開けると、景色が変わっている。どうやらうまくいった。
サーラは立ち上がってワンピースをはたいた。
どうやらここはアデスの広場のようだ。今の時期は夜にも市場が開催されており、明るく人も多い。
でもこれだけ人が多いと、誰が何かをしようとするのを見つけるのは容易くない。
サーラはそれでもと思い、周りを見回した。
屋台の活気で少し安心する。
ふとサーラは立ち止まった。
今は夏のはずなのに、マフラーをぐるぐる巻きにしてコートを着込んだ女性がいる。
彼女は急いでいるらしい。姿を見失わないように、サーラは追いかけた。
サーラが彼女を追いかけていくと、尖塔のある建物にたどり着く。
こんな場所、アデスにはないはずだ。
サーラは一瞬迷って中に入ることに決めた。
木製の扉に閉店の札がかけられている。
サーラはそっとドアを引っ張った。
中は暗かった。下に階段が続いている。
床がきしむ。サーラはなるべくそうっと下へ降り始めた。
「誰?」
階段をあと一段でおりきるといったところで、女性の怯えた声が聞こえた。
ぼんやりとした灯りのもと、サーラは前へ出た。
おそらく安全だろうと踏んだうえでの行動だ。
「お嬢ちゃん?あなた」
女性はサーラを見つめて驚いたような顔をした。
こうしてみると普通の女性だ。でもマフラーを外さない。
「あなたが神様ですか?」
サーラはきっぱり聞いてしまうことにした。
彼女は力なく笑う。
「そうね。昔はそうだった」
「じゃあ今は?」
彼女は笑う。
「今はなにでもないのよ」
「私はイリシアのサーラと言います。あなたに聞きたいことがあります」
彼女は考えているようだ。
「あなた、もしかしてイリシアのお姫様?」
サーラは頷いた。
「そうね、力になれるかはわからない。でもあなたとなら話しても大丈夫そうね」
彼女はマヤと名乗った。
彼女はサーラにぶどうジュースを注いでくれた。
「サーラ、私は人間になりたいの」
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「マヤさん。一度ちゃんとお話がしたいです。私のような子供ではなく、公的な場で」
「そうね」
マヤは頷いてくれた。
サーラは彼女に連絡が取れるよう、仲のいい精霊を彼女のそばに置いた。
「頼んだぞ」
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サーラは意識を上へ向けた。
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