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前夜
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コンコン、とサーラはシンの部屋のドアをノックした。
時刻は午前四時を少し過ぎたところ。シンはもう起きているだろう。
「はい」
ドアの向こうからシンの返事が返ってくる。
サーラはそうっとドアを開けた。
「サーラ?どうしたの?眠れなかった?」
「いや、眠れた。大丈夫だ」
シンの部屋は本が沢山ある。
ファンタジー小説から、トマトの作り方まで種類は様々だ。
サーラはシンの隣に腰掛けた。最近はシンとこうして二人きりになることはなかった。
シンはこんなにかっこよかっただろうか。
サーラはぎゅ、とネグリジェの裾を握り締めた。隣にいるシンがまともに見られない。
それでもサーラは聞いた。
「シン、私の話を信じてくれるか?」
「もちろん」
サーラはようやくシンを見つめることができた。
先程見た夢の話をする。
シンは顔をしかめた。
「サーラ、また危ないことを」
「危なくはなかったぞ」
シンはため息をつく。
「母さんに言いつけるよ?」
「それは!」
サーラは慌てた。アムデルに叱られるのはなかなか怖い。
観念してサーラは頭を下げた。
「頼む、シン。アムデル様には言わないでくれ。もう勝手に夢に落ちないと約束する」
「約束だよ」
サーラが頷くとシンはサーラの頬を撫でた。
そうされると、なんだか落ち着かない気持ちになる。
「サーラ、今日はこれから祭りの準備だよ。
もう少し寝ておいで」
「わかった」
ぎゅう、とそのままシンに抱きしめられる。
「僕はサーラが大好きだよ」
「シン、私もだ」
二人はお互いを見て笑った。
サーラは部屋を出て、客間のあるフロアへ戻ってきた。
ふと、立ち止まる。
先程のことを思い出したからだ。
(ん?シンが私を好き?)
そして自分もそれに応じたことも思い出した。
(わ、私もシンが好きなんだ!!)
改めて自分の気持ちに気が付いて、サーラは顔が熱くなるのを感じた。
(あ、あれって告白だったのか?)
いやいや、とサーラは首を振る。
(私からもう一度ちゃんと言おう。シンは優しいから流れで言ってしまっただけかもしれないしな)
よし、とサーラは決めて部屋に戻った。
部屋ではナオが刀の手入れをしていた。
あれからナオはずっとソフィーに付き合っていたはずだ。
「サーラ、どこ行ってたの?」
じと、と見つめられて何だか決まりが悪い。
「いや、ちょっとな」
「シンのところ?」
サーラはぐ、と言葉に詰まった。
この弟は勘が鋭すぎる。
「ちょっと気になることがあって、それで」
「ふーん。とりあえずまだ早いし手入れが終わったら僕は寝るよ、サーラもそうしたら?」
「あ、あぁ」
サーラは横になる。
ナオの刀の柄が時々音を立てる。
ナオの小柄な体に似合わないほどそれは大きい。
「なあ、ナオ」
「ん?」
「なんでシンにつっかかるんだ?今まで仲がよかったのに」
「僕も男だからね」
「?」
サーラにはよくわからなかった。ナオは笑う。
「サーラ、おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
サーラは目を閉じた。
時刻は午前四時を少し過ぎたところ。シンはもう起きているだろう。
「はい」
ドアの向こうからシンの返事が返ってくる。
サーラはそうっとドアを開けた。
「サーラ?どうしたの?眠れなかった?」
「いや、眠れた。大丈夫だ」
シンの部屋は本が沢山ある。
ファンタジー小説から、トマトの作り方まで種類は様々だ。
サーラはシンの隣に腰掛けた。最近はシンとこうして二人きりになることはなかった。
シンはこんなにかっこよかっただろうか。
サーラはぎゅ、とネグリジェの裾を握り締めた。隣にいるシンがまともに見られない。
それでもサーラは聞いた。
「シン、私の話を信じてくれるか?」
「もちろん」
サーラはようやくシンを見つめることができた。
先程見た夢の話をする。
シンは顔をしかめた。
「サーラ、また危ないことを」
「危なくはなかったぞ」
シンはため息をつく。
「母さんに言いつけるよ?」
「それは!」
サーラは慌てた。アムデルに叱られるのはなかなか怖い。
観念してサーラは頭を下げた。
「頼む、シン。アムデル様には言わないでくれ。もう勝手に夢に落ちないと約束する」
「約束だよ」
サーラが頷くとシンはサーラの頬を撫でた。
そうされると、なんだか落ち着かない気持ちになる。
「サーラ、今日はこれから祭りの準備だよ。
もう少し寝ておいで」
「わかった」
ぎゅう、とそのままシンに抱きしめられる。
「僕はサーラが大好きだよ」
「シン、私もだ」
二人はお互いを見て笑った。
サーラは部屋を出て、客間のあるフロアへ戻ってきた。
ふと、立ち止まる。
先程のことを思い出したからだ。
(ん?シンが私を好き?)
そして自分もそれに応じたことも思い出した。
(わ、私もシンが好きなんだ!!)
改めて自分の気持ちに気が付いて、サーラは顔が熱くなるのを感じた。
(あ、あれって告白だったのか?)
いやいや、とサーラは首を振る。
(私からもう一度ちゃんと言おう。シンは優しいから流れで言ってしまっただけかもしれないしな)
よし、とサーラは決めて部屋に戻った。
部屋ではナオが刀の手入れをしていた。
あれからナオはずっとソフィーに付き合っていたはずだ。
「サーラ、どこ行ってたの?」
じと、と見つめられて何だか決まりが悪い。
「いや、ちょっとな」
「シンのところ?」
サーラはぐ、と言葉に詰まった。
この弟は勘が鋭すぎる。
「ちょっと気になることがあって、それで」
「ふーん。とりあえずまだ早いし手入れが終わったら僕は寝るよ、サーラもそうしたら?」
「あ、あぁ」
サーラは横になる。
ナオの刀の柄が時々音を立てる。
ナオの小柄な体に似合わないほどそれは大きい。
「なあ、ナオ」
「ん?」
「なんでシンにつっかかるんだ?今まで仲がよかったのに」
「僕も男だからね」
「?」
サーラにはよくわからなかった。ナオは笑う。
「サーラ、おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
サーラは目を閉じた。
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