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紫色の石
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サーラが気が付くと夢の中に落ちてきたことがわかった。
辺りは真っ暗で何も見えない。
サーラはそっと立ち上がった。
向こうから灯りが近付いてくる。
仲良しの精霊の一人だった。
「来てくれたのか!」
サーラが声をかけるとぴょこんと精霊は跳ねた。
サーラに付いてくるよう言っているようだ。
サーラは精霊の後をついて歩き始めた。
だんだん向こう側が明るくなってくるのがわかる。
そっとあたりを窺って、サーラは明るい場所へ出た。
サーラの姿は見えないが、念を入れておくに越したことはない。
この年齢まで夢見を続けてわかったことだ。
そこには両端に階段があり、まるで舞台のようになっていた。
しかもその舞台は大理石でできているようだった。
(ここはどうも地球じゃないな)
サーラが歩くと、カツンカツンと足音が響く。
誰かの気配を感じて、サーラは咄嗟に隠れた。
隠れてから隠れる必要のないことに気が付く。
まだどうも慣れなくていけない。
サーラは気を取り直して、様子を窺った。
やってきたのは長身の男だった。
傍らには精霊がいる。蝶のような羽を持った精霊だ。
男は精霊に話しかけている。
「そうだよ、また悪さをしているやつがいる。石をばらまいてね」
(石をばらまいている?)
サーラは聞き耳を立てた。
それはアデスで起こっている事象と何か関係があるのだろうか。
「私達は人間に委ねなければいけない。もう私達の力で及ぶ範囲ではなくなっている」
男はそう呟くと、サーラのいる方をふと見つめた。
サーラはドキドキしながらもやり過ごす。見えていないはずだ。
「アデスもイリシアも立派な国に成った。私は人間を信じる。
そう伝えてきなさい」
精霊がふわふわと漂うように飛んでいく。
男はそれを見送ると、再びサーラのいる方を見た。
「そこのお嬢さん。
隠れていないで出てきたらいい」
「私が見えるのですか?」
サーラが立ち上がって尋ねると男は頷いた。
「金色の瞳、夢見の力。
君がサーラ姫」
サーラは驚いた。この人は自分を知っている。
「精霊たちから話を聞いている。
可愛らしいお姫様がいるとね」
「あなたは何者なのですか?」
サーラの言葉に男はしばらく悩んで、こう答えた。
「私は守護する者だよ。
アデス、イリシアを」
「では神様?」
「いや」
男はゆるゆると首を振ってみせる。
「私は神ほど万能ではない。
君たちと変わらないよ」
「いしのこと、聞かせていただけませんか?」
男はまたも首を振る。
「いしは神々の痕跡だ。
私にわかるのはそれくらいだよ」
「痕跡?だとすると?」
「君たちに神々が干渉しようとしている。
彼らは君たちになりたいんだ」
サーラは気が付いた。
夢の世界から帰ってきたらしい。
なんだかとても疲れている。
カーテン越しの窓を見ると、明るくなり始めている。
サーラはそっとベッドからおりた。
辺りは真っ暗で何も見えない。
サーラはそっと立ち上がった。
向こうから灯りが近付いてくる。
仲良しの精霊の一人だった。
「来てくれたのか!」
サーラが声をかけるとぴょこんと精霊は跳ねた。
サーラに付いてくるよう言っているようだ。
サーラは精霊の後をついて歩き始めた。
だんだん向こう側が明るくなってくるのがわかる。
そっとあたりを窺って、サーラは明るい場所へ出た。
サーラの姿は見えないが、念を入れておくに越したことはない。
この年齢まで夢見を続けてわかったことだ。
そこには両端に階段があり、まるで舞台のようになっていた。
しかもその舞台は大理石でできているようだった。
(ここはどうも地球じゃないな)
サーラが歩くと、カツンカツンと足音が響く。
誰かの気配を感じて、サーラは咄嗟に隠れた。
隠れてから隠れる必要のないことに気が付く。
まだどうも慣れなくていけない。
サーラは気を取り直して、様子を窺った。
やってきたのは長身の男だった。
傍らには精霊がいる。蝶のような羽を持った精霊だ。
男は精霊に話しかけている。
「そうだよ、また悪さをしているやつがいる。石をばらまいてね」
(石をばらまいている?)
サーラは聞き耳を立てた。
それはアデスで起こっている事象と何か関係があるのだろうか。
「私達は人間に委ねなければいけない。もう私達の力で及ぶ範囲ではなくなっている」
男はそう呟くと、サーラのいる方をふと見つめた。
サーラはドキドキしながらもやり過ごす。見えていないはずだ。
「アデスもイリシアも立派な国に成った。私は人間を信じる。
そう伝えてきなさい」
精霊がふわふわと漂うように飛んでいく。
男はそれを見送ると、再びサーラのいる方を見た。
「そこのお嬢さん。
隠れていないで出てきたらいい」
「私が見えるのですか?」
サーラが立ち上がって尋ねると男は頷いた。
「金色の瞳、夢見の力。
君がサーラ姫」
サーラは驚いた。この人は自分を知っている。
「精霊たちから話を聞いている。
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「あなたは何者なのですか?」
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「私は守護する者だよ。
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「では神様?」
「いや」
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私にわかるのはそれくらいだよ」
「痕跡?だとすると?」
「君たちに神々が干渉しようとしている。
彼らは君たちになりたいんだ」
サーラは気が付いた。
夢の世界から帰ってきたらしい。
なんだかとても疲れている。
カーテン越しの窓を見ると、明るくなり始めている。
サーラはそっとベッドからおりた。
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