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予知夢
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サーラは今でも、シンの父親、デュースが亡くなった時のことを考える。
もし自分の力が万全であれば、デュースの死は防げたのではないかと。
そのことをシンに話したことはない。シンのことだから自分のせいではないと言ってくれるはずだ。
それでもサーラはずっと悔いている。
だからこそ、今は決意している。強く在ろうと。
あの時、幼かったサーラは、自分の夢に自在に入ったり出たりして遊ぶようになっていた。
仲良しの精霊を連れて夢の世界に入り、朝が来るまで遊ぶ。
学校に行けず、友達と呼べる対象が近くにいなかったサーラにとって、その時間は幸せだった。
(私はあの時、予知夢の解釈ができなかった)
サーラが予知夢に気が付いたのは、昼間に夢に出てきたことが起きるという些細なことからだった。
猫が目の前を横切ったり、皿が割れるなどの日常で起こりがちなことだ。
しかし、ある雪の日、サーラは長い予知夢を見る。
それはシンが猟銃で誤って撃たれてしまうというものだった。
サーラが、あっと思ったときにはシンの胸に弾が当たり血が弾け飛ぶという恐ろしいものだった。
サーラはいてもたってもいられなくなり、自分の父親に事情を話して、アデスへ連れて行ってもらった。
雪の降る中、父親はサーラにこう言った。
「シンに夢のことは話さなくていい」
サーラは父親の言葉を必ず守ると言って車を降りた。
シンの元へ行くと、これから猟に行くという。
サーラは自分も一緒に行くとデュースに頼み込んだ。
デュースは初め、サーラの勢いに困惑していたようだが、構わないと頷いてくれた。
アムデルが編んでくれた、もこもこの帽子とマフラーを身に付けて、サーラたちは猟に出かけた。
まだ身長はサーラの方が高かったが、シンは身を挺してサーラが山道を歩きやすくなるよう動いてくれた。
そんなシンをサーラはすごく頼もしく思ったことを覚えている。
そして夢の通りにしてはならない、とサーラは必死に考えた。
自分がいることで、結果も変えられるのではないかと、シンの手をぎゅう、と握りしめたりもした。
(シンを失わなくてよかった、でも)
確かにシンが撃たれることはなかった。
デュースが咄嗟にシンをかばったからだ。
デュースが暴発した銃に撃たれた時、サーラは怖くて泣いていることしかできなかった。
シンが冷静にデュースの無線で救助を要請したのである。
泣いているサーラをシンは大丈夫だからと抱きしめてくれた。
(私はなにもできなかった)
これを何回思い出しただろう。
シンはもう父親の死に答えを出している。
サーラだけが、そこから離れられずにいる。
「サーラ、大丈夫?」
隣に座っていたシンが心配そうに自分を見つめていた。
銀色の瞳にサーラが映り込んでいる。
サーラは笑ってこう言った。
「いや、石が気になってな」
自分にしては上手く嘘がつけたと思う。シンもそうだよね、と頷いた。
「サーラちゃあん!!」
こんな真夜中にこんなにテンションの高い人をサーラは一人しか知らない。
そう、サーラの姉、ソフィーだ。
ソフィーはサーラをぎゅうう、と抱きしめる。
「お姉ちゃん、ちょっと石のことわかっちゃった!」
ソフィーがなにやら端末を操作する。自分で開発した特別な機械だ。その端末から映像が浮かび上がった。石の映像だ。
「ソフィーさん、なにがわかったんですか?」
シンが尋ねるとソフィーが笑う。
「やっぱりこれ、煌めきのいしとすごく似ているの!」
「ソフィー、どうゆうことなの?」
ナオが尋ねる。
「あのね、この石はやっぱり地球上にはないはずなの!煌めきのいしとよく似た成分が見つかってる」
「では、この石は精霊のもの」
アムデルが静かに言葉を継いだ。
みなアムデルを見つめる。
「明日の精霊祭はなにかが起きるかもしれませんね。
シン、心して準備しましょう」
「わかった」
「シン、私も手伝う!」
「サーラ、ありがとう」
準備の段取りを決めて、みんな眠ることにした。
サーラは何故か不安に襲われて無意識にシンの服の裾を掴んでいた。
「サーラ?どうしたの?」
シンが気が付いてサーラの顔を覗き込んでくる。
「シン、私....いや、なんでもない」
そんなサーラをシンはぎゅ、と抱き寄せてくれた。
「サーラ、おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
部屋に戻ってサーラは考えた。
明日なにかが起きるかもしれない、それなら自分にできることはひとつしかない。サーラは夢の中に落ちていった。
もし自分の力が万全であれば、デュースの死は防げたのではないかと。
そのことをシンに話したことはない。シンのことだから自分のせいではないと言ってくれるはずだ。
それでもサーラはずっと悔いている。
だからこそ、今は決意している。強く在ろうと。
あの時、幼かったサーラは、自分の夢に自在に入ったり出たりして遊ぶようになっていた。
仲良しの精霊を連れて夢の世界に入り、朝が来るまで遊ぶ。
学校に行けず、友達と呼べる対象が近くにいなかったサーラにとって、その時間は幸せだった。
(私はあの時、予知夢の解釈ができなかった)
サーラが予知夢に気が付いたのは、昼間に夢に出てきたことが起きるという些細なことからだった。
猫が目の前を横切ったり、皿が割れるなどの日常で起こりがちなことだ。
しかし、ある雪の日、サーラは長い予知夢を見る。
それはシンが猟銃で誤って撃たれてしまうというものだった。
サーラが、あっと思ったときにはシンの胸に弾が当たり血が弾け飛ぶという恐ろしいものだった。
サーラはいてもたってもいられなくなり、自分の父親に事情を話して、アデスへ連れて行ってもらった。
雪の降る中、父親はサーラにこう言った。
「シンに夢のことは話さなくていい」
サーラは父親の言葉を必ず守ると言って車を降りた。
シンの元へ行くと、これから猟に行くという。
サーラは自分も一緒に行くとデュースに頼み込んだ。
デュースは初め、サーラの勢いに困惑していたようだが、構わないと頷いてくれた。
アムデルが編んでくれた、もこもこの帽子とマフラーを身に付けて、サーラたちは猟に出かけた。
まだ身長はサーラの方が高かったが、シンは身を挺してサーラが山道を歩きやすくなるよう動いてくれた。
そんなシンをサーラはすごく頼もしく思ったことを覚えている。
そして夢の通りにしてはならない、とサーラは必死に考えた。
自分がいることで、結果も変えられるのではないかと、シンの手をぎゅう、と握りしめたりもした。
(シンを失わなくてよかった、でも)
確かにシンが撃たれることはなかった。
デュースが咄嗟にシンをかばったからだ。
デュースが暴発した銃に撃たれた時、サーラは怖くて泣いていることしかできなかった。
シンが冷静にデュースの無線で救助を要請したのである。
泣いているサーラをシンは大丈夫だからと抱きしめてくれた。
(私はなにもできなかった)
これを何回思い出しただろう。
シンはもう父親の死に答えを出している。
サーラだけが、そこから離れられずにいる。
「サーラ、大丈夫?」
隣に座っていたシンが心配そうに自分を見つめていた。
銀色の瞳にサーラが映り込んでいる。
サーラは笑ってこう言った。
「いや、石が気になってな」
自分にしては上手く嘘がつけたと思う。シンもそうだよね、と頷いた。
「サーラちゃあん!!」
こんな真夜中にこんなにテンションの高い人をサーラは一人しか知らない。
そう、サーラの姉、ソフィーだ。
ソフィーはサーラをぎゅうう、と抱きしめる。
「お姉ちゃん、ちょっと石のことわかっちゃった!」
ソフィーがなにやら端末を操作する。自分で開発した特別な機械だ。その端末から映像が浮かび上がった。石の映像だ。
「ソフィーさん、なにがわかったんですか?」
シンが尋ねるとソフィーが笑う。
「やっぱりこれ、煌めきのいしとすごく似ているの!」
「ソフィー、どうゆうことなの?」
ナオが尋ねる。
「あのね、この石はやっぱり地球上にはないはずなの!煌めきのいしとよく似た成分が見つかってる」
「では、この石は精霊のもの」
アムデルが静かに言葉を継いだ。
みなアムデルを見つめる。
「明日の精霊祭はなにかが起きるかもしれませんね。
シン、心して準備しましょう」
「わかった」
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「サーラ、ありがとう」
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サーラは何故か不安に襲われて無意識にシンの服の裾を掴んでいた。
「サーラ?どうしたの?」
シンが気が付いてサーラの顔を覗き込んでくる。
「シン、私....いや、なんでもない」
そんなサーラをシンはぎゅ、と抱き寄せてくれた。
「サーラ、おやすみ」
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