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サーラの力
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サーラにはある力があった。
夢見という予知の力だ。
それはある日突然発現したわけではない。
はじめは夜、眠っているときに起きた。
サーラが気が付くと夢の世界にいて現実世界に戻れなかった。幼かったサーラは困り果てた挙げ句、泣き出した。
そこに精霊たちがぞろぞろと集まってきて、サーラを現実の世界に導いてくれた。
それを何度か繰り返すうち、サーラは精霊たちと親しくなっていった。
ある日のこと、夢の中でいつものようにサーラが精霊たちと遊んでいると、誰かがやってきた。
サーラには結局、それが誰だったのか思い出せなかった。
「あなたはだれ?」
サーラはその人にそう尋ねたが、その誰かはサーラの頭を撫でながらこう言った。大きな温かな手だった。
「サーラ、この力を磨きなさい、きっと君を助けてくれる」
サーラははじめ、その言葉がよくわからなかったが、幼いなりに必死に考えた。
精霊たちとは直接言葉を交わせるわけではなかったが、サーラは何度も彼らに尋ねた。
そして、自分の力が予知であることをある日知った。
(あのときは怖かったな)
今でもその時のことを思い出して身が竦む。
(シンは無事だったからよかったが)
「サーラ、スイカもっと食べて」
「あ、あぁ!」
アデスで採れたスイカはとても甘く瑞々しい。
近くに流れている川でキンキンに冷やしたそれを噛むと、じゅわ、と果汁が溢れ出る。
今年も良い出来のようだ。
毎年アデスに来てスイカを食べると、夏が来たことを実感する。
「シン、美味しいな!」
「でしょ?父さんから教わった作り方だから」
シンの父親はシンが9歳の頃、怪我を負い、そのまま病気で亡くなっている。
サーラも彼を実の父親のように慕っていた為、とても悲しかった。
「おじ様はなんでもできたよな」
「うん」
シンは笑ってスイカにかぶりつく。サーラもしゃくり、とスイカを食べた。
サーラはふと思っていた。
夢見という予知の力だ。
それはある日突然発現したわけではない。
はじめは夜、眠っているときに起きた。
サーラが気が付くと夢の世界にいて現実世界に戻れなかった。幼かったサーラは困り果てた挙げ句、泣き出した。
そこに精霊たちがぞろぞろと集まってきて、サーラを現実の世界に導いてくれた。
それを何度か繰り返すうち、サーラは精霊たちと親しくなっていった。
ある日のこと、夢の中でいつものようにサーラが精霊たちと遊んでいると、誰かがやってきた。
サーラには結局、それが誰だったのか思い出せなかった。
「あなたはだれ?」
サーラはその人にそう尋ねたが、その誰かはサーラの頭を撫でながらこう言った。大きな温かな手だった。
「サーラ、この力を磨きなさい、きっと君を助けてくれる」
サーラははじめ、その言葉がよくわからなかったが、幼いなりに必死に考えた。
精霊たちとは直接言葉を交わせるわけではなかったが、サーラは何度も彼らに尋ねた。
そして、自分の力が予知であることをある日知った。
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