黄金の月①神々の石

はやしかわともえ

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サーラの力

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サーラにはある力があった。
夢見という予知の力だ。
それはある日突然発現したわけではない。
はじめは夜、眠っているときに起きた。
サーラが気が付くと夢の世界にいて現実世界に戻れなかった。幼かったサーラは困り果てた挙げ句、泣き出した。
そこに精霊たちがぞろぞろと集まってきて、サーラを現実の世界に導いてくれた。
それを何度か繰り返すうち、サーラは精霊たちと親しくなっていった。
ある日のこと、夢の中でいつものようにサーラが精霊たちと遊んでいると、誰かがやってきた。
サーラには結局、それが誰だったのか思い出せなかった。

「あなたはだれ?」

サーラはその人にそう尋ねたが、その誰かはサーラの頭を撫でながらこう言った。大きな温かな手だった。

「サーラ、この力を磨きなさい、きっと君を助けてくれる」

サーラははじめ、その言葉がよくわからなかったが、幼いなりに必死に考えた。
精霊たちとは直接言葉を交わせるわけではなかったが、サーラは何度も彼らに尋ねた。
そして、自分の力が予知であることをある日知った。

(あのときは怖かったな)

今でもその時のことを思い出して身が竦む。

(シンは無事だったからよかったが)

「サーラ、スイカもっと食べて」

「あ、あぁ!」

アデスで採れたスイカはとても甘く瑞々しい。
近くに流れている川でキンキンに冷やしたそれを噛むと、じゅわ、と果汁が溢れ出る。
今年も良い出来のようだ。
毎年アデスに来てスイカを食べると、夏が来たことを実感する。

「シン、美味しいな!」

「でしょ?父さんから教わった作り方だから」

シンの父親はシンが9歳の頃、怪我を負い、そのまま病気で亡くなっている。
サーラも彼を実の父親のように慕っていた為、とても悲しかった。

「おじ様はなんでもできたよな」

「うん」

シンは笑ってスイカにかぶりつく。サーラもしゃくり、とスイカを食べた。
サーラはふと思っていた。
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