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真司×千晶&千尋×加那太

スポーツアクティビティに挑戦!⑧みんなでゆったりキャンプしてみた

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「わ、揺れるー!ほらほらー!」

「ばっ!!揺らすな!加那!!」

加那太が足場の不安定な板の上でわざとがちゃがちゃと板を揺すって見せる。
どうやら千尋はあまり高い所が得意ではないらしい。

「かなさん、意地悪はだめです」

「はーい」

千晶が諭すように言うと加那太は素直に従った。

「千尋―、セミいたー」

「わああ!」

加那太が樹の幹に止まっていたセミを掴んで千尋に差し出している。
どうやら千尋は虫も得意ではないらしい。
完全にやってることは小学生なのだが、加那太がやると違和感がないのはなぜだろうか。

「加那!そのセミ逃がせ!」

「はーい」

加那太は素直に従う。

「千尋さん、大丈夫か?」

真司が見かねて声を掛ける。

「ああ。なんとか。加那はこういうの得意なんだ」

「意外」

真司と千晶が思わずハモってしまう。

「あいつ、インドア派に見えるだろ?割となんでもできるタイプなんだよな」

「ハイスペックなんですね」

「いや、加那自身は気が付いてない」

「ねえー、みんなー、クワガタ見つけたら教えてねー」

先にどんどん進んでいた加那太が声を掛けて来る。

「クワガタ・・あいつ完全に小学生だよな」

千尋の突っ込みに千晶と真司は思わず噴き出してしまった。
とりあえずアスレチックを巡りながら樹の幹を確認してみる。
セミの抜け殻はあったがクワガタはいなかった。

「いないなあ」

加那太が細い橋をたたたと走っているのを見て千晶は固まってしまった。
こんなに動ける人だとは思わなかったからだ。

「かなさんすごいです」

思わず呟いていた。

「あきくんはクワガタとか育てたことある?」

「いえ、俺はないです。飼育って難しそうで」

「俺は小学生の時にやってたなあ」

真司がのんびり言う。

「飼育記録付けて、自由研究に出してたなあ」

「あ、分かる」

千晶は今回の旅行で周りにいる人たちのいろいろな面を見てきた。
真司のことはもう大抵知っていたかと思ったがそんなことはなかったらしい。

「真司さんもクワガタを育ててたんですか?」

「ああ。相撲とか友達とやって遊んでた」

「へええ」

千晶は真司の子供時代を想像してみたがうまくいかなかった。
自分が経験していないことを想像するのは難しい。

「千晶は夏休みの宿題をちゃんとやってそうだよな」

「宿題もあったんですが、夏期講習に行ってました」

「えらーい。あきくん、国立の大学出身だもんねえ」

「はい、一応」

千尋がやっと追いついて来る。

「加那、ほら」

千尋が差し出してきたのは小さなクワガタだった。

「千尋すごーい」

「こいつ弱ってるぞ。自力で飛べないみたいだ」

加那太は千尋からクワガタを受け取り観察を始めた。

「あ、羽がちぎれそうになってる」

「もう飛べないんですか?」

「人にちぎられたんだね」

「え」

加那太の言葉に千晶は驚いてしまった。そうだとしたらあまりに乱暴である。

「うーん、故意にやったかは分かんないけど、このままじゃ死んじゃうかも」

「そんな」

「大丈夫、僕が保護するから」

「かなさん」

加那太をよく見るとリュックを背負っている。彼はリュックを下ろして虫かごを取り出した。
それにクワガタを入れている。

「あとでご飯あげるからねえ」

クワガタがぴょこと角を動かした。

「可愛い」

「でしょ?クワガタってあんまり動かないけど可愛いんだよ。カブトムシも」

スポーツアクティビティももう後半である。
最後の難関、それはジップラインだ。

「俺はクワガタを持ってる」

途中で千尋が棄権したので、三人で挑戦することになった。
高所から飛び降りるという恐怖がある。

「いっくぞー」

まずは加那太が飛び出した。
スピードが意外にある。加那太が歓声を上げている。

「わあ、すごいな千晶」

「はい。面白そうです」

次は真司の番だ。彼も思い切り踏み込んで飛んでいた。
ラストは千晶である。向こうにみんながいる。千晶は思い切って飛んでいた。
綺麗な景色が周りに広がっている。それもつかの間、千晶は地面に降り立っていた。

「あきくん、ナイスダイブ!」

「かなさん、楽しかったです」

「うん、誘ってくれて本当にありがとう」

ぎゅっと加那太に手を握られてお礼を言われた。

「また来ましょうね」

「それなら今度は俺たちが誘うよ」

千尋の提案が嬉しい。
忘れられない夏になった。

帰り道、寂しくて千晶は泣きそうだった。
楽しい時間はいつだってあっと言う間である。

「千晶、また遊ぼう」

真司にそう励まされた千晶である。加那太や千尋とはすぐに会えるのだから。
千晶は心の中で兄に話しかけていた。

「俺、もう大丈夫だよ。だから兄ちゃんも心配しないで」

この気持ちはきっと兄にもきっと伝わっている。兄の笑顔を千晶はまた思い出していた。


おわり





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