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四十七話

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ダンスパーティが近づくにつれて、周りが浮足立ってきたのが分かった。相手が見つかったと喜んでいる人や、理想の相手に振られてしまって落ち込んでいる人もいた。新たな人脈開拓という目的がこのダンスパーティには含まれているらしい。
最終的には新しいビジネスに繋げようというものらしかった。
蹴落とし合いなのはどこでも変わらないんだな。

「アイシュリタ様、出来ました」

ぼーっとしていたらトギさんに声を掛けられた。アタシは慌てて立ち上がった。一応トギさんの絵の指導をしているんだからちゃんとしないと。
トギさんの絵は繊細だ。まるでガラス細工のような感じ。アタシはその美しさに見惚れてしまった。

「綺麗…」

「アイシュリタ様にそう言って頂き光栄です」

「絵画展に出展するの?」

「はい。アイシュリタ様とぶつかりあえたらと願っています」

「負けないよ」

アタシに絵のライバルができるなんて思いもよらなかった。
トギさんはニコニコしている。

「アイシュリタ様、ダンスパーティ楽しんできてくださいね」

「うん、ありがとう」

「本当は、私もあなたをお誘いしたかったんです」

「え?」

トギさんのようなカッコいい人がアタシを誘ってくれようとしていた?

「でも、引き下がらなければベルさんに殺されるところでした」

そんなにも。

「あ、あの、ベルは優しいのでさすがにそこまでは…」

トギさんが笑って首を振る。

「いいえ、あれは本気でした」

ベルの荒々しい一面にあたしは驚いてしまった。ベルはそんなにもアタシを愛してくれている。
嬉しいな。

「アイシュリタ様、あなたとこうして素晴らしい時間が過ごせて良かったです。また機会がありましたら宜しくお願いします」

トギさんはそう言ってアタシの手をとって甲に口づけをした。

「あなたに私は忠誠を誓いましょう」

トギさん、優しいな。この人と一緒になる相手はきっと幸せになれる。アタシにはそう確信できた。
ダンスパーティが終わったらロイヤルプライド青年学校の生徒たちは自分の学校に戻ることになっている。
トギさんとこうして直接話せて良かった。多分、お互いに切磋琢磨出来たんだと思う。こうして誰かと過ごす時間は貴重なんだな。

「アイシュリタ様…」

トギさんに名前を呼ばれたかと思ったら抱き締められていた。え、何この状況!!

「おい!トギ!!アイシュから離れろ!お前、なんだかんだアイシュを独り占めにしやがって!」

ベルがやって来た。アタシはなんだかおかしくて笑ってしまった。
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