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四十一話

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楽しかった春休みが終わって、アタシはまたベルと共に女学院に戻ってきている。それにしても無事に進級出来てよかったなぁ。

「お姉ー!!」

部屋に入るとラセルカちゃんが抱き着いてきた。うん、やっぱり可愛い。
アタシが彼女を抱きしめていると、ぱたぱたと誰かの足音がする。そして後ろから抱き着かれた。

「アイシュさまー♡」

「セイラちゃん?!」

「アイシュさま、お家は大丈夫でしたか?」

「ラセルカもそのお話聞きたい」

「うん、二人に聞いてもらいたいな。美味しいお菓子をお父様に買って頂いたからお茶を淹れるね」

「わぁやったあ!」

「アイシュさまの淹れるお茶大好きですわ」

アタシは熱いお茶を淹れた。茶葉もこの間終わってしまったから、一緒に買ってもらった。
二人の前にお茶の入ったカップとお菓子を置く。アタシの分も用意して椅子に座る。

「あのね…」

アタシは春休みにあったことを話した。お母様が余命宣告されていたこと、お父様から聞いたツリュードリヒ家のこと全てだ。

「お姉、悲しいね」

「アイシュさま…」

ラセルカちゃんが目をうるうるさせている。セイラちゃんも心配そうにアタシを見ていた。

「お母様のことはもちろん悲しいよ。でももうどうにもならない、冷たいかもしれないけれど受け入れることしか出来ない。大丈夫、お母様は戦うって約束してくれた」

「ツリュードリヒ家の歴史も長いですものね」

「そうなの。元は普通市民からの出なんだって。こうなるまでにすごく努力したんだろうなって」

「アイシュさまも努力家ですし、きっと素晴らしい方だったんでしょうね」

「うん。ツリュードリヒ家の名に恥じない行動をしなきゃって改めて思ったよ。そうそう、お祖父様がね」

アタシはその話を思い出してつい笑ってしまった。
それはお祖父様が一財産を潰してカジノ「MATSU」で遊んだというものである。お祖父様はとにかくギャンブルが好きで、前オーナーさんに叱られたらしい。
それからは真面目に働いたという。

「まあ!そういう接点があったんですのね」

「人の歴史って色々あるよね」

「お兄もそういう研究してる!いつも楽しそうだよ」

アタシ達はお互いに春休みのことを話して、明日行われる実力テストの勉強をすることにした。
勉強をしていると、コンコンとドアがノックされる。
誰だろう?

「はーい」

ドアを開けると大きな花束が現れて驚いた。

「親愛なるアイシュリタ様に捧げます」

「トギさん?!」

ようやく相手が分かってホッとする。

「アイシュリタ様、お願いがあるのです」

彼の真剣な表情にアタシは気圧されていた。いけない、ちゃんと事情を聞かなくちゃ。

「ど、どうされたんですか?」

「明日、アトリエで私に絵画の指導をしてくださいませんか?」

「断る」

ベルがアタシの背後からトギさんを睨みつけている。トギさんは怯まずベルを睨み返した。ど、どうしよう、喧嘩になっちゃう?

「私はアイシュリタ様にお話しているのです」

「だから駄目だと言っている。アイシュは忙しいんだ。お前の相手をしている暇はない」

「ベル、そんな風に言わなくても、アタシだったら構わないし」

「アイシュリタ様!本当ですか?」

「アイシュ!!」

二人に名前を呼ばれる。なんでこうなったんだっけ?

「トギさん、アタシも絵画の作業があるから合間に見るだけになっちゃうけど」

「構いません!!」

「ベル、仕事を早くに終わらせてアトリエに来て」

「分かった」

とりあえず何事もなくて良かった。
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