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二十三話

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「あれ?」

暗い道をひたすら真っ直ぐ歩いていると、急にラセルカちゃんが声を上げた。

「ラセルカ、気が付いたか?」

ルイーダ様が面白そうに笑う。

「うん、さっきまで感じていた魔力が消えた。どうして?」

それにレンが舌打ちした。つまらなさそうに言う。

「だから言ったろ?妖精の谷は壊れかけてるんだよ。魔力を失くしてるんだ」

ラセルカちゃんが、彼の語調の鋭さにびくっとなった。
でも負けじと改めてこう言い返す。

「ち、違う力も感じるの。魔力とは違う力だよ」

「は?違う力ってなんだよ?お前みたいなガキに何が分かるんだよ!」

「やめろ、レン。そんな小さな女の子に当たるな。妖精族の誇りを忘れるなよ」

ショウの言葉に、レンは再び舌打ちをした。ラセルカちゃんがアタシの腰に抱きついてくる。
アタシは彼女の頭を撫でた。

「ふむ、先を急ごうか。もう間もなくだからな」

ルイーダ様の言うとおりだった。しばらく歩くと、いきなり道がない。本当にまっさらだった。空間はあるみたいだけど、何もなさすぎて怖いくらいだ。

「アイシュよ、今、世界中でこれと同じことが起きている。
世界は新たに生まれ変わろうとしている。だからここをお主に任せたい。頼む」

「え、でも!」

「なんでこんな奴に頼むんだよ、ルイーダ!」

レンが怒声を上げる。多分、アタシも同じ立場だったら怒ると思う。

「それはアイシュが優しい子だからだ。この娘なら世界をいい方に変えてくれる。そんなに心配ならお前達も一緒にいれば良かろう?」

「そうだな。ルイーダの言うとおりだ。俺達はあんたを見張らせてもらうぜ」

レンにズバッと言われて、アタシは困った。まさかこんな大事になるなんて。

「アイシュよ、これをやる」

ルイーダ様が差し出してきたのは銀色の鍵だった。

「これを持っていればここまでひとっ飛びだからな」

そんなすごい魔法道具、アタシなんかが持っていていいの?
ベルを見つめると頷かれる。
アタシはそれを受け取った。

「ルイーダ様、この空間には入れるのですか?」

一応尋ねてみる。ルイーダ様がぴょん、とその空間に飛び込んだ。
どうやら見えない足場があるらしい。不思議なところであるのは間違いない。アタシが頼まれたんだ。やってみたら何かが変わるかもしれない。世界が生まれ変わったらアタシも生まれ変われるかもしれない。

「分かりました。不安だけど、やってみます」

「よくぞ言ったアイシュよ」

アタシは鍵を握りしめた。
あれ?世界ってどうやって作るんだろう。
さっぱり分からない。
ルイーダ様はニコニコしている。

「あ、あの、ルイーダ様。アタシはどうしたら?」

「うむ。世界を作るにはある程度の魔力が要る。その使い方を学ばねばな!」

ルトさんの言葉が思い返される。魔力の訓練を受けたら…なんて。

「アイシュよ、明日から特訓だ!大丈夫、すぐ使いこなせるようになる!」

ルイーダ様、簡単に言うけど本当に大丈夫?なんだか大変なことになってしまったな。
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