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15・厄介事
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朝、ココレシュアは陽の光に気が付いて目を覚ました。魔界までの道のりは遠く険しいのかと案じたココレシュアだったが、ラシータが竜に変身することで一瞬だった。ココレシュアはあまりにあっさりと事が済んだのに呆れてしまったくらいだ。
「コーコ、起きたか?ご飯食べようぜ!」
ぴょん、とやってきたのは、もちろんラシータである。彼はココレシュアに抱っこされたいと猫の姿になることが多い。最強の魔王のはずなのだが、最愛の人の前ではとても可愛らしい。ココレシュアはラシータの背中を撫で、彼を抱き上げた。
「おはよう、ラシータ様。今日のお仕事は?」
「えー、ココと一緒にいるー!」
「まーたそうやってわがまま言って」
やれやれと言いながらルーギルが歩いてくる。そしてココレシュアの前で恭しく頭を下げた。
「おはようございます、ココ様。朝食の支度が出来てますんで、食べる間そこの陛下に仕事をするように言い含めてやってください」
ルーギルはラシータに容赦がない。一応ラシータはこの世界最強なのだが。
「バカって言った方がバカなんだからな!!」
ううう、とラシータの円な深紅には涙が溜まっている。ルーギルに口で敵わないのが悔しくてたまらないらしい。
「ラシータ様、お仕事が早く終わったらお散歩がてらお買い物行かない?」
「行く!!仕事頑張る!!」
ふふ、と笑ってココレシュアはラシータを抱き上げた。部屋の傍の螺旋階段を降りる。ラシータたちの住む城は石造りの小さなものだった。使用人はルーギルしかいない。ラシータは富や名声にあまり興味がないらしい。一応金はあるが、全てルーギルに任せているようだ。
「ほら、ご飯食べるんでしょ?」
ココレシュアは食卓の椅子にラシータをそっと下ろした。ぽん、とラシータが元の姿に戻る。この姿のラシータには、まだドキドキしてしまうココレシュアだが、慣れる訓練とのことでラシータに抱きしめられたり触られたりしている。身の危険を感じる前にルーギルが止めてくれるので、そこは安心だ。
「あぁ、飯だ!ルーギルの作るガレットは美味いよな!」
「うん、本当」
「ゆっくり噛んで食べてくださいね?」
はーい、と2人は返事をして食べ始めた直後だった。ドンドン!と出入り口を激しく叩く音が響く。ルーギルは不審がりながらも、ドアを明けた。
「ラシータぁ…」
「叔父上!」
ココレシュアは彼を見て驚いてしまった。ラシータによく似ていたからだ。
「叔父上、何かあったのですか?」
ラシータが彼を立ち上がらせ、自分の座っていた席に座らせる。ちゃっかりと自分はココレシュアの隣に座っている。
「あぁ。聴いてくれるか、ラシータ」
「もちろんです」
ラシータはそろりと腕を動かし、ココレシュアの手をぎゅっと握ってきた。
「実は気になっている人がいて…でも気持ちを伝える方法が…」
「叔父上の武勇伝を聞かせればどのような女でもイチコロでは?」
いや、と彼は目を伏せた。
「彼女は私より強いのだ。私はずっとそばで見てきたから分かる。私より強い猛者たちが彼女に気持ちを伝えようと勝負に臨み、敗れたのだ」
ブルブルと彼は震えているが、恐怖ではないらしい。
「ラシータ、一生の頼みだ。私に化けて彼女と戦ってくれないか?お前は最強なんだろう?」
ラシータはうーんと両腕を組んだ。ココレシュアはそれにホッとしてしまう。
「ココ、どう思う?」
ちらっと横目でラシータに見つめられる。
「あまりいい方法には思えないけれど」
「叔父上、その女はどのような者なんだ?俺にはココレシュアがいるからな。叔父上に変身したことがバレれば彼女も怒るのではないか?」
さりげなくココレシュアはラシータに肩を抱き寄せられている。
「そうだよな、やっぱりそんなに上手くいかないか」
「まぁそう結論を急ぐな。彼女の様子を探りに行こうじゃないか!」
ラシータはウキウキしている。仕事をサボるつもりなのだろう。
「ラシータ様、お仕事が済んでからね?」
ココレシュアがそう釘を刺すと、ラシータは渋々仕事をしに執務室に歩いていった。
「コーコ、起きたか?ご飯食べようぜ!」
ぴょん、とやってきたのは、もちろんラシータである。彼はココレシュアに抱っこされたいと猫の姿になることが多い。最強の魔王のはずなのだが、最愛の人の前ではとても可愛らしい。ココレシュアはラシータの背中を撫で、彼を抱き上げた。
「おはよう、ラシータ様。今日のお仕事は?」
「えー、ココと一緒にいるー!」
「まーたそうやってわがまま言って」
やれやれと言いながらルーギルが歩いてくる。そしてココレシュアの前で恭しく頭を下げた。
「おはようございます、ココ様。朝食の支度が出来てますんで、食べる間そこの陛下に仕事をするように言い含めてやってください」
ルーギルはラシータに容赦がない。一応ラシータはこの世界最強なのだが。
「バカって言った方がバカなんだからな!!」
ううう、とラシータの円な深紅には涙が溜まっている。ルーギルに口で敵わないのが悔しくてたまらないらしい。
「ラシータ様、お仕事が早く終わったらお散歩がてらお買い物行かない?」
「行く!!仕事頑張る!!」
ふふ、と笑ってココレシュアはラシータを抱き上げた。部屋の傍の螺旋階段を降りる。ラシータたちの住む城は石造りの小さなものだった。使用人はルーギルしかいない。ラシータは富や名声にあまり興味がないらしい。一応金はあるが、全てルーギルに任せているようだ。
「ほら、ご飯食べるんでしょ?」
ココレシュアは食卓の椅子にラシータをそっと下ろした。ぽん、とラシータが元の姿に戻る。この姿のラシータには、まだドキドキしてしまうココレシュアだが、慣れる訓練とのことでラシータに抱きしめられたり触られたりしている。身の危険を感じる前にルーギルが止めてくれるので、そこは安心だ。
「あぁ、飯だ!ルーギルの作るガレットは美味いよな!」
「うん、本当」
「ゆっくり噛んで食べてくださいね?」
はーい、と2人は返事をして食べ始めた直後だった。ドンドン!と出入り口を激しく叩く音が響く。ルーギルは不審がりながらも、ドアを明けた。
「ラシータぁ…」
「叔父上!」
ココレシュアは彼を見て驚いてしまった。ラシータによく似ていたからだ。
「叔父上、何かあったのですか?」
ラシータが彼を立ち上がらせ、自分の座っていた席に座らせる。ちゃっかりと自分はココレシュアの隣に座っている。
「あぁ。聴いてくれるか、ラシータ」
「もちろんです」
ラシータはそろりと腕を動かし、ココレシュアの手をぎゅっと握ってきた。
「実は気になっている人がいて…でも気持ちを伝える方法が…」
「叔父上の武勇伝を聞かせればどのような女でもイチコロでは?」
いや、と彼は目を伏せた。
「彼女は私より強いのだ。私はずっとそばで見てきたから分かる。私より強い猛者たちが彼女に気持ちを伝えようと勝負に臨み、敗れたのだ」
ブルブルと彼は震えているが、恐怖ではないらしい。
「ラシータ、一生の頼みだ。私に化けて彼女と戦ってくれないか?お前は最強なんだろう?」
ラシータはうーんと両腕を組んだ。ココレシュアはそれにホッとしてしまう。
「ココ、どう思う?」
ちらっと横目でラシータに見つめられる。
「あまりいい方法には思えないけれど」
「叔父上、その女はどのような者なんだ?俺にはココレシュアがいるからな。叔父上に変身したことがバレれば彼女も怒るのではないか?」
さりげなくココレシュアはラシータに肩を抱き寄せられている。
「そうだよな、やっぱりそんなに上手くいかないか」
「まぁそう結論を急ぐな。彼女の様子を探りに行こうじゃないか!」
ラシータはウキウキしている。仕事をサボるつもりなのだろう。
「ラシータ様、お仕事が済んでからね?」
ココレシュアがそう釘を刺すと、ラシータは渋々仕事をしに執務室に歩いていった。
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