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11・王都再び
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「く、使節団が魔界に辿り着けなかったとは!」
「おそらくラシータの仕業でしょう。武器まで破壊されて大赤字よ!」
国王と魔女の怒り狂う声をラシータとココレシュアは聞いていた。2人はまた城に指輪を探しに来たのだ。やはりどこにも見あたらない。とりあえず様子だけ探ろうと天井裏に潜んでみたのである。国王も魔女も思いの外動揺していた。ラシータが小声でざまあねえなと笑っている。
「よし、帰るか」
ラシータとココレシュアは引き返そうとして固まった。鼠が何かを背負っているのだ。ラシータと鼠が見つめ合う。鼠は確かに指輪を背負っていた。
「あー!!!」
「ラシータ様!静かに!!」
鼠はラシータの声に驚いたのかたたっと走り去ってしまった。
「くそ、待て!」
もちろん鼠が待つ理由などない。ラシータがモタモタしているうちに姿を消している。
「ラシータ!そこにいるのね!」
魔女と国王に居場所が知られてしまった。2人はやっとこさ逃げ帰ってきた。
「陛下ってば、何やってんすか」
帰ってきてから説明して、開口一番、ルーギルにこう呆れられた。
「だって指輪があったんだ。あのねず公絶対に捕まえてやる」
「でももう天井裏には隠れられないんじゃ」
ココレシュアの言う通りだと皆頷いた。
「ならどうやって指輪を取り返しゃいいんだ」
皆、沈黙する。
「あの、一つだけ提案が」
しんとなった中、ココレシュアはそっと手を挙げた。
「僕、歌で動物たちと話せるんです。多分お城の子たちも」
「そうだ、ココの歌は怒り狂った熊も眠らせるんだぞ」
「そりゃすごいすね!」
「もし無理でもいいならやってみたいなって」
「あぁ、ココに任せよう!」
でも…とココレシュアは困ったように笑う。
「僕が歌う理由を作らないと上手くいかないんじゃないかなって」
「確かに…」
ラシータがなるほどと手を打つ。クロダがそれなら、とこう言った。
「国の慰安に来たと言えば良いのでは?ココ殿の姿はまだ国王様に見られていないようですし」
「つまり、ココ様率いる愉快な楽団っつうわけっすね」
「おぉ、楽団なんて楽しそうだな」
「陛下、あんたはここでクロダ様と留守番ですよ?」
相変わらずルーギルはラシータに容赦がない。
えぇ、とラシータは困ったようにクロダを見つめた。
「クロダー、俺におやつを買ってくれるか?」
「え?」
「お財布なくしたんすよ、この人」
ルーギルがラシータを指差す。
「構いませんよ。ただあまりふらふらしないでくださいね」
「分かってりゅ!!」
本当に分かっているのだろうかと、ラシータ以外は思っている。まずは、楽団として体裁を整える必要がある。ココレシュアはルーギルを連れて王都を出た。
「ココ様、どうなされるんで?」
ココレシュアは歌い始めた。するとみるみるうちに色々な動物たちが集まり始める。
「皆、僕たちに力を貸して」
「こいつはすげえや」
ルーギルは感服したのだった。
✢
「わぁぁ、本当に楽団だな!」
ラシータが猫の姿でぴょいんと跳ねている。ココレシュア、ルーギルは赤いチェック柄の詰襟に身を包んでいた。頭には同じ柄の制帽を被っている。ルーギルはドラムを首から提げている。ココレシュアはラシータを抱き上げた。
「じゃあ、行ってくるね、ラシータ様」
ちゅ、とラシータの頬にココレシュアはキスをした。
「はわわ、ココ、だいしゅき」
すっかりメロメロのラシータである。
「陛下、いい子にしてるんすよ?」
「してる!」
「お気を付けて、2人とも」
「ありがとうございます!クロダさん」
「行きましょうか」
「はい」
ルーギルとココレシュアは手を振る。動物たちがココレシュアを見つけるとそばに寄ってくる。ココレシュアたちはなかなか目立っていた。町の人たちが何事かと驚いている。せっかくだとココレシュアは歌い始めた。その歌声に道行く人は立ち止まり、うっとりと聞き惚れた。その歌声に合わせるようにルーギルがドラムを打つ。
城に着く頃には観衆が集まっていたのだった。
「おそらくラシータの仕業でしょう。武器まで破壊されて大赤字よ!」
国王と魔女の怒り狂う声をラシータとココレシュアは聞いていた。2人はまた城に指輪を探しに来たのだ。やはりどこにも見あたらない。とりあえず様子だけ探ろうと天井裏に潜んでみたのである。国王も魔女も思いの外動揺していた。ラシータが小声でざまあねえなと笑っている。
「よし、帰るか」
ラシータとココレシュアは引き返そうとして固まった。鼠が何かを背負っているのだ。ラシータと鼠が見つめ合う。鼠は確かに指輪を背負っていた。
「あー!!!」
「ラシータ様!静かに!!」
鼠はラシータの声に驚いたのかたたっと走り去ってしまった。
「くそ、待て!」
もちろん鼠が待つ理由などない。ラシータがモタモタしているうちに姿を消している。
「ラシータ!そこにいるのね!」
魔女と国王に居場所が知られてしまった。2人はやっとこさ逃げ帰ってきた。
「陛下ってば、何やってんすか」
帰ってきてから説明して、開口一番、ルーギルにこう呆れられた。
「だって指輪があったんだ。あのねず公絶対に捕まえてやる」
「でももう天井裏には隠れられないんじゃ」
ココレシュアの言う通りだと皆頷いた。
「ならどうやって指輪を取り返しゃいいんだ」
皆、沈黙する。
「あの、一つだけ提案が」
しんとなった中、ココレシュアはそっと手を挙げた。
「僕、歌で動物たちと話せるんです。多分お城の子たちも」
「そうだ、ココの歌は怒り狂った熊も眠らせるんだぞ」
「そりゃすごいすね!」
「もし無理でもいいならやってみたいなって」
「あぁ、ココに任せよう!」
でも…とココレシュアは困ったように笑う。
「僕が歌う理由を作らないと上手くいかないんじゃないかなって」
「確かに…」
ラシータがなるほどと手を打つ。クロダがそれなら、とこう言った。
「国の慰安に来たと言えば良いのでは?ココ殿の姿はまだ国王様に見られていないようですし」
「つまり、ココ様率いる愉快な楽団っつうわけっすね」
「おぉ、楽団なんて楽しそうだな」
「陛下、あんたはここでクロダ様と留守番ですよ?」
相変わらずルーギルはラシータに容赦がない。
えぇ、とラシータは困ったようにクロダを見つめた。
「クロダー、俺におやつを買ってくれるか?」
「え?」
「お財布なくしたんすよ、この人」
ルーギルがラシータを指差す。
「構いませんよ。ただあまりふらふらしないでくださいね」
「分かってりゅ!!」
本当に分かっているのだろうかと、ラシータ以外は思っている。まずは、楽団として体裁を整える必要がある。ココレシュアはルーギルを連れて王都を出た。
「ココ様、どうなされるんで?」
ココレシュアは歌い始めた。するとみるみるうちに色々な動物たちが集まり始める。
「皆、僕たちに力を貸して」
「こいつはすげえや」
ルーギルは感服したのだった。
✢
「わぁぁ、本当に楽団だな!」
ラシータが猫の姿でぴょいんと跳ねている。ココレシュア、ルーギルは赤いチェック柄の詰襟に身を包んでいた。頭には同じ柄の制帽を被っている。ルーギルはドラムを首から提げている。ココレシュアはラシータを抱き上げた。
「じゃあ、行ってくるね、ラシータ様」
ちゅ、とラシータの頬にココレシュアはキスをした。
「はわわ、ココ、だいしゅき」
すっかりメロメロのラシータである。
「陛下、いい子にしてるんすよ?」
「してる!」
「お気を付けて、2人とも」
「ありがとうございます!クロダさん」
「行きましょうか」
「はい」
ルーギルとココレシュアは手を振る。動物たちがココレシュアを見つけるとそばに寄ってくる。ココレシュアたちはなかなか目立っていた。町の人たちが何事かと驚いている。せっかくだとココレシュアは歌い始めた。その歌声に道行く人は立ち止まり、うっとりと聞き惚れた。その歌声に合わせるようにルーギルがドラムを打つ。
城に着く頃には観衆が集まっていたのだった。
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