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五章
四話・冒険
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デュースはここに長く留まれないと告げた。人間としての彼はもう死亡しているというのも一因だが、デュースは現在、世界中にいる神々とコンタクトを取り合っているらしい。イリシア、アデスでは存在して当たり前だと思われている神々だが、他の国では神々と人間が接触するのはよほどのことではない限り、奇跡だと言われている。それだけイリシア、アデスは不思議な国なのだ。デュースの話にサーラはワクワクしてしまった。世界を知りたいとサーラは常々思っている。だが自分は間もなく出産を控えている。不安がないわけではないが、なるようにしかならないと構えている部分もある。
「いいなぁ、義父様」
サーラが思わず呟くとデュースが笑った。
「サーラは冒険に出たいのかな?」
「冒険?」
サーラが首を傾げると、デュースが頷く。
「世界を知ることで怖いことも沢山ある。知らない土地には知らない人間や神々がいる。でもこの恐怖を楽しめたら、一人前の冒険者に違いない」
サーラは胸の高鳴りを抑えられなかった。冒険にいつか行ってみたいとサーラは決意していた。自分は王女でこれから公務やなんやらで忙しくなることは明白だ。それでも冒険に出たい、とサーラには新しい夢が出来たのである。絶対に叶えよう、サーラは静かに決めた。
デュースはそろそろ行かなくてはと立ち上がった。見送りも不要だと。
「私はまたここに来る。また皆で話をしよう」
デュースが約束を違えたことはない。彼はあっという間にいなくなってしまった。
「お父様と久しぶりにお話できたなぁ」
ルビィがほう、と息をつく。神々や精霊たちにとって、デュースは憧れの対象らしい。ナナセやハンマーもどことなく嬉しそうだった。みんなデュースが大好きなのだ。サーラにもその気持ちがよく分かる。
「父さんの手伝いが出来ればなぁ」
「デキるジャナイカ」
ハンマーが笑う。
「神々とシリアエバイイノダロウ?」
「確かに…」
ナナセとハンマーはなにか決意したようだった。
✢✢✢
「というわけで、この騒動は一旦区切りがついたのかな?」
シンが確認するように言ってくる。サーラとナオが頷いた。
「長かったよね。あー、疲れた。部長に報告しにいかないと」
「僕もくたびれた」
「二人共お疲れ様」
サーラの笑顔でまた頑張ろうと思う二人である。
「サーラ、無理しないように気を付けてね。赤ちゃん、二人いるんだし」
「ああ!頑張るぞ!」
サーラがぐっと両手を握る。アデスとイリシアは不思議なことが起こる国だ。きっとそれはこれからも変わらないだろう。
おわり
「いいなぁ、義父様」
サーラが思わず呟くとデュースが笑った。
「サーラは冒険に出たいのかな?」
「冒険?」
サーラが首を傾げると、デュースが頷く。
「世界を知ることで怖いことも沢山ある。知らない土地には知らない人間や神々がいる。でもこの恐怖を楽しめたら、一人前の冒険者に違いない」
サーラは胸の高鳴りを抑えられなかった。冒険にいつか行ってみたいとサーラは決意していた。自分は王女でこれから公務やなんやらで忙しくなることは明白だ。それでも冒険に出たい、とサーラには新しい夢が出来たのである。絶対に叶えよう、サーラは静かに決めた。
デュースはそろそろ行かなくてはと立ち上がった。見送りも不要だと。
「私はまたここに来る。また皆で話をしよう」
デュースが約束を違えたことはない。彼はあっという間にいなくなってしまった。
「お父様と久しぶりにお話できたなぁ」
ルビィがほう、と息をつく。神々や精霊たちにとって、デュースは憧れの対象らしい。ナナセやハンマーもどことなく嬉しそうだった。みんなデュースが大好きなのだ。サーラにもその気持ちがよく分かる。
「父さんの手伝いが出来ればなぁ」
「デキるジャナイカ」
ハンマーが笑う。
「神々とシリアエバイイノダロウ?」
「確かに…」
ナナセとハンマーはなにか決意したようだった。
✢✢✢
「というわけで、この騒動は一旦区切りがついたのかな?」
シンが確認するように言ってくる。サーラとナオが頷いた。
「長かったよね。あー、疲れた。部長に報告しにいかないと」
「僕もくたびれた」
「二人共お疲れ様」
サーラの笑顔でまた頑張ろうと思う二人である。
「サーラ、無理しないように気を付けてね。赤ちゃん、二人いるんだし」
「ああ!頑張るぞ!」
サーラがぐっと両手を握る。アデスとイリシアは不思議なことが起こる国だ。きっとそれはこれからも変わらないだろう。
おわり
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