黄金の瞳を持つのは聖女様?〜黄金の月〜

はやしかわともえ

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四章

十話・狙撃

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「あぁあ…」

シルジが頭を抱えている。正体がマサムネだとはっきり分かり、シルジは明らかに動揺していた。

「マサムネがそんな…なんで…」

「まさか女の子に僕の斬撃を堪えられるなんて…いや、まさかそんな…」

ナオも悔しそうだ。先程からぶつぶつ呟いている。

「二人共とにかく落ち着いて。あの子の後を追うんでしょ?」

シンの言葉に二人はハッとなった。彼女はまた必ず何処かで神々を召喚し抹殺しようとするだろう。ルビィは既に彼女の痕跡を探している。
サーラもルビィに力を貸していた。

「ごめん、皆。こんな所で立ち止まってちゃ駄目だよな」

「次は倒す」

シルジとナオが気力を取り戻したところにサーラは戻った。

「シルジ、ルビィの力でタイムマシンをパワーアップしておいたぞ」

「え…パワーアップ?さすが精霊!」

シルジがタイムマシンに飛び付きなにやら確認している。

「すげえ、スペックが倍になってやがる!」

「えっへん、ルビィの力すごいでしょ?」

シルジがルビィの頭を撫でた。

「ありがとな、ルビィ」

「ねえ、シルジ。マサムネってどんな子なの?ルビィ、知りたいなー!」

「私も聞いておきたい。お前の幼馴染みが悪いことをするとは思えないからな」

「ヤツの行動パターン詳しく」

ナオの瞳がギラリと輝く。

「その前にマサムネちゃんの場所は特定できたの?」

シンの冷静な指摘に他の皆がハッとなった。ルビィが空中にモニタを出現させる。

「マサムネはここによく出入りしてるみたい」

「げ」

シンが嫌そうに顔をしかめた。

「何か知ってるのか?シン」

サーラが尋ねると彼がため息を吐く。

「ここ、コーマンさんの屋敷。何かとアデスの王族の権限に噛みついてくる人なんだよ」

サーラも言われて思い出していた。シンと結婚した際に、かなり嫌味を言われたのを覚えている。金色の瞳についても散々文句を言われ、サーラは精霊の力を借りて彼をぐでんぐでんに酔っ払わせて場から退場させた。そのことはシンや他の者には秘密である。

「どこにでもそういうニンゲンがいるんだね」

ルビィが無邪気に笑った。

「まぁコーマンさんは素直な人だからまだいいけど、なんでマサムネちゃんはこんな所に?」

「これ」

ルビィが画像を拡大する。そこにいたのはコーマンともう一人。体の大きさから獣人であることが分かる。彼らの周りには魔術師と思しき人が数人いた。

「獣人の知り合いならすぐ分かるけど、こいつは誰だろう」

「こいつ、マサムネの義理の親父だ!」

シルジが叫んだ。

「じゃあマサムネちゃんは仕方なく言うことを聞いている?」

「あぁ、きっとそうだ。マサムネを利用してるに違いない」

シルジを手で制したのはナオだ。

「彼女の瞳は冷静そのものだったけどね?」

「ちょ、ナオ…」

シンが止めようとするがナオは構わず続ける。

「今度僕は彼女の頚を取るよ」

「な…そんな…」

シルジが口をパクパクさせている。ナオからはとてつもない殺気が湧いている。

「僕は警察隊長として、彼女に引導を渡す。それが嫌なら僕に力を見せてよ、シルジ」

「ぐ…力って…言われても」

シルジが両拳を握る。

「君がスナイパーであることを僕は知っている。彼女を君はいつでも狙撃できたはずだ」

「マサムネを撃つなんて」

ナオは殺気を収めない。それどころか更に強めた。

「シルジ、どうするの?」

シルジがぎゅっと歯を食いしばる。

「分かった、力を見せればいいんだな」

ナオが面白そうに笑った。
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