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四章

七話・アデスの歴史

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「え…アデス城って地下室あるの?」

「うん、あるよ。そっか、ルビィは行ったことないか」

ルビィはナオの肩に乗っている。すっかり彼女の定位置になってしまったようだ。一行は地下室に向かう階段を懐中電灯で照らしながら降りていた。高性能らしくかなり明るい。

「ナナセやハンマーはどうしたんだ?」

サーラが尋ねるとシンがあぁと頷いた。

「二人には何かあった時のために残ってもらったんだ」

「二人共めちゃくちゃ行きたいって顔してたけど、シンがなんとか止めたんだよね」

「だって未来へ行くなんて怖いじゃん」

ナオの言葉にシンがげんなりしながら言う。

「ルビィたちの力、そんなに信じられないのー?」

「し、信じてるけどさ!」

このやりとりをシルジは黙って見ていた。

「これが神々?」

シルジが呟く。彼は不思議そうだった。あまりの緩さに驚いたのかもしれない。

「ルビィは神々じゃなくて精霊だよ。でもアデスには沢山神々がいるんだ!もちろん精霊も!」

シルジが興味深そうにルビィを見つめる。ルビィはシルジに笑い掛けた。ルビィも可愛らしい女の子であることは間違いない。シルジの頬が赤くなったのをサーラたちは見逃さなかった。

「どうやってこの世界に顕現しているんだ?」

「ルビィの体はほとんど土だよ!人間の体に造り変えるのもお父様には簡単なんだから!」

「土…お父様?」

「あー、今色々言ってても解決しないし先に進もう!」

シンが話し出そうとした二人を止める。一行は先を急いだ。しばらく行くと、なにもない。ただ壁に突き当たる。

「ここからどうするんだ?」

「シルジ、壁に手を当ててみて」

「こうか?」

シルジが壁に手を当てるが、なにも反応はない。

「あれぇ?王族なら反応…って…まさか?」

「ここの管理をしていた精霊まで殺されちゃったんじゃない?」

ルビィが無邪気に言う中、シンが顔を青くする。

「それヤバすぎるし、ルビィもさらっと怖いこと言わないでよね」

「俺はどうすればいい?」

シルジも困惑しているようだ。シンがサーラを見つめた。

「サーラ、この壁に精霊繋げられる?」

「あぁ、やってみよう」

サーラが念じながら壁に自分の手を当てた。ガガガと壁が上に開く。

「な…!さすが聖女」

「聖女じゃないぞ。古い電池を新品に入れ替えたようなものだ」

「サーラ、その例えなー」

シンが思わずといった様子で苦笑いしている。シルジが書を手に取り開くと、見覚えのある人物が載っていた。

「か、母さん?」

「あー、アムデルー」

シンとルビィが同時に声を上げる。

「アムデル様なら俺もよく知っている。アデスを治めた最強の女王だって」

「最強…」

シンがまた苦笑いをする。

「アムデル様は神々に殺されたって俺は聞いている」

「はい?」

シンの戸惑いをよそに、シルジは何かを思い出そうとしているようだ。目を閉じて考えている。そのまま喋りだした。

「確かアムデル様は子供を産めなかったと聞いた。だからその罰で…神々が」

「待って待って、僕は?僕はアムデルの息子だよ?」

「そうか、未来が変わっているのは過去も変えられているせいなのか」

サーラがその事実に唸る。

「ねえシルジ、その神殺しをしたっていうやつはどんな子なの?」

ナオの質問にシルジがため息を吐く。

「分からない。ただ心当たりはある。俺の従者だったマサムネだ。あいつは強いから利用されてるのかも」

「面白いね、僕という最強に敵うのかな」

ナオの瞳がギラギラしているのは見間違いじゃないだろう。

「や、本当にマサムネは強いんだ。俺の幼馴染みで俺じゃ絶対に敵わないし、なんのためにあいつがそんなことをしたのかも分からない」

「大丈夫。戦闘なら任せて」

ナオはやる気満々だ。シルジもそれに頷く。

「神殺しを止めるために、過去の世界に行こう」

皆が頷いた。
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