黄金の瞳を持つのは聖女様?〜黄金の月〜

はやしかわともえ

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四章

二話・歴史

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「ど、どうしたの皆?難しい顔をして」

ナナセ、ハンマー、ルビィがぞろぞろと書斎にやってきたのを見て、シンは驚いていた。

「ねぇ、シン。ちょっとルビィたち大事なお話があって」

「そうなんだ。じゃ、なにか飲みながら話そうか」

シンがにっこり笑う。シンに連れられてきたのはブドウ畑を見守るための小屋だった。巨大な木材を切り出して作られた立派なテーブルに椅子が四脚並んでいる。シンはその小屋の冷蔵庫から瓶を取り出した。それはシン特製のブドウジュースである。アデスシャインのジュースはかなり好評だったようだ。シンは他の品種でもジュース作りにチャレンジしたらしい。ワインもいずれは作ってみたいと、野心もある。

アデスの季節は移り変わり、すでに秋も中盤だ。もうすぐ長く厳しい冬が訪れようとしている。そうなればアデスには雪が積もる。動物たちは冬眠に入り、人間たちもまた寒さをじっと堪らえるのだ。シンがグラスにジュースを注ぎ、皆に配った。自分も椅子に座る。

「それで、大事な話って?」

「…サーラ姫には出来るだけ話さないで欲しいんだけど約束してくれる?」

ナナセの言葉にシンはもちろんと頷いた。先程の出来事をナナセはシンに話す。

「タイム…トラベラー?」

「多分そうだと思う。アデスの歴史があまり残っていないからそれを探りに来たのかも」

「もうなんでもありって感じだね」

はぁあ、とシンがため息を吐いた。

「油断しないでね、シン。その子、銃を持っていたの!」

ルビィの言葉にシンも表情を引き締めた。

「分かった。気を付けるよ」

✢✢✢

(皆はどこに行ってしまったんだろうか?)

サーラはシンたちを探し回っていた。既に安定期に入り、お腹が目立って来ている。ボマスからよく歩くようにと言われていた。

「おい」

「!!」

ぐい、と腕を掴まれて抱き上げられていた。

「あんたがここの聖女様か?」

「せ…?」

聞き慣れないワードにサーラは固まった。

「金色の瞳に白髪、あぁ。間違いない。ちょっと来てもらうぞ」

サーラは抵抗しようとしたが出来なかった。腹に赤ん坊がいる。無理をしたら危ないかもしれない。

「あんた、腹にガキがいるのか。まあそんなのはどうでもいい。聖女として俺の国で働いてくれ」

「そ、そんな勝手な」

「アデスの未来の国が俺の国だ」

「え?」

サーラはポカン、としてしまった。

「俺の時代は今、最悪だ。羨ましいよ、あんたらが。それに聖女であるあんたがいるしな」

「私は聖女じゃないぞ?」

「こんなに強力で不思議な力を持った姫様はあんたくらいなもんだ。きっと特殊な血を持っていたんだな」

サーラには何を言っているかわからなかった。

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