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三章

七話・アパートメント

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その日、サーラは夢に堕ちていた。また暗闇の中だが、ルビィといつもの明かりを持った精霊に出迎えられる。そのまま地上と思われる場所に着地した。  

「サーラの力って上級クラスの神々だって持てないよ?」

「そうなのか?」

「お父様にも前に聞いたけど、そんな力を持ってる人は滅多にいないって言ってた」

「そうか」

ハンマーやナナセはこの次元に自分たちのアジトを持っているようだとルビィは推測している。
とにかく二人のペースを崩すのが大事である。

「ハンマー、一人だったら捕縛出来そうってラーが言ってたよ」

彼らも着々と準備をしてくれているようだ。
ふと、サーラは地面に何かが落ちているのに気が付いた。近寄って拾い上げると何かの鍵のようだ。

「誰のものだろう?」

これがなくては困るだろうとサーラは辺りを見渡した。神々の世界にもセキュリティというものがちゃんとあるのがなんだか可笑しい。

「ねえ、サーラ。その鍵、もしかしたらこの先にあるアパートメントのやつかも」

「え?」

ルビィの言葉にサーラは首を傾げた。

「試してみようよ。もしかしたらハンマーかナナセの物かも!」

「でも勝手に他人の部屋に入るなんて」

流石に良心が咎めたが、ルビィはやろう!の一択だった。

「もしこれで開けられても、中の物は弄らない、約束できるか?」

「うん!」

明かりを持った精霊にお礼を言った二人はアパートメントに向かった。神々にも家がある。彼らは概念でありながらもこうして生きている。それをお父様と呼ばれる彼はそれすらもやめようとしているのだ。神々の存在が人間社会に影響しすぎるからと。ハンマーやナナセがやろうとしていることは許されないことだが、反抗したくなる気持ちは何となく分かる。

アパートメントの鍵を差し込み、回すとそれは見事に開いた。

「やったあ!」

「まだナナセかハンマーの部屋って決まったわけじゃないぞ」

中には金庫や、書類が整理されて置かれている。
性格が部屋に表れると言うが正にその通りだろう。他に見るものもないなとサーラが踵を変えようとしたところでルビィが歓声を上げた。

「これ、ナナセの杖じゃない?」

確かに見覚えがある。

「どうする?へし折る?」

ルビィの発想にサーラは笑ってしまった。

「ルビィ、いいか?罰を下すのは私たちの役目じゃないんだ」

「サーラは本当に女神だよね」

サーラは鍵を机の上に置いて部屋を出た。
ルビィは惜しそうに何度も振り返っていたが。
目を覚ますと、シンが駆け寄ってきた。

「ハンマーの捕縛に成功したみたい」
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