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三章

六話・手合わせ

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ヒュウウと強い風が吹いている。アデス城の敷地内にある騎士の訓練を行う闘技場で対峙しているのはルビィとナオだ。二人からとてつもない緊張感が漂っている。サーラとシンはそれを外側から見ていた。ルビィがサーラを守ると聞いて、声を掛けてきたのはナオだったのだ。病院で彼はしばらく意識を失っていたらしいが、あの後すぐに意識を取り戻したらしい。しばらく休んでからここに来たのだという。そのスタミナ量にシンは呆れ、サーラはすごいと褒めた。ルビィが本当にサーラを守れるかどうか、ナオは彼女を試すつもりでいるようだ。

「ルビィ、どこからでもかかっておいで。僕は強いよ」

「ルビィも強いもん!負けないよ!」

ルビィが何かを唱えながら細い剣の先を地面に突くと魔法陣のような物が闘技場全体に広がった。

「へえ、フィールド魔法が張れるんだ」

ナオの感心をよそに、ルビィがナオに剣を振りかざす。それをナオは自分の太刀が納められている鞘で軽々と受け止めた。

「僕は太刀を抜かないよ」

ナオは敢えてルビィを挑発する気らしい。ルビィは後ろに飛び呪文のようなものを唱え始める。

「水よ、我に力を」

魔法陣の中から次から次へと水流が噴き上がってくる。ナオも流石にそれは想定出来なかったらしい。水流を避けるために走る。ルビィはそれを見越して先回りをしていた。ナオもいよいよ太刀を抜かざるを得なかった。 

ルビィの斬撃をナオは太刀で受け止める。ガキィンと金属音が辺りに響き渡る。 

「ふうん、なかなかやるじゃん。でもねルビィ、僕は一応この国では最強だからね」

ナオが走り出す。ルビィはその行動が読み切れない。慌てて水流を出現させるがナオに掠りもしない。

「チェックメイト」

ルビィの首元にナオは太刀を向けていた。

「やっぱりナオはニンゲンじゃないよー!うわああああん」

ルビィがその場に膝を付いて泣き出す。サーラは慌てて二人に駆け寄った。

「二人共怪我は?」

「してないよ」

ナオが涼し気に言う一方でルビィがサーラに抱きついて来る。サーラは彼女の頭をよしよしと撫でた。

「ルビィも強かったぞ。あんなに色々な魔法が使えるなんてすごいじゃないか」

「うん」

ずずず、とルビィが鼻をすする。

「ルビィ、君は僕と渡り合える。自信を持ちなよ」

「ナオは強過ぎだよ。お父様とも互角に戦えるんだから」

「まだあの人は本気を出してなかったからね」

ナオの言葉に皆があ然としたのだった。
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