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三章

五話・告発

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シンは自分の名を伏せ、幸せのたみの裏帳簿についての情報をリークした。その効果はてきめんだったらしい。どうやら組織が瓦解したようである。幹部と呼ばれていた人物たちには何も知らされていなかったようだ。幸せのたみに家宅捜索が入ったが武器は見つからなかった。だが、取引先からも確かに購入しているという証言が出ているる。ナナセとハンマーはそれを気取ったのか姿を見せなかった。幸せのたみについての捜査は表向きはそこで打ち切りとされたが、実際は神々に関わる事件として引き続き捜査されている。イリシア、アデスで起きているからこそ、慎重に捜査しなければならないという判断だ。サーラはシンから現状を聞いて、暴動は防げたとホッとした。幸せのたみの信者の中には当然子供を持つものもいる。不要な争いは起こしたくない。翌日にはそのニュースで持ち切りだった。

「シン、サーラ、これ見て」

ルビィが取り出したのは神々を撮影できる特殊なカメラだ。ナオとお父様と呼ばれる神が対峙した時、ナオに録画を頼まれたとルビィは言った。
二人はその映像を観た。ナオがいかに人間離れしているかがよく分かる。

「虎とか本当、よく相手出来るな」

シンが呆れたように言う。

「さすがナオだな!こんなに強そうな相手に立ち向かっていくなんて!」

サーラは半面、ぱあっと顔を輝かせた。

「シンももしかしてニンゲンじゃないの?サーラもナオも多分ニンゲンじゃないんだよ。ルビィは認めないよ」

ルビィが恐る恐るといった調子で言う。

「え?僕は凡人だから大丈夫だよ」

「本当に?」

「本当だよ」

シンがにっこり笑う。ルビィもそれで安心したらしい。いつもの明るいルビィに戻った。にしても、とシンが腕を組む。

「ハンマーとナナセはどこに行ったんだろう?最近動きが見えないから怖いよね」

「多分お父様も探してるよ。三柱も捕縛のためにかなり頑張ってるし」

「あっさり捕まえられないかな」

「ナナセはとにかく罠を見破るのが上手なの。ルビィもこの間仕掛けた時すごく気を付けたけど簡単に見破られた」

「そうだったね。うーん、頭がいいって厄介だな」

シンが腕を組みながら唸る。

「今のところ、僕たちに出来ることは三柱を待つのと、お父様の動き次第ってことか」

サーラは何もできないのが歯痒かった。せめてハンマーとナナセの今の状態を崩せないものかと思う。二柱が共に行動しているならそれを引き剥がせればまた状況が変わってくるかもしれない。

「あ、あのなシン、ルビィ、ハンマーとナナセの動向を探ろうと思うんだ。私の力なら相手に見られず様子を窺える」

「…サーラ、それは危ないんじゃ…」

「大丈夫だよ、シン。ルビィがサーラを守るよ」

「ルビィ、それなら僕と勝負して」

三人は思いがけない人に振り返った。
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