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三章
一話・追跡
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「サーラ、大丈夫?」
目を覚ましたサーラはぼーっとしていた。とにかく疲労している。シンが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「疲れた…」
「今冷たい水を持ってくるよ」
そう言ってシンが慌てて出ていった。
「サーラって丈夫なんだね」
ルビィに驚かれたように言われて、サーラはルビィを見つめた。
「神々たちにあんなに威圧されていたのに、寝込まないなんて流石すぎるよ」
「普通は寝込むのか?」
サーラの言葉にルビィは首を縦に振る。
「意識が数週間は戻らない人がほとんどじゃないかな?」
「そ…それは困るし怖いな」
「サーラはそれだけリスクを冒したんだよ。だから神々も力を貸す気になったんだと思う」
「それならやった甲斐があったな」
「サーラ、お水。ルビィも飲むでしょ?」
シンがお盆にグラスを3つ載せてやって来る。そしてもう一つ、何かの瓶が載っていた。
「シン、それは?」
サーラが水を飲みながら指を差すとシンがその瓶を手渡してくれる。
「アデスシャインのジュースだよ。畑を手伝ってくれている人に試しで配ってる。できたら商品化したいけどうーん、まだ難しいかな」
「この前のやつか?甘くて美味しかったよな」
「シン!ルビィも飲みたい!」
「今注いであげる」
ルビィが歓声を上げる。神々や精霊といった類のものは、何かを直接味わったり感じたり出来ない。こうして神々たちがこの世に干渉することがそんなに悪いことなのだろうかとサーラは思ってしまう。ルビィの言うお父様はきっとすごく慎重な神なのかもしれない。何かがあってからではと考えているのかもしれない。サーラはどうにか彼と話がしたかった。だがアクアやマーズ、ラーたちは皆、難しいだろうと首を振ったのだ。
「あっまーい!!なにこれ、すごいね!美味しいよ!」
「気に入ってくれた?サーラも飲める?」
「あ、あぁ」
シンがニコッと笑う。
「また危ない事考えてたでしょ?」
夢に堕ちてお父様という人物をどうにか探せないものか、と考えていたのでサーラは固まってしまった。シンは自分の気持ちが読み取れ過ぎる気がする。
「いや、えーと…」
「シン、これは考えていたみたいだね」
ルビィがふむふむと頷く。シンがサーラをぎゅ、と抱きしめた。耳元で囁かれる。
「今度は何をしようっていうの?」
サーラはわたわたしながら答えた。
「ルビィのお父様をなんとか探せないかなって」
「サーラ、前にも言ったけどお父様は気配を変えるのが上手いし、アクアが言った通り、ルビィたちが行けないところに行ってるかもしれないんだよ」
「ルビィたちの行けないところって?」
シンが鋭く指摘する。
「月って呼ばれている聖域があるの。お父様は疲れたらそこで休んでいるみたい」
「聖域かぁ。それじゃあ難しいかもね」
シンが唸る。
「人間に紛れ込んでるかもってアクアは言ってたよな?」
一縷の望みをかけてサーラはルビィに尋ねたが、ルビィはそれも現実的じゃないと首を横に振る。
「ニンゲンは沢山い過ぎる。お父様は自在に姿も変えられるし」
「やっぱり駄目か」
「どうしてサーラはそんなにお父様に会いたいの?」
「今のままで良いんじゃないかなって思ったんだ。確かに神々は概念かもしれないけど、幸せになったっていいんじゃないかな?」
「サーラは優しいね。ルビィたちのことまで考えてくれるんだ」
「私は精霊の友達が沢山いるから」
「うん、だから神々もサーラを無視できなかった。本当にサーラはすごいよ」
ルビィにそう言われると照れくさいが嬉しかった。
「とりあえずサーラもルビィも休みなよ。一晩気力を使って疲れてるだろうからさ」
「おやすみなさぁい」
ルビィが小さくなってベッドの真ん中に丸くなる。サーラも横になった。体が鉛のようである。
「シン、ナオは今日来るかな?」
「うん、来ると思うよ」
「探して欲しい人がいる」
サーラはシンに言伝を頼んだのだった。
目を覚ましたサーラはぼーっとしていた。とにかく疲労している。シンが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「疲れた…」
「今冷たい水を持ってくるよ」
そう言ってシンが慌てて出ていった。
「サーラって丈夫なんだね」
ルビィに驚かれたように言われて、サーラはルビィを見つめた。
「神々たちにあんなに威圧されていたのに、寝込まないなんて流石すぎるよ」
「普通は寝込むのか?」
サーラの言葉にルビィは首を縦に振る。
「意識が数週間は戻らない人がほとんどじゃないかな?」
「そ…それは困るし怖いな」
「サーラはそれだけリスクを冒したんだよ。だから神々も力を貸す気になったんだと思う」
「それならやった甲斐があったな」
「サーラ、お水。ルビィも飲むでしょ?」
シンがお盆にグラスを3つ載せてやって来る。そしてもう一つ、何かの瓶が載っていた。
「シン、それは?」
サーラが水を飲みながら指を差すとシンがその瓶を手渡してくれる。
「アデスシャインのジュースだよ。畑を手伝ってくれている人に試しで配ってる。できたら商品化したいけどうーん、まだ難しいかな」
「この前のやつか?甘くて美味しかったよな」
「シン!ルビィも飲みたい!」
「今注いであげる」
ルビィが歓声を上げる。神々や精霊といった類のものは、何かを直接味わったり感じたり出来ない。こうして神々たちがこの世に干渉することがそんなに悪いことなのだろうかとサーラは思ってしまう。ルビィの言うお父様はきっとすごく慎重な神なのかもしれない。何かがあってからではと考えているのかもしれない。サーラはどうにか彼と話がしたかった。だがアクアやマーズ、ラーたちは皆、難しいだろうと首を振ったのだ。
「あっまーい!!なにこれ、すごいね!美味しいよ!」
「気に入ってくれた?サーラも飲める?」
「あ、あぁ」
シンがニコッと笑う。
「また危ない事考えてたでしょ?」
夢に堕ちてお父様という人物をどうにか探せないものか、と考えていたのでサーラは固まってしまった。シンは自分の気持ちが読み取れ過ぎる気がする。
「いや、えーと…」
「シン、これは考えていたみたいだね」
ルビィがふむふむと頷く。シンがサーラをぎゅ、と抱きしめた。耳元で囁かれる。
「今度は何をしようっていうの?」
サーラはわたわたしながら答えた。
「ルビィのお父様をなんとか探せないかなって」
「サーラ、前にも言ったけどお父様は気配を変えるのが上手いし、アクアが言った通り、ルビィたちが行けないところに行ってるかもしれないんだよ」
「ルビィたちの行けないところって?」
シンが鋭く指摘する。
「月って呼ばれている聖域があるの。お父様は疲れたらそこで休んでいるみたい」
「聖域かぁ。それじゃあ難しいかもね」
シンが唸る。
「人間に紛れ込んでるかもってアクアは言ってたよな?」
一縷の望みをかけてサーラはルビィに尋ねたが、ルビィはそれも現実的じゃないと首を横に振る。
「ニンゲンは沢山い過ぎる。お父様は自在に姿も変えられるし」
「やっぱり駄目か」
「どうしてサーラはそんなにお父様に会いたいの?」
「今のままで良いんじゃないかなって思ったんだ。確かに神々は概念かもしれないけど、幸せになったっていいんじゃないかな?」
「サーラは優しいね。ルビィたちのことまで考えてくれるんだ」
「私は精霊の友達が沢山いるから」
「うん、だから神々もサーラを無視できなかった。本当にサーラはすごいよ」
ルビィにそう言われると照れくさいが嬉しかった。
「とりあえずサーラもルビィも休みなよ。一晩気力を使って疲れてるだろうからさ」
「おやすみなさぁい」
ルビィが小さくなってベッドの真ん中に丸くなる。サーラも横になった。体が鉛のようである。
「シン、ナオは今日来るかな?」
「うん、来ると思うよ」
「探して欲しい人がいる」
サーラはシンに言伝を頼んだのだった。
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