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二章

十話・隊長として

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「本当に大丈夫なのか?」

「サーラ、大丈夫だよ」

次の日、ナオは病院で支度を整えていた。頭の傷は痛むが仕方がない。サーラはシンと共に朝一番に来てくれた。腰に差した太刀を改めて確認したがとくに異常はないようだった。昨日の夜、念入りに手入れをしたこともある。
警察庁はイリシアにある。ナオの足で一時間程だ。

「また連絡してね」

「気を付けるんだぞ」

サーラとシンに手を振ってナオはアデスの砦を出た。

「隊長!!」

誰かに呼び止められる。ナオがそちらを見ると、警察車両がいた。どうやら迎えに来てくれたらしい。ナオは駆け寄った。

「どうしたの?」

車に乗り込んだナオが尋ねると、部下の青年がため息をついた。もちろんナオより年上である。

「どうしたもこうしたもないですよ。あんた、なにやってんすか?」

「何ってアデスの警備だけど」

「んなこた分かってますよ!提出された映像観ましたけど、あんなでかいやつ一人でどうにか出来るはずないじゃないですか!」

確かに無謀だったかもしれない、とナオは思った。

「あーもー!!俺たちそんなに頼りにならないんすか?隊長が倒れたらどうなるか…」

「ありがと、心配してくれたんだ?」

ふふ、とナオが笑うと部下はまたため息を吐いた。

「心配するに決まってるでしょう。もうあんな無茶やめてくださいね!」

「了解」

イリシアの街並みが見えてきた。車なので当然速い。本部に戻ると皆がナオの周りに群がってきた。

「隊長!よくぞご無事で!!」

「隊長万歳!!」

「皆、僕は本部長に昨日の件について詳しく報告してくる。後で会議をする、準備しといて」

「は!!!」

ナオは階段を上がっている。本部長のいる執務室は建物の最上階に位置していた。部屋のドアをノックすると返事があった。

「失礼致します」

ナオがドアを開けると、途端に静謐な空気が自分を纏う。目の前にあるデスクには誰もおらず、ふと窓の方を見やると初老の男がナオに背を向けて佇んでいた。この人にはまだ敵わないとナオは歯ぎしりしたくなる気持ちを堪えて言う。

「本部長、昨日の件で報告があります」

「負けたのか?」

負け…という言葉にナオはぐっと歯を食いしばった。悔しくないはずがない。周りにはずっと悟られないようにしていたが、昨日の自分は負けたのだ。悔しくて悔しくて仕方がなかった。だが、自分はあくまで警察部隊の隊長である。気を緩める訳にはいかない。

「負けました。私の力量不足です」

男がこちらを向く。彼はナオの父だ。つまり、サーラの父である。立派な髭をたくわえた彼は目を閉じている。

「警察部隊に弱い者は要らん。ただ強く在れ」

「はっ、申し訳ありませんでした!」

ナオは深くお辞儀をした。

「今回の件、神々が関わっているようだが、サーラはどうしている?夢に堕ちているのか?」

「はい。サーラ姉様は去年より数回に渡りアプローチしているようです」

「ナオ、サーラから目を離すな。あの子の力に今回は頼らざるを得ないかもしれない」

「!!」

父親の言葉にナオは驚いていた。サーラが夢に堕ちることを彼は心配していたからだ。だが相手が神々とあれば仕方ないのかもしれない。

「承知致しました」

ナオは再び礼をして部屋を後にした。

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