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二章
七話・当日早朝
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いよいよ夏祭り当日。サーラは早朝から会場の飾りつけをしている。今日のために国の皆で手作りした大事な飾りたちだ。観光客がその様子を眺めに何名かやって来た。宿がすぐそばにあるせいもあるだろう。中には、つなぎを着て作業をしているサーラに声を掛けてくる者もいる。サーラは去年の経験から慣れてきているのでにこやかに応対した。祭りの準備にこうして携われることが嬉しいとサーラは改めて思っている。そして、去年のようには絶対にさせないと決意していた。あんなに悲しい祭りにはもうしない。
「サーラ、少し休憩しよう」
シンが声を掛けてきた。サーラは最後の飾りをしっかり付けてシンの元に向かった。王族専用の席と来賓席には日除けが付いている。この広場はアデス城下町を抜けたすぐ先にある。なかなかの広さで、屋台を設営している者も多数いた。
「はい、お茶」
氷のたっぷり入ったたらいに浸けてあった巨大なやかんを持ち上げて、シンはグラスに茶を注いでくれた。サーラは喉がカラカラだったので一息で飲み干してしまった。
「暑いよね。お菓子もあるよ。サーラ、しばらくそこに座ってて」
シンからおやつにと山程菓子をもらった。サーラは椅子に座り、膝の上にそれらを置いた。
「僕はみんなにお茶を配ってくるね。ナオがそろそろ来ると思うけど」
「あぁ、分かった」
ナオは神々の捕縛をするための仕掛けをしている。ルビィも姿を消して彼に同行しているはずだ。サーラは菓子を一つ手に取り包みを開けた。もうすぐ昼だ。だんだん腹が減ってきている。もぐ、と一口食べるとふんわりした生地の中に甘いクリームがたっぷり入っていた。それをもぐもぐ食べていると、誰かがやって来る。観光客だろうか。
「姫君、美味しそうなお菓子ですね」
そこにいたのは長身の男だった。顔は眩しくてよく見えない。
「お一ついかがですか?」
サーラが笑って答えると、彼は笑った。
「では一つ頂きます」
彼に菓子を手渡す。サーラはもう一つ食べようと膝の上に置いてある菓子に目線を落とした。それは一瞬のことだった。ふと顔を上げると、その男はいつの間にかいなくなっていた。
「サーラ、キョロキョロしてどうしたの?」
ナオに声を掛けられる。
「あ、ナオ。今すごく背の高いおじさまがここにいたんだ。見かけなかったか?」
サーラの言葉にナオは太刀を握り締める。チャキという金属音。ナオが辺りを警戒し始めたのでサーラは驚いた。
「ど、どうしたんだ?急に」
「神々かもしれない」
「え?」
ナオの返事にサーラはまたも驚いてしまった。
「何もされなかった?」
ナオが詰め寄ってくるので、サーラは慌てて首を横に振った。
「お菓子を一つあげただけだ。何もされていないよ」
ナオがようやく警戒を解く。彼の警戒は戦闘経験のないサーラですら感じるレベルの威圧である。
彼は10歳の時、シンと共に半年間の修行に赴いている。サーラはその時遊び相手がおらず、退屈で仕方がなかった。
楽しみといえば二人から届いた手紙を読んで返事を書くことだった。この頃のサーラは力をうまく制御できず、何日間も夢の中から帰って来られなかったりしていた。両親が常にサーラのそばから離れずにいてくれた。サーラといえば、夢の中で精霊と遊んでいたので気楽なものだったのだが。
「何かおかしいって思ったら報せてね」
ナオに真剣な表情で言われて、サーラは頷いた。
「ルビィは?」
小声で尋ねる。
「ここだよ、サーラ」
ふ、とルビィが元の小さなサイズで現れた。ナオの肩に乗っている。
「僕の傍が一番安全だから」
確かにその通りだ。ナオは手練れの大人が相手でも完封できるくらいに強い。それが彼を警察隊長たらしめる理由である。
「ルビィ、ここにお父様は来ていないのか?」
サーラは希望を持って聞いた。
「お父様は気配を変えることが出来るの。だからハンマーやナナセに襲われない。でも、もしかしたら来てるかもしれない!ルビィ探してみる!」
「僕たちは見回りを続けるよ。シンに逐一連絡を入れるから」
「分かった。頼むぞ、ナオ、ルビィ」
サーラの言葉に二人は頷いた。
「サーラ、少し休憩しよう」
シンが声を掛けてきた。サーラは最後の飾りをしっかり付けてシンの元に向かった。王族専用の席と来賓席には日除けが付いている。この広場はアデス城下町を抜けたすぐ先にある。なかなかの広さで、屋台を設営している者も多数いた。
「はい、お茶」
氷のたっぷり入ったたらいに浸けてあった巨大なやかんを持ち上げて、シンはグラスに茶を注いでくれた。サーラは喉がカラカラだったので一息で飲み干してしまった。
「暑いよね。お菓子もあるよ。サーラ、しばらくそこに座ってて」
シンからおやつにと山程菓子をもらった。サーラは椅子に座り、膝の上にそれらを置いた。
「僕はみんなにお茶を配ってくるね。ナオがそろそろ来ると思うけど」
「あぁ、分かった」
ナオは神々の捕縛をするための仕掛けをしている。ルビィも姿を消して彼に同行しているはずだ。サーラは菓子を一つ手に取り包みを開けた。もうすぐ昼だ。だんだん腹が減ってきている。もぐ、と一口食べるとふんわりした生地の中に甘いクリームがたっぷり入っていた。それをもぐもぐ食べていると、誰かがやって来る。観光客だろうか。
「姫君、美味しそうなお菓子ですね」
そこにいたのは長身の男だった。顔は眩しくてよく見えない。
「お一ついかがですか?」
サーラが笑って答えると、彼は笑った。
「では一つ頂きます」
彼に菓子を手渡す。サーラはもう一つ食べようと膝の上に置いてある菓子に目線を落とした。それは一瞬のことだった。ふと顔を上げると、その男はいつの間にかいなくなっていた。
「サーラ、キョロキョロしてどうしたの?」
ナオに声を掛けられる。
「あ、ナオ。今すごく背の高いおじさまがここにいたんだ。見かけなかったか?」
サーラの言葉にナオは太刀を握り締める。チャキという金属音。ナオが辺りを警戒し始めたのでサーラは驚いた。
「ど、どうしたんだ?急に」
「神々かもしれない」
「え?」
ナオの返事にサーラはまたも驚いてしまった。
「何もされなかった?」
ナオが詰め寄ってくるので、サーラは慌てて首を横に振った。
「お菓子を一つあげただけだ。何もされていないよ」
ナオがようやく警戒を解く。彼の警戒は戦闘経験のないサーラですら感じるレベルの威圧である。
彼は10歳の時、シンと共に半年間の修行に赴いている。サーラはその時遊び相手がおらず、退屈で仕方がなかった。
楽しみといえば二人から届いた手紙を読んで返事を書くことだった。この頃のサーラは力をうまく制御できず、何日間も夢の中から帰って来られなかったりしていた。両親が常にサーラのそばから離れずにいてくれた。サーラといえば、夢の中で精霊と遊んでいたので気楽なものだったのだが。
「何かおかしいって思ったら報せてね」
ナオに真剣な表情で言われて、サーラは頷いた。
「ルビィは?」
小声で尋ねる。
「ここだよ、サーラ」
ふ、とルビィが元の小さなサイズで現れた。ナオの肩に乗っている。
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確かにその通りだ。ナオは手練れの大人が相手でも完封できるくらいに強い。それが彼を警察隊長たらしめる理由である。
「ルビィ、ここにお父様は来ていないのか?」
サーラは希望を持って聞いた。
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「僕たちは見回りを続けるよ。シンに逐一連絡を入れるから」
「分かった。頼むぞ、ナオ、ルビィ」
サーラの言葉に二人は頷いた。
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