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二章

二話・闇

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気が付くと、サーラは暗闇にいた。辺りを見回すが、真っ暗で何も分からない。くい、と腕を引かれてサーラが振り返ると精霊がいた。いつもこの精霊は灯りを持ってくれている。サーラは精霊の頭を撫でた。

「ありがとうな。ここから出られるだろうか?」

サーラの問いに精霊はぴょこんと跳ねる。どうやら可能らしい。サーラは精霊の後を付いていった。急に明るい場所に出たのでひどく眩しい。足元が自分を反射するほど透明度が高い。サーラは恐る恐る辺りを探った。夢の中のサーラは意識だけだ。ここにいる者からは、姿は見えないはずだが、警戒するに越したことはない。サーラは靴を脱いだ。ヒールの音が気になったからだ。靴を脱いで裸足で歩く。サーラはしばらく辺りを探ったが何も見つけられなかった。ここがどこなのかすら分からないので、仕方がない。

(冷静にならなくては)

アムデルからよく言われる言葉を思い返し、サーラは改めて周りを見渡した。何かがキラッと足元で輝く。サーラはそれに近寄って拾い上げた。
それは金色の小さな石だった。自分が忌み嫌われる理由を持つ色。サーラは思わず地面に投げつけそうになって堪えた。そんなことをしても何も解決しない。小さい石だ。叩き付ければ粉々になってしまうかもしれない。自分がこの石を砕く権利などあるはずがない。

サーラは改めて石を見つめた。金色は嫌いな色だ。だが、こうして改めて見ると悪くないかもしれない、と思う。サーラはハッとなった。誰かがやって来たのだ。慌てて物陰に隠れる。やってきたのはあの巨軀ななにかだった。それともう一人。人間のようにも見えるが、サーラの本能が危険を知らせている。

「ルビィには本当に手を焼かされるね。まさか逃げられちゃうなんてさ」

「殺セバイイダケダ」

物騒な台詞にサーラの心臓はばくばくと跳ねている。ルビィはどうやら無事らしい。だが、この者たちは、まだルビィを諦めているわけではないようだ。

「そっかぁ。人間として顕現している以上、殺せるんだった」

ははは、と人間のふりをした何かが言う。そして舌なめずりをした。残忍な表情にサーラは冷や汗を流す。

「みんな殺して世界を手に入れよう」

「世界ナドイラン」

「えー、ハンマー厳しいー!僕が欲しいんだから欲しいって言ってよー!」

「…」

この二人は仲間なのだろう。まだ他に仲間がいる可能性が高い。サーラは元の世界に戻ることにした。ルビィの安否が分かっただけよかった。
サーラは目を閉じた。
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