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お盆
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「2人共ー、起きなさい。ご飯が出来たわよ」
夏休みは瞬く間に過ぎていき、もうお盆が来ている。樹と克樹は昨日から実家に帰ってきていた。
実家は毎日朝が早い。
休みの日でも、必ず七時にはご飯だからと起こされる。
樹はベッドから起き上がって伸びをした。
自分の部屋でこうして寝起きするのも久しぶりだ。やはり慣れている部屋は居心地がいい。
樹の枕の隣には克樹がこの間、ゲームセンターで取ってくれたぬいぐるみが置いてある。
寮にひとりぼっちで置いてくるのはなんだか可哀想で、一緒に連れて帰ってきていた。
部屋から出ると克樹が欠伸しながらやってくる。2人の部屋は隣接している。
「かっちゃん、おはよう」
「おはよー、いっくーん。朝ご飯なにかなー?」
「えー、なんだろー?」
2人は揃って居間に向かった。
「おはよう、克樹、樹」
「おはよう、お父さん、お母さん」
「父さん、母さん、おはよー!」
両親に挨拶して、二人は食卓に座る。今朝のメニューは和食のようだった。
大きな焼き鮭が湯気を立てている。
それに山盛りのご飯に味噌汁。
他にお浸しや煮物まである。
母親は料理が好きで、毎日色々作ってくれる。
寮の食事も美味いが、やはり母親の手料理は時折食べたくなる。
「いただきまーす!」
二人は手を合わせて食べ始めた。
「2人共、今日はおばちゃんちに行くわよ。
2人で夜のお祭りに行くでしょう?」
「そっかぁ、お祭りって今日だっけ…」
樹が克樹の方を見ると、白米をかきこんでいる。
どうやらよほど腹が減っていたらしい。
確か昨日の夜は二人が大好きな鶏の唐揚げだった。山盛りに揚げられたそれを克樹がもりもり食べていたのを覚えている。
「克樹、もっとよく噛んで食べなさい」
「おかわり!」
克樹が茶碗を差し出している。
母親はため息を吐きながらも台所に向かう。
最近、克樹の食欲はますます増している。それを見て父親が笑った。
「克樹くらいの時は父さんもよく食べたよ。
樹も沢山食べなさい」
「はーい」
「はい、おかわり。よく噛んで食べなさいね」
母親が茶碗を持って戻ってくる。
「母さん、ありがと!」
久しぶりの母親の手料理は美味しかった。
「食った食ったー」
克樹が腹をさすっている。樹は笑ってしまった。
「お母さんのご飯ってやっぱり美味しいよね」
「うん。でも俺が一番楽しみにしているのは」
「?」
克樹が樹の手を取る。そのままぐい、と克樹に抱き寄せられる。至近距離で見つめられて、樹は顔が熱くなった。
耳元で囁かれる。
「今日のお祭り、俺とデートだよね?」
にっと克樹が笑う。
樹は彼の笑顔に見とれてしまった。
「この前言ってくれたよね?俺が頑張ったからご褒美くれるって」
樹の頭の中でその場面が再生される。
「うん、言った」
「じゃ、デートしてね!やった!」
克樹が鼻歌を歌いながら、自分の部屋に戻っていった。
着替えたら出発だと言われている。
樹も自分の部屋に戻った。
(付き合い始めてから、初めてのデート)
胸の鼓動がうるさかった。
樹は最近、なるべく克樹と2人きりにならないように気を付けていた。
そうじゃないと、自分を保っていられないと思ったからだ。
だが、今日は確実に2人きりになる。
(大丈夫かな…俺)
樹はそっと自分の胸に手を置いた。
夏休みは瞬く間に過ぎていき、もうお盆が来ている。樹と克樹は昨日から実家に帰ってきていた。
実家は毎日朝が早い。
休みの日でも、必ず七時にはご飯だからと起こされる。
樹はベッドから起き上がって伸びをした。
自分の部屋でこうして寝起きするのも久しぶりだ。やはり慣れている部屋は居心地がいい。
樹の枕の隣には克樹がこの間、ゲームセンターで取ってくれたぬいぐるみが置いてある。
寮にひとりぼっちで置いてくるのはなんだか可哀想で、一緒に連れて帰ってきていた。
部屋から出ると克樹が欠伸しながらやってくる。2人の部屋は隣接している。
「かっちゃん、おはよう」
「おはよー、いっくーん。朝ご飯なにかなー?」
「えー、なんだろー?」
2人は揃って居間に向かった。
「おはよう、克樹、樹」
「おはよう、お父さん、お母さん」
「父さん、母さん、おはよー!」
両親に挨拶して、二人は食卓に座る。今朝のメニューは和食のようだった。
大きな焼き鮭が湯気を立てている。
それに山盛りのご飯に味噌汁。
他にお浸しや煮物まである。
母親は料理が好きで、毎日色々作ってくれる。
寮の食事も美味いが、やはり母親の手料理は時折食べたくなる。
「いただきまーす!」
二人は手を合わせて食べ始めた。
「2人共、今日はおばちゃんちに行くわよ。
2人で夜のお祭りに行くでしょう?」
「そっかぁ、お祭りって今日だっけ…」
樹が克樹の方を見ると、白米をかきこんでいる。
どうやらよほど腹が減っていたらしい。
確か昨日の夜は二人が大好きな鶏の唐揚げだった。山盛りに揚げられたそれを克樹がもりもり食べていたのを覚えている。
「克樹、もっとよく噛んで食べなさい」
「おかわり!」
克樹が茶碗を差し出している。
母親はため息を吐きながらも台所に向かう。
最近、克樹の食欲はますます増している。それを見て父親が笑った。
「克樹くらいの時は父さんもよく食べたよ。
樹も沢山食べなさい」
「はーい」
「はい、おかわり。よく噛んで食べなさいね」
母親が茶碗を持って戻ってくる。
「母さん、ありがと!」
久しぶりの母親の手料理は美味しかった。
「食った食ったー」
克樹が腹をさすっている。樹は笑ってしまった。
「お母さんのご飯ってやっぱり美味しいよね」
「うん。でも俺が一番楽しみにしているのは」
「?」
克樹が樹の手を取る。そのままぐい、と克樹に抱き寄せられる。至近距離で見つめられて、樹は顔が熱くなった。
耳元で囁かれる。
「今日のお祭り、俺とデートだよね?」
にっと克樹が笑う。
樹は彼の笑顔に見とれてしまった。
「この前言ってくれたよね?俺が頑張ったからご褒美くれるって」
樹の頭の中でその場面が再生される。
「うん、言った」
「じゃ、デートしてね!やった!」
克樹が鼻歌を歌いながら、自分の部屋に戻っていった。
着替えたら出発だと言われている。
樹も自分の部屋に戻った。
(付き合い始めてから、初めてのデート)
胸の鼓動がうるさかった。
樹は最近、なるべく克樹と2人きりにならないように気を付けていた。
そうじゃないと、自分を保っていられないと思ったからだ。
だが、今日は確実に2人きりになる。
(大丈夫かな…俺)
樹はそっと自分の胸に手を置いた。
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