男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ

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健悟

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「あの、櫻木先輩。高山です」

樹は健悟の部屋のドアをノックした。
カチャリとドアが開く。

「おう、入れ」

「おじゃまします」

中は樹の部屋と全く同じだ。
ベッドが2つ並び、勉強机と棚がそれぞれに置いてある。
健悟のものと思われるベッドの周りにはギターとベースがスタンドに置かれている。
他にも色々な機材が整理されて置かれていた。

どれも高そうだ。樹は気を付けて室内を進んだ。

「とりあえずここに座れ」

「はい」

樹は言われた通り、ベッドに腰掛けた。
隣に健悟が座る。

「作詞、埋まってなかったとこ考えてみた。
お前は?」

「はい、俺も考えました…あ」

樹はノートを取り出そうとして、持っていたものを全て床にばら撒いてしまった。

「おいおい」

「っ…ぐすっ…」

「樹?」

樹は自分の目から流れる涙を止めることができなかった。

「どうしたんだよ?腹でも痛いのか?」

健悟が珍しくオロオロしている。
樹は首を横に振って涙を手のひらで拭った。
だが涙が止まらない。

「どうしたんだよ、樹?」

「わから…ないです」

わからないわけがなかった。
先程の克樹の言葉に傷付いたのだ。だから自分は今、とても揺れている。

健悟が樹の頭に手を置いた。

「泣くな、樹」

「はい…っ」

そのままぎゅっと抱き寄せられる。
健悟の顔が間近にある。

「泣くな。泣き止まないならキスする」

「ひえっ」

樹の悲鳴に健悟がニヤリと笑う。

「俺は本気だからな。嫌なら泣くのをやめろ」

「は…はい」

樹は自分の顔が熱くなるのを止められなかった。健悟はやはりかっこいい。
樹は健悟がやっているバンドについて、ネットで調べていた。インディーズだが、ライブをやると宣言すれば、チケットはすぐに売り切れるそうだ。

「樹、もう泣くな」

健悟にさらにキツく抱き締められる。
少し苦しかったが、そのおかげで冷静になることができた。

「もう大丈夫か?」

「はい。すみません」

涙がやっと止まってくれた。
樹はそれにホッとした。
健悟とキスなんてしたら、もう彼と普通に話せなくなってしまうだろう。

「樹、お前の詩を見せてみろ」

「はい」

試験の打ち合わせは自由時間が終わるまで続いた。


✣✣✣

「お疲れ様、樹」

「ただいま」

自分の部屋に戻ってきた樹は、自分の机の前に座った。自主学習の時間だ。風はすでに勉強を始めていた。

「もしかして熱ある?顔赤いよ?」

風にそう尋ねられて、自分が、先程まで泣いていたことを思い出した。

「大丈夫だよ」

樹はなんとか、明るく返した。
克樹のことは今はどうしようもない。
自分が勝手に傷付いているだけだ。
克樹が悪いわけではない。

「克樹が心配してたよ」

「え?」

克樹という名前にドキリとしてしまう。

「なんか樹が具合悪そうって」

「ううん、大丈夫」

「本当?」

「本当だよ」

樹はホッとした。克樹に自分の気持ちはバレていない。
この気持ちは誰にも言えない。これからもそれはずっと変わらないだろう。
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