男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ

文字の大きさ
上 下
12 / 52

門限ラッシュ!

しおりを挟む
夢プロの制服は街にある洒落た洋品店で取り扱われている。
2人が注文していたのは夏服だった。
6月に入れば衣替えの時期にもなる。
代金はすでに支払いは済ませており、受け取りに時間はかからなかった。

「ね、いっくん。やばい」

克樹が自分の腕時計を示してくる。文字盤を見ると17時を回っていた。
ここから夢プロまでまだ大分ある。

「急ごう!」

2人は制服の入った袋を手に駅に向かって駆け出した。
門限厳守ということは予め言われている。
もし破れば反省文ということもだ。

2人がゼイゼイ言いながら学校内に入ると、17時57分だった。

「ひいい、危ねえー」

「つ…疲れたぁ」

樹は思わずその場に座り込む。克樹もまた呼吸が荒い。

「おい、樹!」

「あれ?櫻木先輩?」

向こうからギターケースを背中に背負った健悟がやってくる。

「げ、櫻木先輩かー」

どうやら克樹も健悟を知っているらしい。
健悟はそれだけ校内で目立つのだろう。

「おい、樹。ずっと探したんだぞ。
なんだ、克樹もいたのか」

「なにかありましたか?」

樹が尋ねると、健悟が頷いた。

「とりあえず先に夕飯ゆうめしを食うぞ。話はそこでする」

「分かりました。行こう、かっちゃん」

「うん」

いつもより生徒の少ない食堂で3人は夕飯を食べ始めた。
今日は中華丼だ。たっぷり具材の入ったアツアツの餡とご飯がよく合う。

「樹、これ見てみろ!」

健悟から受け取ったのはお知らせと書かれたA4サイズのプリントだった。
樹は内容を一通り見て驚いてしまった。
克樹にも渡してやる。

「えー!ユニットでデビューオーディション?プロデューサー必須…へー」

「なんですか?この企画」

「時々学長の気まぐれでやるレアなイベントらしい。これに合格すると、曲のリリースが出来る。樹もプロデューサーになりたいなら一緒にやるよな?」

もう健悟に言われてしまえば縦に頷くこと以外に出来ない樹である。

「いっくんが出るなら俺もやるー!」

「あぁ、お前も誘おうと思っていた」

「まじっすか…」

克樹が困ったように言うのがなんだかおかしい。本当に健悟が得意じゃないのだろう。

「とりあえず休み明けの楽曲試験の結果もこれに響くらしい。飯食ったら談話室で作業するぞ、いいな?」

「は、はい!」

「櫻木先輩?俺も一緒にいていい?」

「たりめーだろ!」

克樹もよく食べるが、健悟もよく食べる。
スラッとした痩身からは思いもつかない食べっぷりだった。
樹がようやく食べ終えるのを健悟は静かに待っていてくれた。

(櫻木先輩って意外と優しい?)

健悟の新しい一面が見られたようでなんだか嬉しい。

「樹、克樹、行くぞ!」

3人で談話室に向かった。
今日の寮はいつもより遥かに静かだった。
生徒のほとんどが家に帰っているためだろう。

「櫻木先輩はお家に帰らなかったんですね」

「いや、昨日学校終わった後、荷物取りにちらっと帰った」

樹の問に健悟が答えてくれる。
だんだんこうして普通に話が出来るようになったのがいつからだったか、はっきりしないが、樹は嬉しかった。

「おー、なんか男!って感じ?」

「お前らもじきにそうなるよ」

「そうっすかねぇー」

克樹が笑っている。
談話室もがらんとしていた。

「作詞、最後に詰めるぞ」

「はい!」

今日でいよいよ曲が完成する。樹はそれに胸が高鳴った。
自分が作った曲が形になるのはいつでも嬉しい。

「よし、これで行くか」

「はい!」

「いっくん、すっげ!いい曲だね!」

克樹も一緒に曲を聞いてくれていた。

「で、オーディションは秋にやるらしい。
らしいっていうのは、まだ時期がはっきりしてないからだ。だからこっちから先手を打つ」

「なるほど!どうするんすか?」

「まぁ見ていろよ」

克樹を見てニヤリと健悟は笑った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!

柑橘
BL
王道詰め合わせ。 ジャンルをお確かめの上お進み下さい。 7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです! ※目線が度々変わります。 ※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。 ※火曜日20:00  金曜日19:00  日曜日17:00更新

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

処理中です...