11 / 52
ぬいぐるみ
しおりを挟む
ゲームセンター内に入ると、ゲーム音で騒がしい。だが直に慣れてくる。
「いっくん、見てみて!」
他のゲーム機を見ていた樹は、克樹の方へ走り寄った。
「何かあった?」
「これ、いっくんが好きなキャラじゃない?」
確かに克樹の言う通り、樹の好きなキャラクターだった。なかなかこのキャラクターのグッズが出ないとファンの間から言われていたことを思い出す。樹はそのぬいぐるみをガラス越しに見つめた。出来はかなりいい。
このぬいぐるみでラストなのか、奥の棚は空だった。
克樹もゲーム機内の、ぬいぐるみの位置を確認している。
UFOキャッチャーは克樹の得意なゲームだ。
だが、とても大きなぬいぐるみだ。
簡単には取れないだろう。樹は財布の中身を思い出していた。
小遣いは大事に使うように両親から厳命されている。今月は新しい漫画や文房具も欲しい。
どうしようか迷っていると、克樹がニッと笑った。財布から500円玉を取り出している。
「やってみよ!」
樹が止める間もなく、克樹はマシンに500円玉を放っていた。
プレイ回数は6回。
「かっちゃん、大丈夫なの?」
「任せて!」
そんな兄の笑顔にドキドキしてしまう。
(かっちゃんってやっぱりかっこいいな)
改めてそう思う樹である。
克樹の操作は全て的確だった。
やはり上手い。
ぬいぐるみを絶妙な位置へずらしていく。
「ラストでいけるかなー」
「頑張れ!かっちゃん!」
克樹はぬいぐるみをアームで掴んだ。
ぬいぐるみがゆるゆると持ち上がる。
「いっけー!」
ぽすん、とぬいぐるみが取り出し口に落ちてくる。2人はお互いを見つめ合った。
「取れた?」
「うん、取れたよね?」
克樹が取り出し口からぬいぐるみを取り出す。
「すごい!かっちゃん!!」
「いっくん、どうぞ」
「ありがとう!!」
樹はぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
近くで見ると、より出来の良さが分かる。
「わぁ、可愛い。本当にありがとう!」
「いっくん、太鼓の鉄人で対戦しよ!」
「うん!」
2人はしばらくリズムゲー厶やレースゲームなどの対戦ゲームを堪能した。
腕時計を見ると、いつの間にか16時になっている。
「かっちゃん、大変!制服!」
「あ!もうそんな時間か!行こう!」
2人は走って駅を目指した。
こうやって一緒にいられるのもいつまでだろう、と樹はふと考えてしまう。
克樹がアイドルになれば尚更だ。
それなら自分がプロデューサーになればいい、と強気な自分は言うが、本当にそれが可能かどうか時々不安になる。
芸能界の仕事は甘くない。勉強すればするほど、実感する。
(俺はどうしたら…)
「いっくん、大丈夫?」
「かっちゃん…俺」
克樹が自分を優しく抱き締めてくれた。
「大丈夫、俺がいるし!」
ぎゅうううーと抱き締められて、ホッとする自分がいる。
「なんだよソレ…」
思わず笑ってしまったら、克樹も笑った。
「俺はいっくんの一番の味方だから!」
「うん、ありがとう。かっちゃん」
克樹の言葉は嬉しい。だが少し傷付いてしまう。克樹が自分を特別視してくれるのは自分の弟だからであって、樹だからというわけじゃない。
そんな繊細すぎる自分が、樹は嫌いだった。
「かっちゃん、早く制服取りに行こ」
「うん、行こう!」
2人は朝、出発した時と同じように手を繋いで歩き出した。
樹は隣の克樹を見上げる。
克樹の大きな手が大好きだ。
それはこれからもずっと変わらないのだろう。
「いっくん、見てみて!」
他のゲーム機を見ていた樹は、克樹の方へ走り寄った。
「何かあった?」
「これ、いっくんが好きなキャラじゃない?」
確かに克樹の言う通り、樹の好きなキャラクターだった。なかなかこのキャラクターのグッズが出ないとファンの間から言われていたことを思い出す。樹はそのぬいぐるみをガラス越しに見つめた。出来はかなりいい。
このぬいぐるみでラストなのか、奥の棚は空だった。
克樹もゲーム機内の、ぬいぐるみの位置を確認している。
UFOキャッチャーは克樹の得意なゲームだ。
だが、とても大きなぬいぐるみだ。
簡単には取れないだろう。樹は財布の中身を思い出していた。
小遣いは大事に使うように両親から厳命されている。今月は新しい漫画や文房具も欲しい。
どうしようか迷っていると、克樹がニッと笑った。財布から500円玉を取り出している。
「やってみよ!」
樹が止める間もなく、克樹はマシンに500円玉を放っていた。
プレイ回数は6回。
「かっちゃん、大丈夫なの?」
「任せて!」
そんな兄の笑顔にドキドキしてしまう。
(かっちゃんってやっぱりかっこいいな)
改めてそう思う樹である。
克樹の操作は全て的確だった。
やはり上手い。
ぬいぐるみを絶妙な位置へずらしていく。
「ラストでいけるかなー」
「頑張れ!かっちゃん!」
克樹はぬいぐるみをアームで掴んだ。
ぬいぐるみがゆるゆると持ち上がる。
「いっけー!」
ぽすん、とぬいぐるみが取り出し口に落ちてくる。2人はお互いを見つめ合った。
「取れた?」
「うん、取れたよね?」
克樹が取り出し口からぬいぐるみを取り出す。
「すごい!かっちゃん!!」
「いっくん、どうぞ」
「ありがとう!!」
樹はぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
近くで見ると、より出来の良さが分かる。
「わぁ、可愛い。本当にありがとう!」
「いっくん、太鼓の鉄人で対戦しよ!」
「うん!」
2人はしばらくリズムゲー厶やレースゲームなどの対戦ゲームを堪能した。
腕時計を見ると、いつの間にか16時になっている。
「かっちゃん、大変!制服!」
「あ!もうそんな時間か!行こう!」
2人は走って駅を目指した。
こうやって一緒にいられるのもいつまでだろう、と樹はふと考えてしまう。
克樹がアイドルになれば尚更だ。
それなら自分がプロデューサーになればいい、と強気な自分は言うが、本当にそれが可能かどうか時々不安になる。
芸能界の仕事は甘くない。勉強すればするほど、実感する。
(俺はどうしたら…)
「いっくん、大丈夫?」
「かっちゃん…俺」
克樹が自分を優しく抱き締めてくれた。
「大丈夫、俺がいるし!」
ぎゅうううーと抱き締められて、ホッとする自分がいる。
「なんだよソレ…」
思わず笑ってしまったら、克樹も笑った。
「俺はいっくんの一番の味方だから!」
「うん、ありがとう。かっちゃん」
克樹の言葉は嬉しい。だが少し傷付いてしまう。克樹が自分を特別視してくれるのは自分の弟だからであって、樹だからというわけじゃない。
そんな繊細すぎる自分が、樹は嫌いだった。
「かっちゃん、早く制服取りに行こ」
「うん、行こう!」
2人は朝、出発した時と同じように手を繋いで歩き出した。
樹は隣の克樹を見上げる。
克樹の大きな手が大好きだ。
それはこれからもずっと変わらないのだろう。
0
お気に入りに追加
142
あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。

なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!
柑橘
BL
王道詰め合わせ。
ジャンルをお確かめの上お進み下さい。
7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです!
※目線が度々変わります。
※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。
※火曜日20:00
金曜日19:00
日曜日17:00更新
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール
雨宮里玖
BL
エリート高校の親衛隊プラスα×平凡無自覚総受け
《あらすじ》
4月。平凡な吉良は、楯山に告白している川上の姿を偶然目撃してしまった。遠目だが二人はイイ感じに見えて告白は成功したようだった。
そのことで、吉良は二年間ずっと学生寮の同室者だった楯山に自分が特別な感情を抱いていたのではないかと思い——。
平凡無自覚な受けの総愛され全寮制学園ライフの物語。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる