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「加那、すごい泣いてたな。大丈夫か?」

映画を観終わり、二人はモール内のフードコードで食事をしている。

「うう、切な過ぎた」

「まあ泣き所いっぱいあったけど・・・加那は嵌まり過ぎというか」

千尋が笑った。

「だって好きなひとが死んじゃうなんて一番悲しいじゃん」

「そりゃまあそうなんだけど」

千尋が加那太の頭を撫でる。

「俺より先に死ぬなよ」

「そんなの分からないよ」

加那太の瞳にはまた涙が溜まってきている。千尋が困ったように笑った。

「大丈夫だよ。気を付けて生きれば」

「うん、気を付ける」

加那太が大仰に頷くと千尋が笑う。ブブブと頼んだ商品が出来たことを機械が告げている。

「お、出来たみたいだな」

加那太はローストビーフ丼、千尋は温玉とろろうどんと天ぷらの盛り合わせを頼んでいた。

「わ、美味しそう!映え!」

「天ぷらシェアするか?俺、エビはちょっと」

「あ、プリン体?」

「それもあるけど、さっきポップコーン食い過ぎた」

二人で映画に夢中になりながらむしゃむしゃしていた。バターの塩気がキャラメルの甘みを引き出してくれる。甘じょっぱい食べ物は際限なく食べられる不思議だ。

「美味しかったなあ、あれ」

「ああ。背徳的だよな」

加那太がローストビーフ丼の写真を撮っている。

「いいねえ、美味しそう」

「食べようぜ」

頂きますと手を合わせて二人は食べ始めた。

「美味しい」

「ああ、美味いな。ほら天ぷらも食えよ」

「ありがとう」

加那太は遠慮せずに大きなエビ天をもらって食べた。

「うま!ぷりぷり!」

「よかったじゃないか」

「千尋は糖質制限緩くしたのにまだ続けてるもんね」

「一応な。この後どうする?」

スマートフォンの時計を見ると13時を過ぎている。

「うん、まだ時間あるし、コンシューマーゲーム見てもいい?」

「ああ。前に欲しいとか言って結局買ってなかったじゃないか」

「あ、あの新作?」

そうと千尋が頷く。

「あれね、ソシャゲが原典だったの。僕、そのソシャゲやったことなかったし話分かるのかなあって」

加那太は評判を見てから購入しようと決めていたらしい。

「で、どうするんだ?買うのか?」

「もう一本欲しいのが出て来てね」

加那太が溜息を吐く。

「プレイするならがっつりしたいからどっちかは今日買う」

「すごいな。俺はゲームさっぱりだから加那の情報網に驚く」

「いやいや、僕は雑誌が情報源だから」

食事も食べ終えて二人はゲームのコーナーに向かった。

「わ、これ新作・・・あ、リメイクか」

加那太のゲーム関係の話は千尋には正直分からない。それでも加那太が楽しそうだから付き合える。

「これ、俺がやってるやつだ」

千尋は見慣れたタイトルを手に取った。「まきばstory」という農場王を目指すゲームである。

「あ、それ新作だよ」

「え?もう新しいの出てるのか?」

この間ようやく牛を飼い始めた千尋には驚き以外の何物でもない。

「千尋はこつこつやってるもんね。面白いでしょ?」

「ああ、面白い。生産性を考えて畑耕したり」

「千尋得意そうだよね」

「結婚したいんだよな。ちょうどいい男居ないか?」

「千尋が婚活始めてるw好みの子は誰?」

「優しそうなのは帽子のあいつだな。不愛想だけど面倒見良さそうだし」

「あの子ならそこまで難しくなかったはず」

二人で攻略を話しながら加那太は今日買うゲームを決めていた。

「これにしてみる」

加那太が手に取ったのは最新作のRPGである。長期にわたる人気シリーズである。

「お、決まったのか?」

「これ難しそうだけどやってみたくて」

「この間、それの動画で観てたよな」

「うん、そうなの。何とか弟君を助けてあげたい」

加那太が会計を済ませて戻って来る。

「お待たせ。千尋、他に服とか靴とか見なくていいの?」

「あ、靴か。長靴欲しいんだよな」

「え?長靴?」

「そう、母さんが家庭菜園やってるだろ?今度手伝ってくれって言われててさ」

「わ、僕もやりたい」

「草取りとかするんだぞ」

「え?結構そういうの得意」

「じゃあ長靴買うか」

二人で長靴を見る。サイズを確認するのが先だ。

「加那、これは?」

千尋が一足長靴を取り出す。それはネイビー色のものだ。

「へえ、こんな色あるんだ」

「俺は黒にする」

試しに履いてみるとちょうどいい。千尋が買ってくれることになった。

「ありがとう、千尋」

「いや、今日はほとんど加那太が払ってくれてたし」

「それはいいんだよ、僕が誘ったんだし」

「ありがとうな」

ここから目的のホテルまで少し距離がある。そろそろ移動しようと二人はモールを出た。
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