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「どれにするかな」
週末、天気予報は当たり、雪がちらついていた。
今は千尋と近くのスーパーに買い物に来ている。この間なくなってしまった、タマのおやつも買わなければならない。
「加那はどれがいい?」
千尋はトイレの消臭剤の香りで迷っているらしい。前まで愛用していたものが販売終了してしまったようだ。
「うーん、正直サンプル嗅ぎ過ぎて何がなんだか分かんなくなってるかも」
「実は俺もだ」
加那太は一つ、水色のパッケージを手に取った。
「無難に石鹸の香りで!失敗ないでしょ」
「そうだな、そうするか」
二月は冬で一番冷え込む。温かい鍋が食べたいと加那太は強請った。今は白菜が安いらしい。千尋は大きな白菜を一玉カゴに入れていた。
「これならロール白菜ができるな」
「わぁ、それ僕が大好きなやつ」
千尋の作る肉団子がそもそも美味いのに、スープにしみしみとろとろになった白菜も加われば、最強以外の何物でもない。
「千尋のロール白菜は飲み物」
「いや、頼むからちゃんと噛んでくれ」
千尋に真顔で突っ込まれる。二人は笑った。
「あと食べたいもんあるか?」
「ミートソースパスタ!」
「加那は本当、挽き肉好きだよな」
「大好き。あ、タマのおやつ持ってきて良い?」
「おう、向こうの豆腐のコーナー見てるな」
「はーい」
恐らくは鍋に入れる豆腐を吟味するのだろう。
千尋のことだ。豆腐ではなくて厚揚げをチョイスする可能性もある。鍋の素になるスープは豆乳だと言っていた。どんな鍋が出来るかとても楽しみだ。
「えーと、マグロはこれか」
猫のおやつがスーパーに当たり前のように売っているのは有り難い。加那太が豆腐のコーナーに向かうと、千尋が豆腐の成分表示を眺めていた。グラム数を見ているのだと気が付く。
「それにするの?」
「焼き豆腐でもいいぞ」
「わあ、美味しそう」
千尋は必要な材料を全てカゴに入れ終わったらしい。買い物メモをチェックしている。
「よし、行こう」
レジに向かって会計を済ませる。最近は支払機が無人になって、スピーディになった。
一度に複数人客を捌けるのだから、店側も楽なのだろう。
「加那、早速今夜鍋するか?」
「うん!」
千尋の提案が加那太は嬉しかった。
トランクを開けてカートから荷物を積む。
「加那、これ飲むか?おつとめ品だけど」
千尋が渡してきたのは値引きされているミルクココアだった。
「千尋の分はある?」
「あるぞ」
千尋は何をやらせてもスマートである。
加那太がカートを戻して車に向かうと、千尋が暖房をつけていてくれた。
「今日は休みだから道が混むぞ。早めに来て良かったな」
「うん、本当だね」
雪が舞う中を車は走る。積もりこそしないが冷える。
「お父さん大丈夫かなぁ?」
加那太が思わず呟くと、千尋が頷いた。
「新潟だろ?雪すごそうだよな」
加那太の父親は現在新潟県で単身赴任をしている。時折帰って来る度にこっちに戻ってきてよと加那太は頼んでみるのだが、仕事が楽しいからとなかなか聞いてもらえない。
「まぁ加那パパはたくましいもんな」
「たくましいというか、単純に新潟の海が好きなんだよね」
「確かに新潟の海はいいよなあ」
千尋が同意してくれて、加那太は嬉しかった。
「また遊びに行こうぜ」
「うん」
また、があるのは嬉しいなと加那太の心がほっこりした。
週末、天気予報は当たり、雪がちらついていた。
今は千尋と近くのスーパーに買い物に来ている。この間なくなってしまった、タマのおやつも買わなければならない。
「加那はどれがいい?」
千尋はトイレの消臭剤の香りで迷っているらしい。前まで愛用していたものが販売終了してしまったようだ。
「うーん、正直サンプル嗅ぎ過ぎて何がなんだか分かんなくなってるかも」
「実は俺もだ」
加那太は一つ、水色のパッケージを手に取った。
「無難に石鹸の香りで!失敗ないでしょ」
「そうだな、そうするか」
二月は冬で一番冷え込む。温かい鍋が食べたいと加那太は強請った。今は白菜が安いらしい。千尋は大きな白菜を一玉カゴに入れていた。
「これならロール白菜ができるな」
「わぁ、それ僕が大好きなやつ」
千尋の作る肉団子がそもそも美味いのに、スープにしみしみとろとろになった白菜も加われば、最強以外の何物でもない。
「千尋のロール白菜は飲み物」
「いや、頼むからちゃんと噛んでくれ」
千尋に真顔で突っ込まれる。二人は笑った。
「あと食べたいもんあるか?」
「ミートソースパスタ!」
「加那は本当、挽き肉好きだよな」
「大好き。あ、タマのおやつ持ってきて良い?」
「おう、向こうの豆腐のコーナー見てるな」
「はーい」
恐らくは鍋に入れる豆腐を吟味するのだろう。
千尋のことだ。豆腐ではなくて厚揚げをチョイスする可能性もある。鍋の素になるスープは豆乳だと言っていた。どんな鍋が出来るかとても楽しみだ。
「えーと、マグロはこれか」
猫のおやつがスーパーに当たり前のように売っているのは有り難い。加那太が豆腐のコーナーに向かうと、千尋が豆腐の成分表示を眺めていた。グラム数を見ているのだと気が付く。
「それにするの?」
「焼き豆腐でもいいぞ」
「わあ、美味しそう」
千尋は必要な材料を全てカゴに入れ終わったらしい。買い物メモをチェックしている。
「よし、行こう」
レジに向かって会計を済ませる。最近は支払機が無人になって、スピーディになった。
一度に複数人客を捌けるのだから、店側も楽なのだろう。
「加那、早速今夜鍋するか?」
「うん!」
千尋の提案が加那太は嬉しかった。
トランクを開けてカートから荷物を積む。
「加那、これ飲むか?おつとめ品だけど」
千尋が渡してきたのは値引きされているミルクココアだった。
「千尋の分はある?」
「あるぞ」
千尋は何をやらせてもスマートである。
加那太がカートを戻して車に向かうと、千尋が暖房をつけていてくれた。
「今日は休みだから道が混むぞ。早めに来て良かったな」
「うん、本当だね」
雪が舞う中を車は走る。積もりこそしないが冷える。
「お父さん大丈夫かなぁ?」
加那太が思わず呟くと、千尋が頷いた。
「新潟だろ?雪すごそうだよな」
加那太の父親は現在新潟県で単身赴任をしている。時折帰って来る度にこっちに戻ってきてよと加那太は頼んでみるのだが、仕事が楽しいからとなかなか聞いてもらえない。
「まぁ加那パパはたくましいもんな」
「たくましいというか、単純に新潟の海が好きなんだよね」
「確かに新潟の海はいいよなあ」
千尋が同意してくれて、加那太は嬉しかった。
「また遊びに行こうぜ」
「うん」
また、があるのは嬉しいなと加那太の心がほっこりした。
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