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「作るべきです」
加那太はスマートフォンの画面を見て息を呑んだ。千尋は隣で眠っている。千晶に先程の相談をチャットでしているのだ。先程文章でまとめてみたもののかなりグダグダした内容になってしまった。だが、千晶は最後まで読んでくれたようだ。優しい友人である。
「かなさんのパートナーは間違いなく千尋さんです。十分吊り合ってます。バレンタインは、絶対にチョコを作って渡しましょう」
千晶のはっきりした物言いに、加那太は救われたような思いがした。千尋はもちろん今でもモテる。異性は当然、同性からもだ。顔立ちが整っているからというのはもちろん、性格も優しい彼には非の打ち所がない。
「かなさんからデートに誘うのはどうですか?」
千晶の提案に加那太はびっくりしてしまった。今までも遊びに行こうと誘ってくれたのはいつも千尋からだった。加那太なりに頑張ってデートプランを決めてみると千晶に伝えると、いくつかお洒落なレストランを紹介してくれた。全てビュッフェ形式だがカジュアルな服装でもいいものだ。これならそこまで畏まらずに済む。
加那太は千晶に礼を言った。
「かなさん、2/13の夜は空けておいてくださいね」
千晶が一緒にチョコレートを作ってくれるらしい。真司も協力してくれて、千尋と飲みに行けるか明日聞いてみると言ってくれていた。
そこまでしてもらっていいのかな、と一瞬不安に思ったが、頭を振って紛らわせる。千晶と真司におやすみとチャットで伝え、加那太はスマートフォンを置いた。
「加那」
ぬ、と急に千尋の手が伸びてきて、加那太は驚いた。
「千尋?起こしちゃった?」
「お前に触りたかった」
そう言って千尋は加那太の耳たぶや頬を指でつんつんつついている。
「やっぱり加那は柔らかいな。好きだよ」
ドキッとしてしまったが、千尋は多分寝ぼけてるのだと加那太は思い、笑った。
「僕だって千尋が好きなんだからね?絶対に負けないよーだ」
「ふふ」
千尋が笑っている。なんだか久しぶりにこんなに穏やかな気持ちになれた気がする。バレンタインという言葉に自分は相当追い詰められていたようだと加那太はようやく知った。
***
千尋がモテるということを知ったのは、小学二年生の時だ。加那太と一緒に帰ろうとしていた所に女の子たちが集まってきて、千尋を取り囲んだのだ。それどころか上級生まで集まって来た。お陰でちょっとした騒ぎになった。千尋も困り果てていたのをよく覚えている。見かねた教師がやってきて子供たちはあっという間に千尋にチョコレートを渡していったのだ。
その次の年から千尋はチョコをもらった本人に返すようになっていった。加那太はずっとそれを見ていた。それからしばらくして、自身も千尋が好きだったこともあって、思い切って手作りチョコレートを千尋に渡した。千尋は「すごく嬉しい」と喜んでくれたのを今でも覚えている。
てっきり、要らないと返されると覚悟していたので、加那太も嬉しかった。
それから加那太は毎年千尋にチョコレートを贈るようになった。だから今年だって気にせず贈ればいいだけなのだ。
だが、ふと心配になった。
それが自分で本当にいいのだろうか、と。
加那太はスマートフォンの画面を見て息を呑んだ。千尋は隣で眠っている。千晶に先程の相談をチャットでしているのだ。先程文章でまとめてみたもののかなりグダグダした内容になってしまった。だが、千晶は最後まで読んでくれたようだ。優しい友人である。
「かなさんのパートナーは間違いなく千尋さんです。十分吊り合ってます。バレンタインは、絶対にチョコを作って渡しましょう」
千晶のはっきりした物言いに、加那太は救われたような思いがした。千尋はもちろん今でもモテる。異性は当然、同性からもだ。顔立ちが整っているからというのはもちろん、性格も優しい彼には非の打ち所がない。
「かなさんからデートに誘うのはどうですか?」
千晶の提案に加那太はびっくりしてしまった。今までも遊びに行こうと誘ってくれたのはいつも千尋からだった。加那太なりに頑張ってデートプランを決めてみると千晶に伝えると、いくつかお洒落なレストランを紹介してくれた。全てビュッフェ形式だがカジュアルな服装でもいいものだ。これならそこまで畏まらずに済む。
加那太は千晶に礼を言った。
「かなさん、2/13の夜は空けておいてくださいね」
千晶が一緒にチョコレートを作ってくれるらしい。真司も協力してくれて、千尋と飲みに行けるか明日聞いてみると言ってくれていた。
そこまでしてもらっていいのかな、と一瞬不安に思ったが、頭を振って紛らわせる。千晶と真司におやすみとチャットで伝え、加那太はスマートフォンを置いた。
「加那」
ぬ、と急に千尋の手が伸びてきて、加那太は驚いた。
「千尋?起こしちゃった?」
「お前に触りたかった」
そう言って千尋は加那太の耳たぶや頬を指でつんつんつついている。
「やっぱり加那は柔らかいな。好きだよ」
ドキッとしてしまったが、千尋は多分寝ぼけてるのだと加那太は思い、笑った。
「僕だって千尋が好きなんだからね?絶対に負けないよーだ」
「ふふ」
千尋が笑っている。なんだか久しぶりにこんなに穏やかな気持ちになれた気がする。バレンタインという言葉に自分は相当追い詰められていたようだと加那太はようやく知った。
***
千尋がモテるということを知ったのは、小学二年生の時だ。加那太と一緒に帰ろうとしていた所に女の子たちが集まってきて、千尋を取り囲んだのだ。それどころか上級生まで集まって来た。お陰でちょっとした騒ぎになった。千尋も困り果てていたのをよく覚えている。見かねた教師がやってきて子供たちはあっという間に千尋にチョコレートを渡していったのだ。
その次の年から千尋はチョコをもらった本人に返すようになっていった。加那太はずっとそれを見ていた。それからしばらくして、自身も千尋が好きだったこともあって、思い切って手作りチョコレートを千尋に渡した。千尋は「すごく嬉しい」と喜んでくれたのを今でも覚えている。
てっきり、要らないと返されると覚悟していたので、加那太も嬉しかった。
それから加那太は毎年千尋にチョコレートを贈るようになった。だから今年だって気にせず贈ればいいだけなのだ。
だが、ふと心配になった。
それが自分で本当にいいのだろうか、と。
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