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「どうしようかな」
テレビを見ながら加那太は呟いた。
「どうしたんですか?」
千晶が鍋つかみでぐつぐついっている鍋を持ってやってくる。今日はおでんパーティーをイツメンでする予定だ。もうすぐ真司と千尋がアルコールや惣菜など、パーティーに必要だと思われるものを買って帰ってくるだろう。
金曜日の夜はこうやって四人で集まって遊ぶことが多い。加那太は千晶の大きな瞳を見つめた。
「千尋には言わないで欲しいんだけど」
「待ってください。それ、結構デリケートな話ですよね?千尋さんとこれから会うのに…」
確かに千晶の言う通りだ。この話はかなりデリケートな部類に分けられるだろう。
「かなさんが困っているのは理解しています。文章にまとめて後で教えてもらいませんか?相談されるならちゃんと応えたいので」
千晶の優しさに加那太は思わずウルっときた。
「わ、泣かないでください!そんなに辛い話なんですか?」
「大丈夫。多分、千尋の方が辛いから」
「お二人は幼馴染ですもんね。ずっと一緒にいる分、色々あるんですね。はい」
「ありがとう、あきくん」
手渡されたティッシュで加那太は涙を拭き取り鼻をかんだ。毎年この時期になると自分の精神がどうも落ち着かない。
そう、全てバレンタインというイベントのせいだ。
玄関で音がした。真司と千尋が買い物を終えて帰ってきたのだろう。
「お帰りなさい。ありがとうございます。お二人共」
千晶は玄関でテキパキと荷物を受け取り、処理していく。加那太もビールの入った袋を千尋から受け取った。千尋がじっと加那太を見つめる。
「どうした?加那。お前、泣いたのか?」
ぎくっとする加那太たちである。
「う、うん。ちょっとテレビでいいニュースが流れてきて涙腺崩壊しちゃったよ。本当、もう年だよねー」
「いいニュースでしたよね」
千晶もそう加勢してくれたので、千尋は特に疑問も持たずにそうかと頷いた。加那太は内心ほっとする。
「おでん美味そうじゃないか」
「はい、味がしみるように今日の夕方から仕込んだんですよ」
「いいな、楽しみだ」
「千晶、このおかずは温めるのか?」
「はい。真司さんも座っていてください。あとは俺がやりますから」
「ありがとう」
このメンバーで集まった時の定位置に座り、いただきますと乾杯をしておでんパーティーは始まった。
「わ、たまご美味しい」
「良かったです。一人2つずつありますから」
加那太が次はなんの具を取ろうかと、隣の千尋を見上げた。千尋は菜箸ではんぺんを取っている。
「なにか取ってやろうか?」
「うん」
千尋は優しい。出会った時からずっと。
だからこそ彼は周りから好かれる。自分にはない部分だと加那太は思う。そんな彼を自分は一番大好きでいるつもりだ。でも、時折分からなくなる。
彼の隣りにいるのが本当に自分でいいのかと。
「加那、酔ったのか?」
「う、うん。そうみたい。ビールはこれでおしまいにする」
「その方がいいな」
千尋が微笑んでくれる。優しい彼氏だ、なんの不満があるのか。いや、不満があるのは自分自身にだ。彼に吊り合えない自分が全て悪い。
どうして千尋は自分なんかが好きなのだろう。
どうすれば自分は胸を張って千尋の隣にいられるのだろう。
食べている間、加那太があまりにもぼうっとしていたので、千晶も真司もものすごく心配してくれた。その結果、早めにパーティーはお開きとなった。
「大丈夫ですか?」
「ごめんね。僕のせいで」
しょんぼりしている加那太の背中を千晶がさすってくれた。
「まとめられたら俺に全部話してくださいね?」
なかなかこう言ってくれる友達は持てないことを加那太はよく知っている。
「うん、ありがとう」
千晶は優しく笑ってくれた。
テレビを見ながら加那太は呟いた。
「どうしたんですか?」
千晶が鍋つかみでぐつぐついっている鍋を持ってやってくる。今日はおでんパーティーをイツメンでする予定だ。もうすぐ真司と千尋がアルコールや惣菜など、パーティーに必要だと思われるものを買って帰ってくるだろう。
金曜日の夜はこうやって四人で集まって遊ぶことが多い。加那太は千晶の大きな瞳を見つめた。
「千尋には言わないで欲しいんだけど」
「待ってください。それ、結構デリケートな話ですよね?千尋さんとこれから会うのに…」
確かに千晶の言う通りだ。この話はかなりデリケートな部類に分けられるだろう。
「かなさんが困っているのは理解しています。文章にまとめて後で教えてもらいませんか?相談されるならちゃんと応えたいので」
千晶の優しさに加那太は思わずウルっときた。
「わ、泣かないでください!そんなに辛い話なんですか?」
「大丈夫。多分、千尋の方が辛いから」
「お二人は幼馴染ですもんね。ずっと一緒にいる分、色々あるんですね。はい」
「ありがとう、あきくん」
手渡されたティッシュで加那太は涙を拭き取り鼻をかんだ。毎年この時期になると自分の精神がどうも落ち着かない。
そう、全てバレンタインというイベントのせいだ。
玄関で音がした。真司と千尋が買い物を終えて帰ってきたのだろう。
「お帰りなさい。ありがとうございます。お二人共」
千晶は玄関でテキパキと荷物を受け取り、処理していく。加那太もビールの入った袋を千尋から受け取った。千尋がじっと加那太を見つめる。
「どうした?加那。お前、泣いたのか?」
ぎくっとする加那太たちである。
「う、うん。ちょっとテレビでいいニュースが流れてきて涙腺崩壊しちゃったよ。本当、もう年だよねー」
「いいニュースでしたよね」
千晶もそう加勢してくれたので、千尋は特に疑問も持たずにそうかと頷いた。加那太は内心ほっとする。
「おでん美味そうじゃないか」
「はい、味がしみるように今日の夕方から仕込んだんですよ」
「いいな、楽しみだ」
「千晶、このおかずは温めるのか?」
「はい。真司さんも座っていてください。あとは俺がやりますから」
「ありがとう」
このメンバーで集まった時の定位置に座り、いただきますと乾杯をしておでんパーティーは始まった。
「わ、たまご美味しい」
「良かったです。一人2つずつありますから」
加那太が次はなんの具を取ろうかと、隣の千尋を見上げた。千尋は菜箸ではんぺんを取っている。
「なにか取ってやろうか?」
「うん」
千尋は優しい。出会った時からずっと。
だからこそ彼は周りから好かれる。自分にはない部分だと加那太は思う。そんな彼を自分は一番大好きでいるつもりだ。でも、時折分からなくなる。
彼の隣りにいるのが本当に自分でいいのかと。
「加那、酔ったのか?」
「う、うん。そうみたい。ビールはこれでおしまいにする」
「その方がいいな」
千尋が微笑んでくれる。優しい彼氏だ、なんの不満があるのか。いや、不満があるのは自分自身にだ。彼に吊り合えない自分が全て悪い。
どうして千尋は自分なんかが好きなのだろう。
どうすれば自分は胸を張って千尋の隣にいられるのだろう。
食べている間、加那太があまりにもぼうっとしていたので、千晶も真司もものすごく心配してくれた。その結果、早めにパーティーはお開きとなった。
「大丈夫ですか?」
「ごめんね。僕のせいで」
しょんぼりしている加那太の背中を千晶がさすってくれた。
「まとめられたら俺に全部話してくださいね?」
なかなかこう言ってくれる友達は持てないことを加那太はよく知っている。
「うん、ありがとう」
千晶は優しく笑ってくれた。
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