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次の日、ソータたちは中央都市のターミナルから飛空艇に乗り込んだ。南の国カリアシュヤはここから海を越えた更にその先にある。どんなところだろうかとわくわくしない気持ちがないこともない。飛空艇はいつも通り、パペの運転で静かに出発した。

「ソータ」

後ろからぐいと制服をキメルに口で引かれてソータは振り返った。

「ソータナレア様にはいつもの通り、お着替えがありますので」

パペがすかさず言う。どうやら飛空艇に自動運転機能が付いたらしい。

「承知なのです」

ソータは自分の部屋だと割り振られていた部屋に向かい、そこに畳まれておいてあった服を広げて見た。真っ白なノースリーブのワンピースに白いヒールのついたサンダルである。ソータはそれに着替えた。シヴァは自分にこういう可愛らしい服を着せたがる。ノースリーブなのは南国だからだろうか。日焼けをしないように日焼け止めの魔法をかけた。これで肌が赤くなるのは避けられる。ソータの肌は日差しに弱かった。

「ソータ、めちゃくちゃ可愛い」

「はい、とても」

そう言ったのはもちろんロニとパペである。今日のメンバーはソータ、キメル、パぺ、ロニの四人である。シヴァから言われていたのだ。カリアシュヤには未だに海賊がいるからと。海賊同士による覇権争いがそこかしこで頻繁に行われているらしい。そのため、選ばれたのは手の空いている戦闘が可能なメンバーだということだ。

「海賊かあ、カリアシュヤ、すごい所だなあ」

ロニはすっかり感心してしまっている。カリアシュヤは周りを海に囲まれた島国だ。豊かな水に恵まれ海産物や酒、米など美味いものが詰まっているらしい。

「お米が美味しいって素晴らしいのです」

ソータもじゅるりとよだれを垂らした。いけないいけないと自分をすぐ諫める。最近、食欲に勝てない自分がいる。幼い頃、聖域で飢えていたのが嘘みたいだ。

「カリアシュヤ、楽しみだね」

「うん」

ロニとパぺとソータは日が経つにつれて、ますます仲良くなってきている。年が近いせいもあるだろう。ソータがにっこり笑うと、ロニとパペも頷いてくれた。飛空艇は速い。ぐんぐん進む。キメルにすれば、俺の方が速いとのことだが、キメルは特別だからと、皆思っている。

「もう間もなくカリアシュヤですよ」

パペが操縦桿を握りながら言う。運転は自動で出来ても、着地はパペの指示が必要なようだ。飛空艇という乗り物はそれだけ繊細なものらしい。
スゥゥと滑るように飛空艇がカリアシュヤのターミナルに着地する。カリアシュヤはかなり栄えた国である。

「では、行きましょうか」

「うん、楽しみ!」

キメルが鼻を鳴らす。一行はカリアシュヤのターミナルに足を踏み入れた。カリアシュヤのターミナルも中央都市のターミナルに負けずに広い。ロニがキョロキョロしている。ソータにもその気持ちはよく分かる。ソータはそっとロニの手を握った。

「ロニ、迷子になっちゃうよ」

「あ、そうか。ごめん」

「出口はあちらのようです」

パぺが先導してくれるのもいつものことだ。そんな時、ソータは振り返った。誰かに名前を呼ばれた気がしたのだ。

「ソーちゃん!やっぱりソーちゃんだった!」

「レント様!!」

突然の再会にソータは驚いた。

「ソータ、久しぶりだな」

「エンジ様、シオウ様も!」

「ソータさんがいるってレントさんが急に走り出したから驚いたよ」

シオウが笑う。

「ソーちゃん、その格好…すっげえ可愛いね」

「うん、可愛らしい。ソータは白が似合うな」

「きっと、ウエディングドレスも似合うんだろうね」

シオウの言葉にエンジとレントが黙る。

「あの、ソータナレア様?こちらの方々は確かアオナのリーダーじゃ?」

パペが困惑しながら尋ねてきた。うんうんとロニも頷いている。

「そうなの!皆さん、素敵な人!でも何故ここにいるのですか?」

「なんか急に結婚式に呼ばれたんだ…」

「結婚式?」

ソータが首を傾げると、シオウが口を開く。

「カリアシュヤの皇子の結婚式だよ。ご結婚される相手の方がソータさんによく似ているんだ」

「わ、私に?!」

うん、とシオウが朗らかに笑う。

「確かリーナさんといったかな。ソータさんってもしかして、元々王族なんじゃ?」

ソータにはそんな記憶はない。気が付いたら聖域で修行をしていた。

「ソータが王族だったらすげーな!」

「その可能性は十分に有り得るよ。ソータさんは魔力が潤沢だったから聖女に選ばれたのかもしれないしね」

「才能あるのもすげー!」

ロニが俺にも何かあればなーと唸り始めた。得意な機械弄りのことはすっかり忘れている。

「とりあえず、もうすぐ昼時だし、飯でも食いながらゆっくり話さないか?」

「私もアオナの話を聞きたいと思っていました」

「俺も行くぞ」

パペの言葉にキメルが被せるように言う。キメルは普段より小さくなった。角がなくなり、どう見ても普通の馬だ。

「ふふん。俺にだってこれくらいは出来るんだからな」

「キメルすごいー!」

ロニに褒められてキメルは得意そうである。

「なんか、変わらないな」

エンジが優しく呟いたのがソータには印象的だった。
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