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「隕石到達まで残り4時間を切りました」
パペが告げる。
ロニはからくりを順調に制覇していっている。だがそれでも時間に間に合うかは危うい。
「あのくそじじい、もしここで俺が死んだらこの角でどつき回してやるからな」
「キメルは死んでも元気なんだね」
「リヒ、俺たち一応、絶体絶命っていう状態なんだが」
キメル、リヒ、フレンが三者三様の表現をしている間に、ソータはローブに着替えていた。聖域に入れば自分は聖女だ。ソータナレアという人間の前に聖女なのである。
「よし、あともう一つ!」
カチリと音がして、からくりが解けた音がする。
キメルはロニの襟首を口で掴み自分の背に乗せた。
「ソータ!乗れ!!」
「うん!フレン兄様たち、私たちが必ず止めてみせます」
「ソータ、気を付けるんだよ」
「はい。行って参ります!」
キメルが走り出した。あっという間に海のそばを走り抜け、今は線路沿いを走っている。キメルの姿は周りの者には見えない。もちろんソータたちもだ。ロニは変わらずキメルの背の上で、星時計を弄っている。カチカチとずっと金属音がしていた。
「この最後のからくりが意地悪なんだよな」
「何か私にもお手伝い出来ない?」
ロニがソータを見て、頷いた。
「星時計を広げて持っていてくれない?」
「うん」
星時計は最初、ただの小さな丸い時計だったが今は星の形に近付いている。おそらくこれが名前の由来だろう。
「やっぱくっそかっけーな、このボディ」
ロニが呟きながら工具を挿し入れる。その瞬間カチリと音がした。
「あ…開いた!」
ソータの手に落ちてきた物、それは銀色の鍵だった。外気に触れていなかったせいか、錆びついてもいない。ピカピカ光るそれをソータは見つめた。
「これが兵器の鍵?」
「ソータ、ちょっと見せて」
ソータが、ロニに鍵を手渡すと、今度は虫眼鏡を取り出し見始めた。
「うーん、兵器の起動用なのかなあ?それとも兵器がしまわれている場所の鍵か…」
「兵器がしまわれている場所…」
ソータはふと聖域のことを思い出していた。
「キメル、もしかして!」
「それ、あの裏の物置の鍵なのか?いくらなんでも適当過ぎるだろう」
「も、物置?」
ロニも嫌な予感を覚えていた。兵器をしまっておく場所にしては物置は少し気安すぎる。いつの間にか周りが山で囲まれているのに気が付いた。
「アオナだ」
キメルは翼を出して滑空している。いつの間にか空を駆けていたらしい。
「ここが、アオナ…。綺麗な所なんだね」
「そう、アオナの森で森林浴するとすごく気持ちよくなるの!」
「わぁ。いいなぁ!」
「もうすぐ聖域に入る。行くぞ」
キメルの言葉にソータとロニがしん、となった。
キメルは垂直に落下していく。ガササとそのまま木の茂みに突っ込んだ。木たちがキメルたちを避けてくれる。
「礼拝堂…久しぶり」
キメルは走って礼拝堂の裏にある物置前に二人を連れて来てくれた。ロニが早速鍵を差し込むと、カチリと開く。開けるとロボットが眠っていた。
「グガー、グガー、ファ?」
ソータたちが固まっていると、ロボットが目を開ける。四角い頭に四角いボディ、長方形の手足を持つロボットだった。
「ナンダベ?ヘーキカ?ヘーキヒツヨーダベ カ?」
「な、訛ってる…」
ロニが呟くとロボットが煙を出しながら怒り始めた。短い腕をぶんぶん振り回している。
「オ、イナカヲバカニシチャイケネ!オラダヅ、ヒャグショウハナァ!!」
「あ、あの、ロボット様?」
ソータを見た瞬間、ロボットは赤くなりソータに擦り寄ってきた。
「コラコラ、カワイイオナゴダンベ。オラ、56ゴウッテイウダ」
「あ、聖女のソータナレアと申します」
「もういい、さっさと兵器を出しやがれ」
「ナンダベ!!ヒャグショウヲバカニシチャイケネエ!!」
「ソータ、あとは頼む」
キメルはもうソータに任せることにした。自分とロニがこのロボットの相手をすると、何故か百姓を馬鹿にされていると判断されるらしい。
「あの56号様、私たちに兵器を使わせてください。隕石をその、兵器で撃ち落とすので」
「ンダ。…インセキ??!」
ロボットがぴょんと飛び上がる。どうやら、ようやくことの重大さを理解したらしい。
「コウシチャイラレネエ、ヘーキサ、カスダ」
「ありがとうございます。これはどうやって使えば?」
兵器は大砲のような形をしている。56号と冠されたロボットはそれを軽々持ち上げた。
「ソータサン、コッチダ」
「あ、はい!」
ロボットはぴょい、と跳んだ。礼拝堂の屋根の上である。ソータとロニもキメルにのり屋根の上に向かう。ロボットは大砲を設置した。
「インセキサ、ウチオトスベ」
ギュウウウウとすごく大きな音が大砲からし始める。エネルギーを蓄えているのだろう。ロボットは隕石を探しているのか目から光を出している。
シュウウウと大砲からしていた音が収まり、キュウウウという起動音がしている。
「ム、アチラカ」
56号はガコンと大砲を上空に向けた。おそらく彼?でなくては使いこなせない代物なのだ。
「ソータナレア様!隕石が大気圏到達まで10分を切っています!!急いでください!」
パペが思念伝播で話しかけてくる。
「今、56号様が兵器で隕石を狙ってる!大丈夫、必ず成功するから」
「オマエラ、ミミヲフサゲー!」
56号の言う通り、皆が耳を塞いだ。キュウンという鋭い音。兵器を撃った反動で56号が倒れ込む。おそらく人間ではこの反動に耐えられないのだろう。だから彼?がいたのだ。
しばらくして、ドンという腹の底に響く音がした。向こう側で煙が渦巻いている。
「ンダ、ウマクイッタベ」
ソータたちはあまりのことにポカン、としていた。
「隕石、消失しました」
パペの声がする。ソータはホッとしてその場に崩れ落ちた。
パペが告げる。
ロニはからくりを順調に制覇していっている。だがそれでも時間に間に合うかは危うい。
「あのくそじじい、もしここで俺が死んだらこの角でどつき回してやるからな」
「キメルは死んでも元気なんだね」
「リヒ、俺たち一応、絶体絶命っていう状態なんだが」
キメル、リヒ、フレンが三者三様の表現をしている間に、ソータはローブに着替えていた。聖域に入れば自分は聖女だ。ソータナレアという人間の前に聖女なのである。
「よし、あともう一つ!」
カチリと音がして、からくりが解けた音がする。
キメルはロニの襟首を口で掴み自分の背に乗せた。
「ソータ!乗れ!!」
「うん!フレン兄様たち、私たちが必ず止めてみせます」
「ソータ、気を付けるんだよ」
「はい。行って参ります!」
キメルが走り出した。あっという間に海のそばを走り抜け、今は線路沿いを走っている。キメルの姿は周りの者には見えない。もちろんソータたちもだ。ロニは変わらずキメルの背の上で、星時計を弄っている。カチカチとずっと金属音がしていた。
「この最後のからくりが意地悪なんだよな」
「何か私にもお手伝い出来ない?」
ロニがソータを見て、頷いた。
「星時計を広げて持っていてくれない?」
「うん」
星時計は最初、ただの小さな丸い時計だったが今は星の形に近付いている。おそらくこれが名前の由来だろう。
「やっぱくっそかっけーな、このボディ」
ロニが呟きながら工具を挿し入れる。その瞬間カチリと音がした。
「あ…開いた!」
ソータの手に落ちてきた物、それは銀色の鍵だった。外気に触れていなかったせいか、錆びついてもいない。ピカピカ光るそれをソータは見つめた。
「これが兵器の鍵?」
「ソータ、ちょっと見せて」
ソータが、ロニに鍵を手渡すと、今度は虫眼鏡を取り出し見始めた。
「うーん、兵器の起動用なのかなあ?それとも兵器がしまわれている場所の鍵か…」
「兵器がしまわれている場所…」
ソータはふと聖域のことを思い出していた。
「キメル、もしかして!」
「それ、あの裏の物置の鍵なのか?いくらなんでも適当過ぎるだろう」
「も、物置?」
ロニも嫌な予感を覚えていた。兵器をしまっておく場所にしては物置は少し気安すぎる。いつの間にか周りが山で囲まれているのに気が付いた。
「アオナだ」
キメルは翼を出して滑空している。いつの間にか空を駆けていたらしい。
「ここが、アオナ…。綺麗な所なんだね」
「そう、アオナの森で森林浴するとすごく気持ちよくなるの!」
「わぁ。いいなぁ!」
「もうすぐ聖域に入る。行くぞ」
キメルの言葉にソータとロニがしん、となった。
キメルは垂直に落下していく。ガササとそのまま木の茂みに突っ込んだ。木たちがキメルたちを避けてくれる。
「礼拝堂…久しぶり」
キメルは走って礼拝堂の裏にある物置前に二人を連れて来てくれた。ロニが早速鍵を差し込むと、カチリと開く。開けるとロボットが眠っていた。
「グガー、グガー、ファ?」
ソータたちが固まっていると、ロボットが目を開ける。四角い頭に四角いボディ、長方形の手足を持つロボットだった。
「ナンダベ?ヘーキカ?ヘーキヒツヨーダベ カ?」
「な、訛ってる…」
ロニが呟くとロボットが煙を出しながら怒り始めた。短い腕をぶんぶん振り回している。
「オ、イナカヲバカニシチャイケネ!オラダヅ、ヒャグショウハナァ!!」
「あ、あの、ロボット様?」
ソータを見た瞬間、ロボットは赤くなりソータに擦り寄ってきた。
「コラコラ、カワイイオナゴダンベ。オラ、56ゴウッテイウダ」
「あ、聖女のソータナレアと申します」
「もういい、さっさと兵器を出しやがれ」
「ナンダベ!!ヒャグショウヲバカニシチャイケネエ!!」
「ソータ、あとは頼む」
キメルはもうソータに任せることにした。自分とロニがこのロボットの相手をすると、何故か百姓を馬鹿にされていると判断されるらしい。
「あの56号様、私たちに兵器を使わせてください。隕石をその、兵器で撃ち落とすので」
「ンダ。…インセキ??!」
ロボットがぴょんと飛び上がる。どうやら、ようやくことの重大さを理解したらしい。
「コウシチャイラレネエ、ヘーキサ、カスダ」
「ありがとうございます。これはどうやって使えば?」
兵器は大砲のような形をしている。56号と冠されたロボットはそれを軽々持ち上げた。
「ソータサン、コッチダ」
「あ、はい!」
ロボットはぴょい、と跳んだ。礼拝堂の屋根の上である。ソータとロニもキメルにのり屋根の上に向かう。ロボットは大砲を設置した。
「インセキサ、ウチオトスベ」
ギュウウウウとすごく大きな音が大砲からし始める。エネルギーを蓄えているのだろう。ロボットは隕石を探しているのか目から光を出している。
シュウウウと大砲からしていた音が収まり、キュウウウという起動音がしている。
「ム、アチラカ」
56号はガコンと大砲を上空に向けた。おそらく彼?でなくては使いこなせない代物なのだ。
「ソータナレア様!隕石が大気圏到達まで10分を切っています!!急いでください!」
パペが思念伝播で話しかけてくる。
「今、56号様が兵器で隕石を狙ってる!大丈夫、必ず成功するから」
「オマエラ、ミミヲフサゲー!」
56号の言う通り、皆が耳を塞いだ。キュウンという鋭い音。兵器を撃った反動で56号が倒れ込む。おそらく人間ではこの反動に耐えられないのだろう。だから彼?がいたのだ。
しばらくして、ドンという腹の底に響く音がした。向こう側で煙が渦巻いている。
「ンダ、ウマクイッタベ」
ソータたちはあまりのことにポカン、としていた。
「隕石、消失しました」
パペの声がする。ソータはホッとしてその場に崩れ落ちた。
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