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ソータとパペはロニからタイタンという組織について、なるべく詳しく聞き出した。タイタンはスリニアに元々あった男衆の集まりだったらしい。そこに所属することはスリニアの男性にとっては一種のステイタスだった。
だが、タイタンに所属するためにはある一定のスキルがなければ入れない。それは機械いじりだ。完成された時計を分解し組み直すことが出来なければならない。しかも10分以内にである。なかなか難しい条件だが、ロニは幼い頃からそれが出来た。スリニアでは電力で動く家電が当たり前である。何故ならスリニアの人々は魔力を持たない人が主だからだ。
「ソータもパペも魔力を持っているんだね。俺たちスリニア人はそんな人、ほとんどいないからなぁ」
「ではごく稀に魔力を持つ方が?」
パペが尋ねるとロニが決まり悪そうに笑う。
「うん、俺の妹がそうなんだ。でも皆に隠して暮らしてる。俺たちを差別する人と一緒だからって」
「そんな…」
ソータは悲しくなった。
「ソータたちは俺をおかしいって思わないの?俺、全然魔力ないんだよ?」
ソータはロニの両手を握った。
「私たちは同じ人間です。魔力の有無なんて関係ありません!」
「ソータ、ありがとう」
「ロニ様、これを」
パペが取り出したのは星時計だ。
「え?なにこの時計!かっけー造り!」
「星時計です。持っていて頂けませんか?」
「え?それって星読み様が言ってたやつじゃ」
「灯台下暗しというでしょう?守りきって見せてください」
パペが言う。
「な、なるほど!分かった、頑張るよ」
ロニは左側の胸ポケットに星時計をしまった。ロニによればタイタンは今やスリニアの強大な組織として動いているらしい。そして、星時計を探していることもだ。
「飛行船で移動してるなら俺が行って潰してくるが…」
キメルは相変わらず物騒なことを平気で言う。
「それでは駄目だよ、キメル。スイレイ様を捕らえなくちゃ」
「ソータナレア様の仰る通りです。いくら下の人間を殺しても意味がない。トップを潰さなければ」
「うーん」
キメルが唸る。
「どうしたの?キメル」
ソータの問いにキメルは言った。
「俺もソータと同じ妙な力にやられたんだ。呪術ってやつか?しかもスイレイを護衛していたやつにだぞ。ロニ、なんだあれ?」
「なんだあれって言われても…星読み様から指示は受けるけど直接、話はしたことないし」
キメルがため息を吐いている。
「お前ら利用され放題じゃないか。スイレイの作る世界がまともなわけねーだろ」
キメルの言葉にロニがしゅんとする。
「タイタンもだんだんおかしくなってきてるんだよ」
彼がそうポツリと漏らす。それを聞き逃すパペではない。
「おかしくなった…とは?」
「タイタンにいる周りの大人たちが言っていたんだ。神を封印したとかって。しかも俺たちの信仰してる神様が俺たちを騙していたとかって。そんなの嘘に決まってる。ラシータ様に限ってさ、そんなの有り得ないよ!」
「…」
パペとソータは顔を見合わせた。
「えーと、一応聞いておきたいのですが、ラシータ様はどこに封印されたんです?」
「え?確か大神殿だよ」
「大神殿か…」
キメルが力なく呟く。大神殿というのは、中央都市から千キロ近く離れた先にある大規模な神殿だ。この世界にいるとされるあらゆる神々を祀っている聖地でもある。一日ではとても見て回れないという広さだ。
「ラシータ様を浄化するために大神殿に封印したって言ってたよ。何のことだか俺にはよく分からなかったけど」
「おいおいおい…大神殿、大丈夫か?」
キメルの不安はソータにも分かった。神殿が穢れに侵されている場合、封印されているラシータが危うい。
「他の神々もそこに封印されたりしたら…」
「え、もしかして、ラシータ様が本当に封印されてたりする?」
ロニもようやく状況を飲み込んできたようだ。ソータはスイレイという男の怖さを話した。
「…キメルを捕まえた時も変だなって思ったけどやっぱり悪いやつだったんだ。皆を騙してるのはラシータ様じゃなくて、あいつじゃないか!」
ぐぐぐ、とロニが拳を握る。
「ようやく分かったか?」
キメルにドッと前足で背中を軽くどつかれて、ロニは頷いた。
「さて、どうするか。なるべく早く、ラシータも助けないとな」
「僕たちがいるのを忘れないでもらいたい」
現れたのはハ・デス、鬼、リヒ、フレンだった。
「ソータ!なんで僕たちに声を掛けてくれないんだ!」
ハ・デスがプンスカしながら言う。ソータはそんなハ・デスを可愛らしいなと思いながら謝った。
「ごめんなさい、ハ・デス様。皆様も。どうか私たちに力を貸して頂けませんか?」
「もちろん」
「そこの可愛い男の子は誰かな?ソータ」
にこやかに聞いてきたのは鬼である。
「はい、ロニ様といいます。タイタンの元メンバーです」
「ふーん」
じいっと品定めされるように鬼に見つめられて、ロニは生きた心地がしなかった。
「ソータに裏切りを謀ろうとしたら絶対に許さないから覚悟してね」
「そ、そんなことしません!絶対に!!」
「ヤシャ様、ロニ様に失礼ですよ!」
「ははは。僕はこう見えて疑り深いんだ」
ロニは完全にビビっている。
【ソータの周りの男、皆強そうで怖い】と。
だが、タイタンに所属するためにはある一定のスキルがなければ入れない。それは機械いじりだ。完成された時計を分解し組み直すことが出来なければならない。しかも10分以内にである。なかなか難しい条件だが、ロニは幼い頃からそれが出来た。スリニアでは電力で動く家電が当たり前である。何故ならスリニアの人々は魔力を持たない人が主だからだ。
「ソータもパペも魔力を持っているんだね。俺たちスリニア人はそんな人、ほとんどいないからなぁ」
「ではごく稀に魔力を持つ方が?」
パペが尋ねるとロニが決まり悪そうに笑う。
「うん、俺の妹がそうなんだ。でも皆に隠して暮らしてる。俺たちを差別する人と一緒だからって」
「そんな…」
ソータは悲しくなった。
「ソータたちは俺をおかしいって思わないの?俺、全然魔力ないんだよ?」
ソータはロニの両手を握った。
「私たちは同じ人間です。魔力の有無なんて関係ありません!」
「ソータ、ありがとう」
「ロニ様、これを」
パペが取り出したのは星時計だ。
「え?なにこの時計!かっけー造り!」
「星時計です。持っていて頂けませんか?」
「え?それって星読み様が言ってたやつじゃ」
「灯台下暗しというでしょう?守りきって見せてください」
パペが言う。
「な、なるほど!分かった、頑張るよ」
ロニは左側の胸ポケットに星時計をしまった。ロニによればタイタンは今やスリニアの強大な組織として動いているらしい。そして、星時計を探していることもだ。
「飛行船で移動してるなら俺が行って潰してくるが…」
キメルは相変わらず物騒なことを平気で言う。
「それでは駄目だよ、キメル。スイレイ様を捕らえなくちゃ」
「ソータナレア様の仰る通りです。いくら下の人間を殺しても意味がない。トップを潰さなければ」
「うーん」
キメルが唸る。
「どうしたの?キメル」
ソータの問いにキメルは言った。
「俺もソータと同じ妙な力にやられたんだ。呪術ってやつか?しかもスイレイを護衛していたやつにだぞ。ロニ、なんだあれ?」
「なんだあれって言われても…星読み様から指示は受けるけど直接、話はしたことないし」
キメルがため息を吐いている。
「お前ら利用され放題じゃないか。スイレイの作る世界がまともなわけねーだろ」
キメルの言葉にロニがしゅんとする。
「タイタンもだんだんおかしくなってきてるんだよ」
彼がそうポツリと漏らす。それを聞き逃すパペではない。
「おかしくなった…とは?」
「タイタンにいる周りの大人たちが言っていたんだ。神を封印したとかって。しかも俺たちの信仰してる神様が俺たちを騙していたとかって。そんなの嘘に決まってる。ラシータ様に限ってさ、そんなの有り得ないよ!」
「…」
パペとソータは顔を見合わせた。
「えーと、一応聞いておきたいのですが、ラシータ様はどこに封印されたんです?」
「え?確か大神殿だよ」
「大神殿か…」
キメルが力なく呟く。大神殿というのは、中央都市から千キロ近く離れた先にある大規模な神殿だ。この世界にいるとされるあらゆる神々を祀っている聖地でもある。一日ではとても見て回れないという広さだ。
「ラシータ様を浄化するために大神殿に封印したって言ってたよ。何のことだか俺にはよく分からなかったけど」
「おいおいおい…大神殿、大丈夫か?」
キメルの不安はソータにも分かった。神殿が穢れに侵されている場合、封印されているラシータが危うい。
「他の神々もそこに封印されたりしたら…」
「え、もしかして、ラシータ様が本当に封印されてたりする?」
ロニもようやく状況を飲み込んできたようだ。ソータはスイレイという男の怖さを話した。
「…キメルを捕まえた時も変だなって思ったけどやっぱり悪いやつだったんだ。皆を騙してるのはラシータ様じゃなくて、あいつじゃないか!」
ぐぐぐ、とロニが拳を握る。
「ようやく分かったか?」
キメルにドッと前足で背中を軽くどつかれて、ロニは頷いた。
「さて、どうするか。なるべく早く、ラシータも助けないとな」
「僕たちがいるのを忘れないでもらいたい」
現れたのはハ・デス、鬼、リヒ、フレンだった。
「ソータ!なんで僕たちに声を掛けてくれないんだ!」
ハ・デスがプンスカしながら言う。ソータはそんなハ・デスを可愛らしいなと思いながら謝った。
「ごめんなさい、ハ・デス様。皆様も。どうか私たちに力を貸して頂けませんか?」
「もちろん」
「そこの可愛い男の子は誰かな?ソータ」
にこやかに聞いてきたのは鬼である。
「はい、ロニ様といいます。タイタンの元メンバーです」
「ふーん」
じいっと品定めされるように鬼に見つめられて、ロニは生きた心地がしなかった。
「ソータに裏切りを謀ろうとしたら絶対に許さないから覚悟してね」
「そ、そんなことしません!絶対に!!」
「ヤシャ様、ロニ様に失礼ですよ!」
「ははは。僕はこう見えて疑り深いんだ」
ロニは完全にビビっている。
【ソータの周りの男、皆強そうで怖い】と。
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