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トタン鉱山は活火山である。度々小規模だが、噴火を起こすため、入れないようになっている場所も多いが、特殊な鉱石が採れる。そのため、入山する者も多い。パペはトタン鉱山の麓にある拓けた場所に、飛空艇を停めて皆を降ろすと、文字通りしまった。ここから少し山道を登ると山小屋があるのだ。そこで入山許可を得るのである。トタン鉱山を見て、子どもたちのテンションはマックスになっていた。
「あっつーい!」
「うん、暑い!」
活火山ということから気温は当然高い。ソータは子どもたちに冷感魔法をかけてやる。少しでも楽にしてやりたかった。
「皆さん、気を付けて付いてきてくださいね!キメル」
「ブル…」
キメルには子どもたちの一番後ろを歩いてもらうことにした。ソータは危険な箇所を確認しながら歩き始めた。
「おい!!!」
「あ、おはようございます。ハ・デス様」
ハ・デスが珍しく息を切らしている。
「あぁ、おはよう、じゃなくて!!なんで僕を置いていくんだ!」
「リヒ兄様がお仕事を頼まれたと聞いていたので」
「ふん、そんなものはもう終わった。僕もやるぞ!原石探し!」
「わあ、ありがとうございます!」
ソータが笑うとハ・デスが顔を赤らめる。
「で、その鉱脈とやらはどこにあるんだ?危険な所は僕とパペで行こう」
「助かるのです!」
「…何を勝手な」
パペは迷惑そうに顔を顰める。
「なんだ?僕の足手まといになると心配しているのか?」
「ハ・デス様こそ」
「なにおうー!」
二人がいがみ始めてしまう。
「なら俺もパペたちに付いていこうかな」
サラがそう申し出てくれた。
「昼飯は皆で食べような。山小屋で待ち合わせしよう」
「はい、分かりました。お気を付けて!」
ソータたちも鉱脈まで急いだ。その間何度かモンスターとエンカウントし、原石を落としていった。
「やっと10個目なのです」
「ソータ、そろそろ休憩だ」
キメルに言われ、ソータはハッとなった。モンスターとの連戦に子どもたちが疲弊してきている。
「ごめんなさい、皆さん。疲れましたよね」
ソータは休憩できる場所を探し、子供たちを座らせた。キメルが背負っていてくれた荷物から水筒を取り出し、お茶を人数分注ぐ。今日は温かいお茶ではなく冷たいものを用意していた。サラに薦められたのだ。
「大丈夫ですか?」
「ソータナレア様って本当に強いね!」
お茶を飲みながら子どもたちが口々に言ってくる。ソータは困って笑った。自分の場合、幼い頃からかなり厳しく扱かれたという部分が大きい。前聖女は基本的に優しかったが、魔法を扱うという点では物凄く厳しかった。ソータは魔法の練習が嫌になって、よく聖域の森のなかでめそめそ泣いていた。そこに神々がワラワラと集まってきてソータを慰めてくれたものである。獅子や鬼はそんな時に知り合った。ハ・デスの先代やもちろんキメルもいた。
「ソータナレア様くらい魔法が使えるようになるには、相当練習が必要だよってサラ先生が言っていたよ」
「あたしたちじゃまだまだってことね」
コタロウの言葉にキミカが言う。エンテイやユメも頷いた。
「ソータナレア様みたいにはなれなくても、私たちも頑張らなくちゃね」
「負けてられないよな!」
子どもたちの前向きな姿勢がソータには頼もしく思えた。この子たちならきっと立派な精霊としてシヴァに仕えられる、そんな確信が持てたのだった。
「では、そろそろ移動…」
ソータはぴたり、と動きを止めた。子供たちも何か勘づいたらしい。静かにしている。
「皆さん、静かにしてここにいてくださいね。キメル」
「心得た」
ソータは気配のした方を辿った。様子からして向こうはかなりの手練れである。
「なにか用事ですか?お嬢さん」
扇子を首元に当てられ、ソータは固まった。もしこれが刃物であれば自分は殺されている。
「い。いえ、私はただ原石を集めていただけです」
ソータの返事にも男は扇子を動かさなかった。それどころかますます殺気が強まっている。
「困るのですよね。素人が何も分からず鉱山を巡るなど」
「で、でも集めないと私も困るのです」
「ほう…」
一瞬だった。ソータは男の扇子を杖で受け止めていた。ギギギと鍔迫り合いになる。力勝負でソータは圧倒的に不利だ。
「ふむ…面倒なことになりそうだ。ここで始末しておきますか」
ソータは不味い、と焦った。後ろからはマグマが流れ出してきている。男が扇子を広げ何かを詠唱した。ソータはそれを防ぐ間もなく、まともに食らった。衝撃でソータの体が飛ばされる。ソータは落下していった。
✢✢✢
「タ!!ソータ!!」
ソータは目を開けた。自分の名前を皆が必死に呼んでいる。子供たちは泣いていた。
「あれ…?私」
ソータが起き上がると、皆がホッと息をつくのが分かった。
「ソータ、良かった」
「ソータナレア様、痛む所はありませんか?」
「…あ」
ソータは背中に何かが動く気配を感じた。それはシオウが前にくれた式神である。
「この子が助けてくれたみたいです」
式神はソータの手でへにゃりと萎れると消えていった。
「ソータ、立てるか?」
「はい」
確認したところ、自分の体に異常はないようだ。先程の男は誰だったのだろう。あの妙な力は?
「原石は集まったみたいなのでそろそろ帰りましょうか」
ソータは悔しかった。子どもたちに怖い思いをさせてしまった上に、自分の弱さを思い知らされてしまった。まだまだ自分は上を目指せる。ソータはもっと強くなろうと決意した。
「あっつーい!」
「うん、暑い!」
活火山ということから気温は当然高い。ソータは子どもたちに冷感魔法をかけてやる。少しでも楽にしてやりたかった。
「皆さん、気を付けて付いてきてくださいね!キメル」
「ブル…」
キメルには子どもたちの一番後ろを歩いてもらうことにした。ソータは危険な箇所を確認しながら歩き始めた。
「おい!!!」
「あ、おはようございます。ハ・デス様」
ハ・デスが珍しく息を切らしている。
「あぁ、おはよう、じゃなくて!!なんで僕を置いていくんだ!」
「リヒ兄様がお仕事を頼まれたと聞いていたので」
「ふん、そんなものはもう終わった。僕もやるぞ!原石探し!」
「わあ、ありがとうございます!」
ソータが笑うとハ・デスが顔を赤らめる。
「で、その鉱脈とやらはどこにあるんだ?危険な所は僕とパペで行こう」
「助かるのです!」
「…何を勝手な」
パペは迷惑そうに顔を顰める。
「なんだ?僕の足手まといになると心配しているのか?」
「ハ・デス様こそ」
「なにおうー!」
二人がいがみ始めてしまう。
「なら俺もパペたちに付いていこうかな」
サラがそう申し出てくれた。
「昼飯は皆で食べような。山小屋で待ち合わせしよう」
「はい、分かりました。お気を付けて!」
ソータたちも鉱脈まで急いだ。その間何度かモンスターとエンカウントし、原石を落としていった。
「やっと10個目なのです」
「ソータ、そろそろ休憩だ」
キメルに言われ、ソータはハッとなった。モンスターとの連戦に子どもたちが疲弊してきている。
「ごめんなさい、皆さん。疲れましたよね」
ソータは休憩できる場所を探し、子供たちを座らせた。キメルが背負っていてくれた荷物から水筒を取り出し、お茶を人数分注ぐ。今日は温かいお茶ではなく冷たいものを用意していた。サラに薦められたのだ。
「大丈夫ですか?」
「ソータナレア様って本当に強いね!」
お茶を飲みながら子どもたちが口々に言ってくる。ソータは困って笑った。自分の場合、幼い頃からかなり厳しく扱かれたという部分が大きい。前聖女は基本的に優しかったが、魔法を扱うという点では物凄く厳しかった。ソータは魔法の練習が嫌になって、よく聖域の森のなかでめそめそ泣いていた。そこに神々がワラワラと集まってきてソータを慰めてくれたものである。獅子や鬼はそんな時に知り合った。ハ・デスの先代やもちろんキメルもいた。
「ソータナレア様くらい魔法が使えるようになるには、相当練習が必要だよってサラ先生が言っていたよ」
「あたしたちじゃまだまだってことね」
コタロウの言葉にキミカが言う。エンテイやユメも頷いた。
「ソータナレア様みたいにはなれなくても、私たちも頑張らなくちゃね」
「負けてられないよな!」
子どもたちの前向きな姿勢がソータには頼もしく思えた。この子たちならきっと立派な精霊としてシヴァに仕えられる、そんな確信が持てたのだった。
「では、そろそろ移動…」
ソータはぴたり、と動きを止めた。子供たちも何か勘づいたらしい。静かにしている。
「皆さん、静かにしてここにいてくださいね。キメル」
「心得た」
ソータは気配のした方を辿った。様子からして向こうはかなりの手練れである。
「なにか用事ですか?お嬢さん」
扇子を首元に当てられ、ソータは固まった。もしこれが刃物であれば自分は殺されている。
「い。いえ、私はただ原石を集めていただけです」
ソータの返事にも男は扇子を動かさなかった。それどころかますます殺気が強まっている。
「困るのですよね。素人が何も分からず鉱山を巡るなど」
「で、でも集めないと私も困るのです」
「ほう…」
一瞬だった。ソータは男の扇子を杖で受け止めていた。ギギギと鍔迫り合いになる。力勝負でソータは圧倒的に不利だ。
「ふむ…面倒なことになりそうだ。ここで始末しておきますか」
ソータは不味い、と焦った。後ろからはマグマが流れ出してきている。男が扇子を広げ何かを詠唱した。ソータはそれを防ぐ間もなく、まともに食らった。衝撃でソータの体が飛ばされる。ソータは落下していった。
✢✢✢
「タ!!ソータ!!」
ソータは目を開けた。自分の名前を皆が必死に呼んでいる。子供たちは泣いていた。
「あれ…?私」
ソータが起き上がると、皆がホッと息をつくのが分かった。
「ソータ、良かった」
「ソータナレア様、痛む所はありませんか?」
「…あ」
ソータは背中に何かが動く気配を感じた。それはシオウが前にくれた式神である。
「この子が助けてくれたみたいです」
式神はソータの手でへにゃりと萎れると消えていった。
「ソータ、立てるか?」
「はい」
確認したところ、自分の体に異常はないようだ。先程の男は誰だったのだろう。あの妙な力は?
「原石は集まったみたいなのでそろそろ帰りましょうか」
ソータは悔しかった。子どもたちに怖い思いをさせてしまった上に、自分の弱さを思い知らされてしまった。まだまだ自分は上を目指せる。ソータはもっと強くなろうと決意した。
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