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「わぁ、お菓子どれにする?」

「私は絶対にこれ」

放課になって、ソータは子どもたちみんなと購買に明日のピクニックで食べるおやつを買いに来ている。
おやつの金額は銅貨1枚以内とソータは定めていた。対象は駄菓子なので十分に買える金額である。

「ソータナレア様はどれにするの?」

「駄菓子は初めて見るのです」

ソータは珍しくてじっと棚を見つめた。子どもたちからこれがおすすめ!とそれぞれ言われ、ソータはその中から3つ、カラフルなパッケージのものを手に取った。会計を済ませる。

「明日が楽しみだね!」

キミカが弾んだ声で言う。

「皆さん、トタン鉱山には危険な区域もあるので注意は怠らないようにしてくださいね」

子どもたちにはこうして再三注意をしている。何かあってからでは遅いからだ。

「はーい!」

子どもたちがそれぞれの寮に向かうのをソータは見送った。

「ソータ…」

「キメル!」

ソータはキメルの首に抱き着いた。

「乗れ」

「…うん」

ソータがキメルの背中に跨ると、キメルが駆け出した。今まで校内にいたはずだが、いつの間にか外を走っている。

「ソータ、大変じゃないか?その…子どもたちの相手は」

キメルなりに言葉を選んでくれていると分かり、ソータは嬉しくなってキメルの背中に抱き着いた。

「ありがとう、キメル。心配してくれて」

「いや…ソータなら大丈夫だと思っているが…!」

キメルの慌てたような口調にソータは噴き出してしまった。

「そんなに笑うことか…?」

キメルが拗ねている。それが可愛らしくて、ソータはキメルの背を撫でた。

「キメルって優しいんだなあって思ったの」

「なんだ?急に?」

「だって、私とこうやって一緒にいてくれるでしょう?」

「ま、まぁそうだな」

「ありがとう、キメル。大好きだ…よ」

ソータはいつの間にか、眠ってしまっていた。キメルの背中は広くて温かい。安心できる場所だ。キメルとは小さな頃から聖域の森で駆け回って遊んでいた。森の中は昼間でも暗かったのを思い出す。それでもキメルがいれば明るい気持ちでいられた。

「キメル…」

ハッとなってソータは起き上がった。いつの間にか自分の部屋にいる。キメルがここまで運んでくれたのだろう。どれくらい寝てしまったのかはわからないが、ソータはそっとキメルにありがとうと気持ちを送った。キメルも今は休んでいるのだろう。ソータはもう一眠りしようと着替えてベッドに潜り込んだ。

✢✢✢

「む…これは彩りが…」

ソータ、パペ、サラの三人で早朝から学校の調理室で皆の分の弁当を作っている。弁当箱にしては大きい透明のタッパーにソータはおかずを詰めた。なんだか全体的に茶色いような気がする。揚げ物に偏っているからだろうか。

「ソータナレア様、ここに葉物野菜をいれて、あと卵焼きとカニカマを入れましょうか」

パペの言う通りにおかずを詰めると、ぐんと見映えが良くなる。

「へー、パペってなんでも出来るんだな」

サラが感心したように笑った。パペが口の端を上げる。

「サラ先生も万能なようで」

サラはサラで彩りよくサンドイッチを作っている。見るからに美味しそうだと分かるものだ。

「ソータナレア様のお弁当はこちらになります」

「わぁ、わざわざありがとう。美味しそうなのです」

ソータは自分のバッグ(パペが作ってくれた)に弁当箱が横にならないよう注意して入れた。昨日買った駄菓子も忘れずに入れる。

「天気もよさそうだし、良かったな!」

「絶好の原石集め日和ですね」

そう、今日はただ遊ぶわけではない。シヴァから依頼を受けている。それをこなさなければ信用を大きく失うことになる。

「行きましょうか」

集合場所であるターミナルに向かうと子どもたちとキメルがいた。パペが飛空艇を取り出してそれに乗り込む。パペが操縦桿を握ると静かに浮き上がった。

「ソータナレア様、私ね、原石について色々調べてきたの」

ユメがソータにそっと告げてくる。あまりの可愛らしさにソータは卒倒しないよう気を張り詰めた。ユメの頭を撫でる。

「なにか分かりましたか?」

「あのね、原石はそんなにレアリティが高いアイテムではないんだけど、鉱脈を掘る時は割れやすいから気を付けるようにって本に書いてあった」

「ちゃんと下調べをされたのですね。ユメ様花丸なのです」

ユメが照れ臭そうに笑う。他の子どもたちもそれぞれトタン鉱山について調べてきたようだ。

「なんか皆変わったな」

サラがぽつりと言う。子どもたちは窓から景色を眺めている。

「変わったってどういう風にですか?」

ソータの問いにサラは頷いた。

「前までは勉強が退屈だったみたいなんだ。なかなか集中も難しくてさ、担任も匙投げるレベルだったんだよ」

「あの子たちはとてもいい子ですよ?」

サラがぽん、とソータの頭に手を置く。

「やっぱソータはすげえわ」

サラにこうして褒めてもらえてソータとしてはむず痒い気持ちになる。自分はただ必死になってやっているだけだから尚更だ。いつもいつもこれで良かったのかとか、子供たちをむやみに傷付けてはいないかと不安になったり試行錯誤している。
だがサラの笑顔はそんな不安を少しだが軽減してくれた。

「サラ先生、ありがとうなのです」

ソータはそっとお礼を言った。
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