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ソータとフレンはそれぞれ闇神を祓うことが出来る、ということでダイダイの街の探索は手分けをすることになった。
ソータはエンジとシオウ。フレンはレントと組んでいる。少しでも危険を感じた際は深追いせず引き上げるようにとフレンから厳命されていた。
「ここか…」
地図を持ったエンジが立ち止まり店の看板を見上げる。どうやらジュエリーショップのようだ。警察による規制線が張られ、近付けないようになっている。
「闇神の気配がします」
「…どこにいる?」
エンジに尋ねられて、ソータは気配を探った。このあたりは路地になっており、静かだ。大通りから一本道を外れただけで、こうも雰囲気が暗くなるものかと驚く。
「闇神っていうのは暗い静かな所にいるの?」
シオウの質問にソータは頷いた。
「闇神は暗い場所や人を好みますから」
「暗い人?」
「はい。絶望を感じている人に取り憑きます。こっちです」
ソータは走り出した。エンジとシオウもついてくる。路地の更に奥へ向かう。ゴミ箱からゴミがはみ出ている。そこは黒いもやに覆われていた。
「わ、なんだこりゃ!」
「お二人共、下がっていてください」
ソータは前に出て浄化の詠唱を始める。気配からして人間に取り憑いているようだ。だがその人の姿は今のところ見えない。
「我願う…悪しき神よ、この世より浄化されん」
浄化の詠唱にソータは慣れていない。こればかりは経験だ。ソータはずっと聖域にいるように、と前聖女からも言われていた。だが今、状況は変わった。ソータはこうして世界に出て旅をしている。
「ブルル…」
「キメル!!」
ソータの後ろからキメルが力を貸してくれた。ソータは更に詠唱を続ける。しばらくして黒いもやがすっかり消えた。浄化成功である。男性がうつ伏せに倒れている。エンジは彼の状態をチェックして負ぶった。どうやら気を失っているだけのようだ。強盗犯だろうか。
「俺はこの人を病院に連れて行く。ダイダイの中央にある病院、シオウは分かるよな?」
「うん、分かるよ」
ソータは一人、辺りを探っていた。なんだか良くないことが起こりそうな気がする。
「ソータさん、どうしたの?」
「この宝石店に強盗が入ったとフレン兄様は言っていましたよね?先程の人は宝石を持っている様子がありませんでした。つまり…」
ソータが口を噤む。
「まだ闇神がいるってこと?」
シオウが青ざめている。
「はい。フレン兄様も言っていましたが、奴らはお互いに結託します」
「一体闇神は何処に?」
「ブルル…」
キメルがソータの体に頭を寄せてくる。ソータは彼の頭を撫でる。
「とりあえず、次の闇神が現れたというポイントに行ってみましょう」
「分かった」
ソータたちは路地から出て歩き出した。ダイダイは広い。だが商業施設は利便性からある程度固まった場所にある。シオウはエンジから地図を預かっている。次のポイントは高価なバッグなどを取り扱うブランドショップのようだった。
大通りに出ると屋台があちこちに並んでいる。楽しそうな祭りの雰囲気にソータは絶対に台無しにさせないと意気込んだ。
✢✢✢
「ねえ、フレン。あんたって本当に神父?」
フレンとレントはポイントに向かって歩いていた。ダイダイは基本的に人通りが多い。だが今日は特別、人に行き合わない。それはもちろん、強盗が数件連続して起こったことと関係あるだろう。今は、祭りが行われているはずだが、一本道を違えるだけでこうも閑散とするとはとフレンは内心苦笑した。
「あぁ、そうだよ。俺は紛れもなく神父だ」
レントはジトっとフレンを見つめた。どうもこの男は食えないと思ったのだ。エンジやシオウもなかなかに手強い男であるのは間違いないが、この人の場合は更にその先を行く。自分より年上だからという理由ももちろんあるが、どうもやることなすことすべてが手慣れすぎているのだ。
「ねえ、フレン。あんたってひとたらしでしょ?」
「酷いな、まだ会ったばかりだってのに」
フレンが苦笑しているが、レントは追及を辞めない。
「ソーちゃん、怖がってるじゃん」
「え?」
フレンが驚愕といった様子で目を見開いた。
「俺がソータに嫌われている?」
レントは首を横に振った。
「んーん、嫌われてはいないよ。ただ同じ様な職種でフレンはソーちゃんよりベテランだし、ソーちゃんは自分のやり方で大丈夫なのかなーって迷ってる感じ」
それだったらフレンにも合点がいく。
「そりゃあ俺のほうが年も上だし慣れてることも多いけど、ソータはちゃんとやってるよ。あんなに小さいのに魔法の技術もぴかいちだしな」
「それ、直接言って。ソーちゃんのパフォーマンスがあんたのせいで悪くなるのは俺が許さない」
フレンは思わず笑った。困ってしまったからだ。
「分かった。どこかで時間を作るよ」
「いちゃいちゃはしないでね。ソーちゃんなんでも受け入れちゃう子だから」
「危ないな?!」
「みんなそう思ってるよ。ソーちゃん優しいし、懐広い聖女様だもん」
「確かにその通りだ」
二人は建物の前で立ち止まった。そこはいわゆる、金券を取り扱うショップだ。店構えこそ小さいが、規制線が張られており、入れないようになっている。ここにも強盗が入ったという。
「フレン、あれ」
レントは目が格別に良い。そして勘も良かった。レントの指さした方向には、黒いもやが隅に固まっている。二人はその場に駆け寄った。
「こいつだ」
フレンも浄化の詠唱を始める。ソータとは違い、はるかにあっさりと闇神を祓った。
「こいつが強盗犯?」
レントが倒れている男の髪の毛を引っ張り顔を持ち上げる。雑だなとフレンが苦笑する。
「とりあえず病院だな」
「あそこに電話ボックスがあるから呼ぼう」
レントが電話をかけている。フレンもソータ同様、胸騒ぎを抑えられなかった。
何かが起きる、そんな気がするのだ。
今行われているミツキ祭はダイダイではメインの行事だ。こんなところで何かがあれば大変なパニックが起こるのは間違いない。
「頼むぞ」
フレンはこれから何も起きないことを願った。
ソータはエンジとシオウ。フレンはレントと組んでいる。少しでも危険を感じた際は深追いせず引き上げるようにとフレンから厳命されていた。
「ここか…」
地図を持ったエンジが立ち止まり店の看板を見上げる。どうやらジュエリーショップのようだ。警察による規制線が張られ、近付けないようになっている。
「闇神の気配がします」
「…どこにいる?」
エンジに尋ねられて、ソータは気配を探った。このあたりは路地になっており、静かだ。大通りから一本道を外れただけで、こうも雰囲気が暗くなるものかと驚く。
「闇神っていうのは暗い静かな所にいるの?」
シオウの質問にソータは頷いた。
「闇神は暗い場所や人を好みますから」
「暗い人?」
「はい。絶望を感じている人に取り憑きます。こっちです」
ソータは走り出した。エンジとシオウもついてくる。路地の更に奥へ向かう。ゴミ箱からゴミがはみ出ている。そこは黒いもやに覆われていた。
「わ、なんだこりゃ!」
「お二人共、下がっていてください」
ソータは前に出て浄化の詠唱を始める。気配からして人間に取り憑いているようだ。だがその人の姿は今のところ見えない。
「我願う…悪しき神よ、この世より浄化されん」
浄化の詠唱にソータは慣れていない。こればかりは経験だ。ソータはずっと聖域にいるように、と前聖女からも言われていた。だが今、状況は変わった。ソータはこうして世界に出て旅をしている。
「ブルル…」
「キメル!!」
ソータの後ろからキメルが力を貸してくれた。ソータは更に詠唱を続ける。しばらくして黒いもやがすっかり消えた。浄化成功である。男性がうつ伏せに倒れている。エンジは彼の状態をチェックして負ぶった。どうやら気を失っているだけのようだ。強盗犯だろうか。
「俺はこの人を病院に連れて行く。ダイダイの中央にある病院、シオウは分かるよな?」
「うん、分かるよ」
ソータは一人、辺りを探っていた。なんだか良くないことが起こりそうな気がする。
「ソータさん、どうしたの?」
「この宝石店に強盗が入ったとフレン兄様は言っていましたよね?先程の人は宝石を持っている様子がありませんでした。つまり…」
ソータが口を噤む。
「まだ闇神がいるってこと?」
シオウが青ざめている。
「はい。フレン兄様も言っていましたが、奴らはお互いに結託します」
「一体闇神は何処に?」
「ブルル…」
キメルがソータの体に頭を寄せてくる。ソータは彼の頭を撫でる。
「とりあえず、次の闇神が現れたというポイントに行ってみましょう」
「分かった」
ソータたちは路地から出て歩き出した。ダイダイは広い。だが商業施設は利便性からある程度固まった場所にある。シオウはエンジから地図を預かっている。次のポイントは高価なバッグなどを取り扱うブランドショップのようだった。
大通りに出ると屋台があちこちに並んでいる。楽しそうな祭りの雰囲気にソータは絶対に台無しにさせないと意気込んだ。
✢✢✢
「ねえ、フレン。あんたって本当に神父?」
フレンとレントはポイントに向かって歩いていた。ダイダイは基本的に人通りが多い。だが今日は特別、人に行き合わない。それはもちろん、強盗が数件連続して起こったことと関係あるだろう。今は、祭りが行われているはずだが、一本道を違えるだけでこうも閑散とするとはとフレンは内心苦笑した。
「あぁ、そうだよ。俺は紛れもなく神父だ」
レントはジトっとフレンを見つめた。どうもこの男は食えないと思ったのだ。エンジやシオウもなかなかに手強い男であるのは間違いないが、この人の場合は更にその先を行く。自分より年上だからという理由ももちろんあるが、どうもやることなすことすべてが手慣れすぎているのだ。
「ねえ、フレン。あんたってひとたらしでしょ?」
「酷いな、まだ会ったばかりだってのに」
フレンが苦笑しているが、レントは追及を辞めない。
「ソーちゃん、怖がってるじゃん」
「え?」
フレンが驚愕といった様子で目を見開いた。
「俺がソータに嫌われている?」
レントは首を横に振った。
「んーん、嫌われてはいないよ。ただ同じ様な職種でフレンはソーちゃんよりベテランだし、ソーちゃんは自分のやり方で大丈夫なのかなーって迷ってる感じ」
それだったらフレンにも合点がいく。
「そりゃあ俺のほうが年も上だし慣れてることも多いけど、ソータはちゃんとやってるよ。あんなに小さいのに魔法の技術もぴかいちだしな」
「それ、直接言って。ソーちゃんのパフォーマンスがあんたのせいで悪くなるのは俺が許さない」
フレンは思わず笑った。困ってしまったからだ。
「分かった。どこかで時間を作るよ」
「いちゃいちゃはしないでね。ソーちゃんなんでも受け入れちゃう子だから」
「危ないな?!」
「みんなそう思ってるよ。ソーちゃん優しいし、懐広い聖女様だもん」
「確かにその通りだ」
二人は建物の前で立ち止まった。そこはいわゆる、金券を取り扱うショップだ。店構えこそ小さいが、規制線が張られており、入れないようになっている。ここにも強盗が入ったという。
「フレン、あれ」
レントは目が格別に良い。そして勘も良かった。レントの指さした方向には、黒いもやが隅に固まっている。二人はその場に駆け寄った。
「こいつだ」
フレンも浄化の詠唱を始める。ソータとは違い、はるかにあっさりと闇神を祓った。
「こいつが強盗犯?」
レントが倒れている男の髪の毛を引っ張り顔を持ち上げる。雑だなとフレンが苦笑する。
「とりあえず病院だな」
「あそこに電話ボックスがあるから呼ぼう」
レントが電話をかけている。フレンもソータ同様、胸騒ぎを抑えられなかった。
何かが起きる、そんな気がするのだ。
今行われているミツキ祭はダイダイではメインの行事だ。こんなところで何かがあれば大変なパニックが起こるのは間違いない。
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