上 下
11 / 12

11・新たなデーモン

しおりを挟む
「♪~」

「ティス、ノリノリだなあ」

一行は探りながら地下室を歩いている。もちろん光を宿すデーモン、マロンを遊技は召喚している。

「なんかここ、すごく広いね」

ノカの呟きは最もだ。ティスがくるっとこちらに顔を向けた。

「私の見立てによれば、ここに何かがいるのは間違いありません」

「兄者、その何かとは・・・」

ジャスが唸るとティスが頷いた。

「そう、私たちの同胞であるのは間違いありません。そのデーモンがこの魔空間を作っています」

「そのデーモン、相当強いんじゃない?」

ノカが不安げに言う。

「大丈夫。ジャスくんもティスも十分強いデーモンだよ」

遊戯が笑うとノカもほっとしたように笑った。

「とりあえずこっちから気配がある。行ってみよう」

ノカが指を差す。一行は更に奥へ進んだ。

「う・・・急に寒くなった」

「嫌な空気だな」

「・・・しくしく」

ぞわっと背筋を駆け抜けるような寒気に一行は固まった。マロンがすかさずあたりを照らす。照らされた先にいたのは、青白い肌の女性だった。頭には角、背には禍々しい翼を持つ。間違いなくデーモンだ。

「彼女が?」

「うん、遊技ちゃん」

「ああ」

遊戯と遊技の二人は前へ出た。ジャスとティスも身構える。

「あなたたちはどうしてここに?私の主人様はもういないというのに」

「君の主人はデーモンテイマーだったんだね」

「そうです。彼は常に力を求めていました。私が弱いと罵り一方的に殴られ」

どうやら主人から暴力を振るわれていたらしい。そういった話は珍しい話ではない。

「人間ユルサない・・・!」

彼女を纏う空気が変わる。それに伴い、彼女の雰囲気が一変した。ごおおおおと風が吹きすさぶ。

「ティス、力を受け流して」

「承知しました」

遊戯の判断にティスが従う。まるで柳のようにあっさりと力を受け流され、女性デーモンは恐ろしくなったのか後ずさった。

「な…私の力が効かない?」

「君、すごく強いね」

「あ・・・」

遊戯は彼女のそばにずいと近寄った。

「もちろん強いって大事だけど、ただ力任せなだけじゃダメなんだよ」

「く・・もう一度」

「ジャス、頼むぞ」

遊技がジャスに指示を出す。ジャスは力を力で押しつぶした。

「そんな・・力比べでも敵わないの?」

「君、名前はなんていうんだ?」

「サシャ」

「そうか。お前はずっとここにいるつもりなのか?」

「それは・・・」

遊技は笑った。

「なら俺たちと一緒に来ないか?」

「え?」

サシャは戸惑ったように遊戯たちを見つめる。

「そうだね、遊戯さん達といれば安心かな。ここの浄化も出来るし丁度いいんじゃないかな」

ノカが頷く。

「主人様が亡くなったのは私のせい」

うううとサシャが泣き出す。

「遊戯様、使役されているデーモンは主人に逆らえるのですか?」

ティスに尋ねられて遊戯は考えた。

「多分契約が外れてたんじゃないかな。使役は信頼が大事だし」

「やはり。サシャさん、お二人はとても良いデーモンテイマーですよ」

「私の罪を償えるのなら」

サシャがきゅっと拳を握る。

「遊戯、お前が連れて行けばいい。サシャ、いいよな?」

「はい。もちろんです」

遊戯はデーモンを使役するために呪文の詠唱を唱え始めている。

「デーモン、サシャを僕、遊戯の中に取り入れる。サシャ、中へ」

サシャの周りを魔法陣が取り囲む。サシャは無事遊戯の中に取り込まれた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

運命の恋人は銀の騎士〜甘やかな独占愛の千一夜〜

藤谷藍
恋愛
今年こそは、王城での舞踏会に参加できますように……。素敵な出会いに憧れる侯爵令嬢リリアは、適齢期をとっくに超えた二十歳だというのに社交界デビューができていない。侍女と二人暮らし、ポーション作りで生計を立てつつ、舞踏会へ出る費用を工面していたある日。リリアは騎士団を指揮する青銀の髪の青年、ジェイドに森で出会った。気になる彼からその場は逃げ出したものの。王都での事件に巻き込まれ、それがきっかけで異国へと転移してしまいーー。その上、偶然にも転移をしたのはリリアだけではなくて……⁉︎ 思いがけず、人生の方向展開をすることに決めたリリアの、恋と冒険のドキドキファンタジーです。

【悪役令嬢は婚約破棄されても溺愛される】~私は王子様よりも執事様が好きなんです!~

六角
恋愛
エリザベス・ローズウッドは、貴族の令嬢でありながら、自分が前世で読んだ乙女ゲームの悪役令嬢だと気づく。しかも、ゲームでは王子様と婚約しているはずなのに、現実では王子様に婚約破棄されてしまうという最悪の展開になっていた。エリザベスは、王子様に捨てられたことで自分の人生が終わったと思うが、そこに現れたのは、彼女がずっと憧れていた執事様だった。執事様は、エリザベスに対して深い愛情を抱いており、彼女を守るために何でもすると言う。エリザベスは、執事様に惹かれていくが、彼にはある秘密があった……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています

平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。 生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。 絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。 しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?

大好きだけど、結婚はできません!〜強面彼氏に強引に溺愛されて、困っています〜

楠結衣
恋愛
冷たい川に落ちてしまったリス獣人のミーナは、薄れゆく意識の中、水中を飛ぶような速さで泳いできた一人の青年に助け出される。 ミーナを助けてくれた鍛冶屋のリュークは、鋭く睨むワイルドな人で。思わず身をすくませたけど、見た目と違って優しいリュークに次第に心惹かれていく。 さらに結婚を前提の告白をされてしまうのだけど、リュークの夢は故郷で鍛冶屋をひらくことだと告げられて。 (リュークのことは好きだけど、彼が住むのは北にある氷の国。寒すぎると冬眠してしまう私には無理!) と断ったのに、なぜか諦めないリュークと期限付きでお試しの恋人に?! 「泊まっていい?」 「今日、泊まってけ」 「俺の故郷で結婚してほしい!」 あまく溺愛してくるリュークに、ミーナの好きの気持ちは加速していく。 やっぱり、氷の国に一緒に行きたい!寒さに慣れると決意したミーナはある行動に出る……。 ミーナの一途な想いの行方は?二人の恋の結末は?! 健気でかわいいリス獣人と、見た目が怖いのに甘々なペンギン獣人の恋物語。 一途で溺愛なハッピーエンドストーリーです。 *小説家になろう様でも掲載しています

処理中です...