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10・ノカ、移住する

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「遊戯さん、遊技さん、僕の家に遊びにおいでよ」

大天使が魔界にやってきたことでしばらく騒ぎになったが、漆黒の手配でそれも収まりつつある。そんな中、ノカはふらっと二人の元に訪れた。遊戯たちは基本的に、漆黒の屋敷で暮らしている。時折、近くの森に出掛けてはデーモンたちの息抜きをしたり自身の休息を取るのだ。今、二人は森でのんびりしていた。

「ノカくんのお家かぁ。ちょっと興味あるかも」

「翼しまったんだな」

遊技の言葉に、ノカが笑う。

「翼があると目立つし、邪魔だからね」

「確かに…」

ノカの言葉に二人は思わず頷いた。

「遊戯様、遊技様、ノカ様のお家に行かれるのですか?」

ティスが物腰柔らかく聞いてくる。

「うん、行ってみようか!」

「おう。せっかく誘ってもらったんだしな」

「吾輩も大天使の家には興味がある」

ジャスがむむ、と唸る。

「じゃあ行こうか。案内するね」

遊戯と遊技はデーモンたちをしまい、ノカと共に歩き出した。ノカの家は住宅街の一角にあるらしい。

「わ、良いお家!」

「広いな」

ノカがニコニコ笑っている。

「漆黒さんが探してくれたんだ」

「え?あの漆黒くんが?」

ノカが微笑みながら頷く。

「ここ、いわくつきの事故物件なんだって。僕みたいな天使がいれば浄化できるとかなんとか」

「それ、絶対適当だぞ」

「漆黒くんってば」

はああと遊戯と遊技が溜息を吐いていると、ノカが笑った。

「とりあえずお茶を淹れなくちゃね。お菓子もあるんだ」

「ありがとう、ノカくん」

ノカがキッチンに向かう。

「遊戯様、私もお部屋を見たいです。事故物件、すごく興味あります」

中からそう頼まれて、遊戯はティスを召還した。

「遊技、吾輩もだ。兄者と共に」

「分かった」

遊技もジャスを召喚する。召喚された二人のデーモンは部屋を見て回っている。

「なんだか楽しそうだね。デーモンさん達」

ふふっとノカが笑いながらお茶を啜っている。

「わ、このお茶美味しい。お菓子も」

「本当?よかった」

「遊戯様!」

「大変だぞ、遊技」

ティスとジャスが慌てた様子でやって来る。手には壷。

「どうしたの?二人共」

「この壷がすさまじく呪われている」

「もしかしてその壷が事故物件になった原因?」

ノカが立ち上がる。表情は真剣だ。

「嫌な感じだなあ。そんな壷があったんだ」

「ノカ様、この家には地下室があるようです」

地下室?とノカが首を傾げて、ああと頷いた。

「確か入れない場所があるんだよね」

遊戯と遊技はその言葉にゾッとなった。ノカは壷を掴んで力を込める。カシャリと壷が崩れた。

「せっかくだし行ってみる?」

「是非」」

「人間の呪いの力凄まじい」

ノカの誘いにデーモンたちが頷いている。一方で遊戯と遊技は渋っていた。

「二人は待ってる?」

ノカの言葉に二人はついていくと同意したのだった。デーモンを使役するために距離を開けるわけにはいかないからだ。地下室に続く階段は薄暗い。ドアの前に集まり、ノカがドアノブをガチャガチャやった。

「ほら、入れないんだ」

「私にお任せあれ」

ティスが我こそはと前に出て来る。

「兄者は開かないドアを開けることが得意なのである」

「そんな特技があったんだ・・」

遊戯が引いていると、カチリとドアが開く。

「さあ、入ってみましょう」

ティスが意気揚々と中に入っていった。
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