上 下
7 / 12

7・制裁

しおりを挟む
「ノカ、水飲むか?」

一方その頃、遊技はノカの傍にいた。ノカは急に天使化したせいか熱を出していた。ぜいぜいと荒く息をしているノカに水を飲ませる。人間から天使へ変わるためには相当な負荷がかかるらしい。遊技は心配だった。

「遊技、天使はそんなに簡単には死なない。ノカ殿はきっと乗り越えられる」

ジャスが励ましてくれているのだと遊技は気が付き嬉しくなった。デーモンであるはずの彼らに思いやりという物が生まれている。

「ジャス、お前すごく優しくなったよな」

「むう、吾輩とて学びます」

ジャスは不本意と表情をしかめさせたが遊技は嬉しくて頭を下げた。

「俺たちにいつも力を貸してくれて本当にありがとう」

「やはり貴女は読めぬ」

「天使はどうなった」

「漆黒?」

漆黒が自室を出ることなど滅多にない。

「どうしたんだ?お前?」

遊技の問いに彼は顔をしかめた。

「大天使が降臨するなど珍しいだろうが」

どうやら野次馬に来たらしい。遊技はそれに呆れてじとっと漆黒を見つめた。

「漆黒、お前は黙っていればかっこいいのになあ」

「なんだそれは」

漆黒が睨んでくるが遊技は相手にしない。

「まあそういうとこも好きなんだけどな」

ぼそっと言ったが漆黒にも聞こえていたらしい。ぽぽぽと顔を赤くしている。

「遊技、お前ってやつは」

二人で顔を赤くしていたらジャスが溜息を吐いた。

「お二人共、いちゃついている場合ですか」

ジャスにいちゃついていない!と二人は叫んだ。ノカの様子を三人は見守った。熱もだんだん引いてきている。

「遊戯さんはどこへ行ったの?」

ノカが呟くように尋ねて来る。

「遊戯はお前をさらったやつを探している。お前の家族を殺したんだろう?」

「あいつらは普通じゃない。人間じゃないかもしれない」

ノカが起き上がった。

「僕、行かなくちゃ」

「待てよ、ノカ。お前まだ熱が」

遊技は必死に止めようとしたがノカは聞き入れなかった。ばさり、と彼は翼を広げる。それは6対の翼だった。天使は高位なものほど、翼の数が多くなる。彼はすぅ、と消えていた。

「遊技、吾輩たちも」

「あぁ。行こう!漆黒、あとは頼んだぞ!」

遊技は窓から翼を広げて飛び出した。

「ノカ殿の魔力を探知しました」

さすがジャスの能力は高い。遊技は礼を言って、彼を追いかけた。

✢✢✢

「あぁ…」

「ひどいものですね」

遊戯とティスはある村にいる。そこは荒らされていた。死体が転がり、家から火が出ている。遊戯は彼らを埋めて、手を合わせた。

「遊戯様、犯人はどこに行ったのでしょう」

どうやらノカはこの村に来た際にダンジョンへワープしたようだ。この村の者を殺したのがノカを連れ去った者だろう。

「すごく変な感じ」

遊戯の言葉にティスも頷いている。

「はい。まるで人ではないような気配を感じますね」

「それだ。おいで、ティラ」

遊戯は小型のデーモンを召喚した。ティラは犬のように鼻が効く。

「ティラ、ここで暴れた奴らを探れる?」

「ばふっ!」

「ふふ、遊戯様は年々お強くなっていられる」

ティスは楽しそうだ。ティラはすぐさま気配を認知したようだ。遊戯に向かって駆け寄ってくる。

「やつらは骸骨のダンジョンにいるの?」

「ばふっ」

「面倒なことになりましたね」

ティスの言葉に遊戯は頷いた。

「遊戯さん」

ふわっと後ろから抱き締められて、遊戯は固まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

囚われの姉弟

折原さゆみ
恋愛
中道楓子(なかみちふうこ)には親友がいた。大学の卒業旅行で、親友から思わぬ告白を受ける。 「私は楓子(ふうこ)が好き」 「いや、私、女だよ」 楓子は今まで親友を恋愛対象として見たことがなかった。今後もきっとそうだろう。親友もまた、楓子の気持ちを理解していて、楓子が告白を受け入れなくても仕方ないとあきらめていた。 そのまま、気まずい雰囲気のまま卒業式を迎えたが、事態は一変する。 「姉ちゃん、俺ついに彼女出来た!」 弟の紅葉(もみじ)に彼女が出来た。相手は楓子の親友だった。 楓子たち姉弟は親友の乗附美耶(のつけみや)に翻弄されていく。

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

★【完結】棘のない薔薇(作品230327)

菊池昭仁
恋愛
聡と辛い別れをした遥はその傷が癒えぬまま、学生時代のサークル仲間、光一郎と寂しさから結婚してしまい、娘の紅葉が生まれてしあわせな日々を過ごしていた。そんな時、遙の会社の取引先の商社マン、冴島と出会い、遙は恋に落ちてしまう。花を売るイタリアンレストラン『ナポリの黄昏』のスタッフたちはそんな遥をやさしく見守る。都会を漂う男と女。傷つけ傷つけられて愛が加速してゆく。遙の愛の行方はどこに進んで行くのだろうか?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

薔薇の姫は夕闇色に染まりて

黒幸
恋愛
あらすじで難解そうに見えますが本編はコメディです、多分メイビー。 その世界は我々が住む世界に似ているが似ていない。 我々がよく知っているつもりになっているだけで、あまり知らない。 この物語の舞台は、そんなとある異世界……。 我々がイタリアと呼ぶ国に似たような国がその世界にはある。 その名もセレス王国。 重厚な歴史を持ち、「永遠の街」王都パラティーノを擁する千年王国。 そして、その歴史に幕が下りようとしている存亡の危機を抱えていることをまだ、誰も知らない。 この世界の歴史は常に動いており、最大の力を持つ国家は常に流転する。 今この時、最も力を持った二大国とセレス王国は国境を接していた。 一つは、我々が住む世界のドイツやフランスを思わせる西の自由都市同盟。 そして、もう1つがロシアを思わせる東の自由共和国である。 皮肉にも同じ自由を冠する両国は自らの自由こそ、絶対の物であり、大義としていた。 本当の自由を隣国に与えん。 そんな大義名分のもとに武力という名の布教が幾度も行われていた。 かつての大戦で両国は疲弊し、時代は大きく動き始めようとしている。 そして、その布教の対象には中立を主張するセレス王国も含まれていた。 舞台を決して表に出ない裏へと変えた二大国の争い。 永遠の街を巻き込んだ西と東の暗闘劇は日夜行われている。 そんな絶体絶命の危機にも関わらず、王国の民衆は悲嘆に明け暮れているかというとそうでもない。 そう、セレス王国には、最後の希望『黎明の聖女』がいたからだ。 これは歴史の影で誰にもその素顔を知られること無く、戦い続けた聖女の物語である。 そして、愛に飢えた一人の哀しき女の物語でもある。 旧題『黎明の聖女は今日も紅に染まる~暗殺聖女と剣聖の恋のシーソーゲーム~』 Special Thanks あらすじ原案:『だって、お金が好きだから』の作者様であるまぁじんこぉる様

ヒロインと悪役令嬢は戦友⁉︎

恋愛
数ある作品の中から見つけていただきありがとうございます! 楽しんで頂ければ幸いです。 *内容* 乙女ゲームの世界だと理解した2人の令嬢がそれぞれのハッピーエンドに向けて奮闘していくお話です。 乙女ゲーム要素は最初だけです。 ちょっとポンコツな主人公サリアとそんなサリアのことが好きなメルが頑張っています、、 ハッピーエンドになるお話です! *ざまぁはちろっと出てくるくらいです。ガッツリが好みな方には物足りないと思いますのでご注意ください。 9:00更新(初日以外1日1話) 完結まで投稿済みです。

処理中です...