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第三話

史郎の父

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僕の家の前には古びた門がある。それをくぐると現れる家もまた建物が古くていかめしいイメージを抱く。
引き戸を引いて中に入ると、しんと静まり返っていた。
母さんの靴もないから買い物にでも行ったのかもしれない。
僕の家は基本的に鍵をかけない。
危ないとよく言われるけど、盗むものなんてなにもないのである。

靴を脱いで台所に向かう。
とりあえずお腹が空いた。
冷蔵庫を開けて中を見てみる。
うーん、今すぐ食べられそうなものはないな。
仕方なく冷えた麦茶のパックを取り出して、グラスに注いだ。
こうして空腹をごまかそう。
玄関で音がする。
母さんかな?まぁそのうちわかるか。
お茶を飲みながら、次は冷凍庫を開けてみる。
ブロックの氷に、いくつかの冷凍食品。
僕は薄い大きな箱を取り出した。

冷凍ピザである。
作り方を見ると、少し解凍して電子レンジで加熱するらしい。
これなら大きいし、僕でもお腹いっぱいになりそうだ。
冷凍ピザをシンクに載せる。まずは解凍だ。

「史郎、帰ってたのか」

振り返ると父さんだった。
さっき帰ってきたのは父さんだったらしい。

「父さんこそ、お帰り」

「腹が減ってるのか?」

「うん、父さんも食べる?ピザだけど」

「あぁ、もらう」

ピザを電子レンジに入れて加熱をスタートさせた。楽しみだなー!
父さんは作務衣に着替えてきたらしい。新聞を片手にテレビをつけた。

「史郎、母さんから聞いた。
また事件を解いたんだって?」

「解いたのは二葉だよ」

そこは重要なポイントだ。

「克樹にも言ったが、無理はせんでくれよ。
命に関わるからな」

「ん、兄さんからも言われてる。ヘマはしないよ」

電子レンジが止まったらしい。
トマトソースのいい匂いがする。
僕たちはピザを半分ずつにして食べた。

「ねえ父さん、一華のことなんだけどさ?」

食べながら尋ねると、父さんがこちらを見た。

「なにかあったか?」

僕は金庫から出てきた証拠品の話をした。
父さんはしばらく考えていた。

「誘拐事件か、なんで一華はそれを追っていたんだ?」

「それは」

理由はわからなかった。父さんが頷く。

「いいか、史郎。怪盗はあらゆるものを盗み出せる。それは心であってもだ。
探偵の技術を十二分に発揮させるのがお前の役目だ」

「うん、わかった」

「一華のことは私も調べてみよう。克樹にも頼みなさい」

「はい」

僕は素直に従うことにした。





夕飯を食べて部屋に戻った。
レポートの続きをしなくちゃならない。
でも誘惑に負けてテレビをつけてしまった。
ちょうどニュースがやっている。
集団食中毒とテロップが表示されていた。
なんだろう、物騒だ。
そうだ、こんなことをしてる場合じゃない。
まずはレポートだ。
僕はテレビを消して、机に向かった。
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