胸が小さいことをバカにされても、実は私はS級イケメン王子と溺愛結婚できたので問題ありません

いちいちバカにしてくんな

「なによ、スカーレット。いきなりこの私を呼び出すなんて、どうしたの？　結婚でもするの？」

　王都にある高級レストランで運ばれてくる料理を食べながらスカーレットは静かに微笑んだ。目の前に座っている女友達のサラリーをあまり刺激しないためだ。
　今日はスカーレットの方からお願いして、ここに足を運んでもらったのだ。普段は入ることさえできないこのような高級レストランに誘われたことを不審に思いながらも高級レストランに行けるならとサラリーは彼女の誘いを受けたのだった。

「ええ、今日は大事な話が……」
「まあ、あなたが結婚なんて無理だよね。だって、あなた女性的な魅力が全然ないもの。気づいてる？　職場のみんなあなたのおっぱいのことを「小さすぎて可哀そう」とか、「もうちょっとあったら男も振り向いてくれるのに」ってバカにしているのよ」

（いちいちうるさいわね）

　実のところスカーレットとサラリーはそこまで仲良くない。理由は今の通りにサラリーがスカーレットのことを一方的にバカにしてくるからだった。
　スカーレットも自分のことをバカにしてくる相手と仲良くしたいなんて思わない。だけどれど、同じ職場の仲間なんだから無理にでも関わらなければいけないのが辛かった。
　そして、スカーレットは彼女に思うところがもう一つある。

「おっぱい体操って知っている？　お風呂でおっぱいを大きくするための体操よ。あなたにぴったりだわ。あなたもした方が良いわね。だって、あなたみたいな小さいものは男性は興味ないんだから」

（サラリーって私のおっぱいに異常に執着してくるんですよね。なんでだろう？　というか単純にウザい）
　
　スカーレットには理由は分からないが、なぜかサラリーはことあるごとにスカーレットのおっぱいの小ささに言及してくる。
　確かにスカーレットはたいして大きくないが、それでも他人にそれを言われるとムカつくというものだ。
　これは多分、昔スカーレットが自分で自分のおっぱいの小ささをバカにしていた、自虐をしていた時もあるから、それを聞いてきっとサラリーはこの人のおっぱいはいじっていいとでも思っているのだろう。
　だけど、自分で自分をバカにするのは良いけど、他人にバカにされるのはまた別だろう。

（こいつ。すっごいウザい）

　でも、今日はスカーレットがサラリーにやり返すためにわざとこんな場所に呼んだんだ。

「私はおっぱいはそれなりにあるから優しくしてくれる男もたくさんいるけど、あなたにはいないでしょ。仕方ないから今日は私が奢ってあげるわ。……そういえばあなたが今日私を呼び出した理由はなに？　まさか結婚報告でもないから……」
「今日は紹介したい人がいるんです。とても大切な人で」
「え？　イケメンを私に紹介してくれるの？！　もしかして私の結婚相手になったりして。あなたが分からないかもしれないけど、結婚は女の幸せですからね」

　いかにも嫌味ったらしくいう彼女の声にものすごくイラつきながらも我慢する
　ここで切れたらすべての準備が台無しだ。そう思っていると、予定通りに人が来た。
　とある男の人がさっそうと登場する。
　その人をみてサラリーの目の色が変わった。

「初めまして、私はグレイ・スカッマンと言います。」
「とんでもないイケメンじゃない！」

　当然だろう。サラリーが目を奪われるのを簡単に理解してしまうほどの美しさを持っている。サラリーはスカーレットが彼を自分に紹介してくれたのだと思ってとんでもなくテンションが上がっていた。
　しかし、次の一言で彼女のテンションは地に落とされることになった。

「そして、このスカーレットの夫です」
「え？」

　そうです。スカーレットとグレイは結婚していたんです。そのように言われたサラリーはまだ情報を処理できていないようだった。

「嘘よ！　あなたがこんなイケメンを捕まえられるわけないじゃない。そんな貧相な体しか持ってないあなたがこんなイケメンを捕まえられるわけないわ。くだらない嘘をつこうって言うわけね」
「そんなことありませんよ。私たちはもうずっと前から夫婦になっていたんです。今まで紹介できなくてごめんなさい、サラリー」

（はっはっは。復讐成功だ。こんなにも絶望した彼女の顔を見ることができるなんて嬉しすぎる）

「ふっ！　こんな女すぐに飽きますよ。今から私と一緒に……」
「そんなことありません。私はスカーレットを愛していますので、心から」
「なっ！」
「あと、彼女の胸が小さかろうが私が彼女を愛しているという事実は変わりません。あまり彼女のことをバカにしていると思われることは言わないでください」
「ちがっ」
「分かりましたか」
「はい」

　サラリーは顔面にビンタをくらってなにも考えられなくなった子供のような顔をしている。よっぽど強いパンチでも受けたんだろう。

「それでサラリー。私はもう結婚していたんだけど、あなたはまだ結婚しないの？　結婚は女の幸せですからね」

　その後のディナーではサラリーがスカーレットとグレイのイチャイチャを永遠に見せつけられることになって、彼女の悲鳴がずっと上がっていた。
　よかった。これで復讐完了だ
　スカーレットは微笑んだ