1 / 1
悪役令嬢ありがとう!
しおりを挟む
「スカーレット。貴様とは婚約破棄をする!」
学校の舞踏会。
卒業の大切な時にスカーレットは静かにそう宣告された。
婚約破棄を宣言したのはグレイ・フォン・ラスター。
公爵家の貴族で非常に強い権力を時期に受け継ぐと噂されている、貴族の中でもくらいが高い男だった。そんな男から婚約破棄をされてしまった。
他の生徒はスカーレットのことを哀れみの目を向ける……ということはなくどこかの楽しそうに見ていた。
「グレイ。本当に私と婚約破棄をしてもいいのですか?」
スカーレットにとってみれば今の質問は最終通告だ。
本当に婚約破棄をするのか。
今ならばまだなかったことにできるというスカーレットからの優しさ。
もちろんそれはあくまで形式的なもので、スカーレットの本心から言えばそんなことは言いたくなかった。
「当たり前だ。貴様とは婚約破棄をして、私は新しくアンジェリカを妻に迎えることにする!」
しかし、グレイがそんな思いをくみ取れるはずもなくその宣告を見事にスルーしてしまった。
(こんなにバカだとは思わなかったんだけど)
「あら、そんなものはアンジェリカの了承がなければだめでしょう? だって婚約なのですから」
「ふっ。貴様は知らんだろうがアンジェリカは俺のことが好きなんだ。そんな彼女が俺との結婚を断るはずがない」
よっぽどの自信なんだろう。
本当に了承されるかなんて分からないのに、勝手にそんなことを言っても仕方ないだろう。
「アンジェリカ出てこい」
「はい、グレイ様」
見事に美しく着飾ったアンジェリカを見て、なんて美しいんだろうかと思った。
「お前はアンジェリカのことを悪役令嬢だと罵っていたな。だが、実際にはそんなことは無かった。アンジェリカは一人の美しいバラだった。多少棘はあるが立派なレディだ。そして、これからの人生を俺と共に歩むものだ」
(ああ、本当になんてばかなんだろう。私の嘘を完璧に信じている)
「アンジェリカ。僕と結婚してくれるか?」
(アンジェリカは私と内通しているスパイなのに)
ニヤッと不自然に口角が上がってしまった。
「いいえ、お断りします」
きっとグレイには想像もできなかっただろう。
アンジェリカが婚約を受けないなどとは絶対に思わなかったはずだ。
理解できない顔をしているグレイに一言、
「みじめですね」
アンジェリカの心ない一言が突き刺さった。
その言葉が受け止め切れなかったんだろう。グレイは逃げるように会場から出ていった。
ぱちぱちと盛大な拍手が起きて、私たちは一つの盛大な演技が終わったことを喜んだ。
「スカーレット。私の悪役令嬢の演技はどうだった?」
「それはもう最高だったわよ」
スカーレットとアンジェリカが親友だということは皆が知っている事実。
知らなかったのはあの男くらいだ。
これまでのくだりで分かる通り、婚約者に対するモラハラ。それが耐えきれなくなって、わざと別れるために親友と一芝居売ったのだ。
そして、それは成功した。
周りの生徒もうすうす気づいていたのだろう。
こんなにも温かな拍手をしているのだから。
(へんな男と別れられたし、私はこれから幸せになります)
スカーレットの人生は今ここから始まった。
学校の舞踏会。
卒業の大切な時にスカーレットは静かにそう宣告された。
婚約破棄を宣言したのはグレイ・フォン・ラスター。
公爵家の貴族で非常に強い権力を時期に受け継ぐと噂されている、貴族の中でもくらいが高い男だった。そんな男から婚約破棄をされてしまった。
他の生徒はスカーレットのことを哀れみの目を向ける……ということはなくどこかの楽しそうに見ていた。
「グレイ。本当に私と婚約破棄をしてもいいのですか?」
スカーレットにとってみれば今の質問は最終通告だ。
本当に婚約破棄をするのか。
今ならばまだなかったことにできるというスカーレットからの優しさ。
もちろんそれはあくまで形式的なもので、スカーレットの本心から言えばそんなことは言いたくなかった。
「当たり前だ。貴様とは婚約破棄をして、私は新しくアンジェリカを妻に迎えることにする!」
しかし、グレイがそんな思いをくみ取れるはずもなくその宣告を見事にスルーしてしまった。
(こんなにバカだとは思わなかったんだけど)
「あら、そんなものはアンジェリカの了承がなければだめでしょう? だって婚約なのですから」
「ふっ。貴様は知らんだろうがアンジェリカは俺のことが好きなんだ。そんな彼女が俺との結婚を断るはずがない」
よっぽどの自信なんだろう。
本当に了承されるかなんて分からないのに、勝手にそんなことを言っても仕方ないだろう。
「アンジェリカ出てこい」
「はい、グレイ様」
見事に美しく着飾ったアンジェリカを見て、なんて美しいんだろうかと思った。
「お前はアンジェリカのことを悪役令嬢だと罵っていたな。だが、実際にはそんなことは無かった。アンジェリカは一人の美しいバラだった。多少棘はあるが立派なレディだ。そして、これからの人生を俺と共に歩むものだ」
(ああ、本当になんてばかなんだろう。私の嘘を完璧に信じている)
「アンジェリカ。僕と結婚してくれるか?」
(アンジェリカは私と内通しているスパイなのに)
ニヤッと不自然に口角が上がってしまった。
「いいえ、お断りします」
きっとグレイには想像もできなかっただろう。
アンジェリカが婚約を受けないなどとは絶対に思わなかったはずだ。
理解できない顔をしているグレイに一言、
「みじめですね」
アンジェリカの心ない一言が突き刺さった。
その言葉が受け止め切れなかったんだろう。グレイは逃げるように会場から出ていった。
ぱちぱちと盛大な拍手が起きて、私たちは一つの盛大な演技が終わったことを喜んだ。
「スカーレット。私の悪役令嬢の演技はどうだった?」
「それはもう最高だったわよ」
スカーレットとアンジェリカが親友だということは皆が知っている事実。
知らなかったのはあの男くらいだ。
これまでのくだりで分かる通り、婚約者に対するモラハラ。それが耐えきれなくなって、わざと別れるために親友と一芝居売ったのだ。
そして、それは成功した。
周りの生徒もうすうす気づいていたのだろう。
こんなにも温かな拍手をしているのだから。
(へんな男と別れられたし、私はこれから幸せになります)
スカーレットの人生は今ここから始まった。
27
お気に入りに追加
9
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は攻略対象者を早く卒業させたい
砂山一座
恋愛
公爵令嬢イザベラは学園の風紀委員として君臨している。
風紀委員の隠された役割とは、生徒の共通の敵として立ちふさがること。
イザベラの敵は男爵令嬢、王子、宰相の息子、騎士に、魔術師。
一人で立ち向かうには荷が重いと国から貸し出された魔族とともに、悪役令嬢を務めあげる。
強欲悪役令嬢ストーリー(笑)
二万字くらいで六話完結。完結まで毎日更新です。

婚約破棄された私は第二王子に溺愛される~第一王子は姉の元王女にボコボコにされたが自業自得かと~
琴葉悠
恋愛
ドリス・オヒギンスは第一王子の婚約者だったが、いわれのない婚約破棄をされる──が婚約者の姉の元王女が其処に来て第一王子をボコボコ(精神物理両方)にした上で、やって来た国王陛下に告げ口をして第一王子は王位継承権を剥奪される。
その結果第二王子と婚約することに──

【完結】なんで、あなたが王様になろうとしているのです?そんな方とはこっちから婚約破棄です。
西東友一
恋愛
現国王である私のお父様が病に伏せられました。
「はっはっはっ。いよいよ俺の出番だな。みなさま、心配なさるなっ!! ヴィクトリアと婚約関係にある、俺に任せろっ!!」
わたくしと婚約関係にあった貴族のネロ。
「婚約破棄ですわ」
「なっ!?」
「はぁ・・・っ」
わたくしの言いたいことが全くわからないようですね。
では、順を追ってご説明致しましょうか。
★★★
1万字をわずかに切るぐらいの量です。
R3.10.9に完結予定です。
ヴィクトリア女王やエリザベス女王とか好きです。
そして、主夫が大好きです!!
婚約破棄ざまぁの発展系かもしれませんし、後退系かもしれません。
婚約破棄の王道が好きな方は「箸休め」にお読みください。


行き遅れ令嬢は、落第王子の命令で、しかたなく、学園をやり直します!
甘い秋空
恋愛
「学園に戻って、勉強し直してこい」と、私が年上なのを理由に婚約破棄した王子が、とんでもない事を言います。この年で、学園に戻るなんて、こんな罰があったなんて〜! 聞いてませんよ!

パーティーを追放されたけど、これ異世界恋愛だよね? 私が魔法で令嬢を美人に見せていたのに、戻ってきてと言われても、もう遅い!
甘い秋空
恋愛
パーティーを追放されたけど、このお話は異世界恋愛ですよ?
私が魔法で令嬢を美人に見せていたのに、
私を追放したら、美人はいなくなりますよ?
いまさら戻ってきてと言われても、もう遅いです!

悪役令嬢が天使すぎるとか、マジ勘弁ッ!!
灰路 ゆうひ
恋愛
それは、よくある断罪シーン。
名門貴族学校の卒業パーティーを舞台に、王太子アーヴィンが涙ながらに訴える男爵令嬢メリアを腕に抱き着かせながら、婚約者である侯爵令嬢クララマリアを卑劣ないじめの嫌疑で追及しようとしていた。
ただ、ひとつ違うところがあるとすれば。
一見悪役令嬢と思われる立ち位置の侯爵令嬢、クララマリアが、天使すぎたということである。
※別の投稿サイト様でも、同時公開させていただいております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる