処女ということを友達からバカにされ続けてきたけど、私はイケメン皇太子からの寵愛を受けて処女であることを保っているので問題ありません。

朱之ユク

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皇太子からの寵愛

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「ねえ、スカーレット。あなたは彼氏はいなくても一緒に踊ってくれる相手くらいいるのよね」
 
舞踏家当日。
 スカーレットは一人で会場を彷徨っていた。その姿は迷える宝玉のように輝いていて、見れば誰もが心を奪われてしまほどの輝きだった。
 しかし、光が明るいほど影も強くなる。
 彼女のそばには多くの取り巻きを引き連れた一人のアンジェリカと言う名の強気な令嬢がいた。

「今夜の舞踏会。踊らないと恥ですわよ。男にも誘ってもらえない悲しいことになるわよ」

 スカーレットは舞踏会で男に誘ってもらえないことの意味をよく理解していた。この舞踏会は基本的に踊った相手と結婚するというルールが決められていた。
 つまり、男に誘われないということは結婚できずに行き遅れるということなのだ。
 そんなことになったら結婚相手を探しにこの学園に来ているのに本末転倒になってしまう。

「スカーレットは、……まあ、無理でしょうけど。男を探してこればそれなりの男とかは見つけられるんじゃな? 主にスラム街とかで。あっはっは」

 アンジェリカが一人笑えば取り巻きも全員笑う。

(なんか面白いな。行ってきてくれていることは嫌味なんだろうけど、なんだがバカっぽいし。まあ、いいか)

 アリにかまれてもあまりいたくないようにスカーレットは自分が何をやってもアンジェリカに対しては嫌身にしかならないと理解していた。
 なぜならば、スカーレットには溺愛してくれる彼がいるからだ。

「スカーレット。遅くなったな。ようやく到着したよ」
「あら、グレイ。遅かったじゃないの?」

 その男の声を聞いてアンジェリカたち女生徒は全員が驚愕に満ちる。

「どうして? どうしてこの国の第一王子であり、皇太子であるグレイ様がここにおられるのですか?」

 アンジェリカがそんな言葉を漏らした。
 さすがのその存在を処理できていないのだ。

「おれがここにいてはダメか? 今日はスカーレットの舞踏会だというから俺が踊りに来たんだよ」
「ちょっと待ってください。どうしてこんな女なんですか? スカーレットはこの歳にもなって恋愛経験の一つもない処女の行き遅れなんですよ。どうしてわざわざこんな女を選ぶって言うんですか? 意味が分かりません。皇太子殿下の選ぶべきお方と言うのはもっと品性のあって、経験豊富な女にするべきです。だんじてこんな女ではなく」
「ほう、スカーレット。俺との約束を守っていてくれたのか?」

 アンジェリカはスカーレットを貶める目的で言ったその言葉はしかし、グレイにとっては嬉しさを感じさせるものでしかなかった。

「むかし約束したんだ。君がもし学園に行っても俺のことが好きだったのなら、だれとも付き合わないで欲しいと」
「はい。なので私は殿下以外の男性と交際するつもりなどみじんもございませんでした」
「そ、そんな」
「それで君は勘違いしているようだけど、恋愛経験が豊富と言うのは男にとってはそこまで魅力的ではない。そこは勘違いしないようにしてくれ、それではスカーレット一緒に踊ろうか?」
「はい」

 スカーレットは唖然とした表情のアンジェリカたちを無視して、そのまま二人で踊り始めた。
 まるで物語の主人公のように二人で時間を忘れて優雅に踊っていた。

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