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大団円から始まるハーレム生活?

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「ユーゴ!」
「ねぇ~~!!」
 すべてが終わった後、目を覚ました幼いティーカの弟とティーカは再会を果たした。
 二人はともに大粒の涙を流し、再会を喜んで抱き合っていた。
 その様子は、ちょっとした映画でも見てるみたいに感動的な光景で、ミリなどもらい泣きしてしまうぐらいの状況だ。かくいう俺は、ミリが感激して涙を流していた結果、逆にどうにか泣かずに済んでいた。
 きっと、魔族に捕まってからの彼らは、いつ殺されるかも分からない恐怖の中で生きてきたのだろう。
 その苦しみたるや、俺には想像つかないような状況なわけで、まぁこうなるのも当たり前だ。
 助けられて本当に良かった。
 俺は一度は殺されかけたけど、この光景を見ると全部許せてしまう気がする。
 そんな二人を眺めながら、俺は先ほどまで魔獣と魔族で溢れていた広場を確認する。
 一通り俺の能力で吹っ飛ばした筈だが、まだ誰か残っているかもしれないと警戒しておく。ただ、どれだけ見回しても、俺達以外には誰の姿も無かった。一応さっきの戦いで目につくところは纏めて処理したが、隠れてる事も無さそうか。我ながら派手に蹴散らしたものだ。
 例によってただの八つ当たりで滅茶苦茶やったからな。あまりにイラついたので、情けも容赦もない凶悪な暴力の嵐を吹き荒れさせてしまった。遠隔攻撃が出来るようになった結果、殲滅の速度も圧倒的に高まった事もあり、更に容赦も何もなくなってしまった気がする。
 加えて二足歩行の一応会話できる相手を殺すまでした。まぁ、見た目は化け物にしか見えなかったのと、他人を人質で脅すような奴らは生かしておいても仕方ないというスタンスだが。
 こういうのは魔獣とか相手だけにしよう。どれだけイラつこうが、人には決してこの力は向けまい。
 そうして、改めて俺は心に誓った。この先何があろうが、どんな極悪人にも人間に向けるにはあまりに威力がイカれ過ぎている。実際に生きてる凶悪な魔獣やら魔族やら、当てれば問答無用で灰燼に帰すとか、どういう能力だよと言いたくなる。
 転生すると無双できるチート能力をゲットできるっていうラノベはたくさんあったけど、これはいくら何でもやり過ぎに思う。だけに、調子に乗るのはいかん。やってる事は本当にただの八つ当たりだし。
 神様。俺に詫びる気持ちはあったんだろうが、この能力はやり過ぎだぜ、マジで。
 俺がそんな事を考えていると、一頻り再会を喜んだであろうティーカと弟が立ち上がり、俺に向き直った。
「助けていただいて、本当にありがとうございました。お陰で弟と無事再会出来ました」
「いや。弟くんを助け出せたのはミリのお陰だよ。洞窟の道を効率よく探索できたのも、手早く助け出せたのもミリの活躍あってこそだし」
「そんな事ないよ。見張りの魔獣はソーマがいてくれたから簡単に倒せたし」
「ミリがいなきゃ、多分あそこには到着出来なかったぞ。その後もティーカのいるところまで最短ルートが通れたし。今日のミリは冴えてたぜ」
 そう言って、俺は親指を立てる。実際、裏の洞窟の入り口の発見から正解のルートに迅速に到着、その後すぐにティーカの所まで行くためのルート発見まで大体ミリの活躍だ。謙遜する必要もないくらい、見事だった。
 お陰で皆が無傷でいられた。それだけは確かだ。
「まぁ、ともかく何とかなって本当に良かったよ」
「だね~。皆助かって良かったよ~」
 俺達が笑顔で告げると、ティーカはそれを申し訳なさそうに見ていた。まぁ、彼女からすれば殺そうとした俺に助けられた事への罪悪感が強いのかもしれない。そりゃそうだとは思うけどね。
「ま、とりあえず街まで戻るか。もう日が暮れちまってるから、急ごうぜ」
「オーケー! 行こう行こう!」
「はい。分かりました」
 二人の同意を得られたので、ともかく街へと四人で急ぎ歩き出した。

 その後は、先ほどまでの激しい戦闘―主に俺が激しく暴れまくっただけ―とは打って変わってとても穏やかで問題なく街に戻れた。
 ただし、日が暮れてから結構な時間が経過していたせいで、宿をとるのには苦労した。最終的には安宿で店主を叩き起こし、無理やり四人分のお金を多少の色をつけて支払い、そのまま女性二人含めて一部屋で雑魚寝となった。
 寝台はミリ、ティーカと弟のユーゴに使ってもらい、俺は置かれていた木の長椅子で寝る事にする。
 何気に長距離の移動と洞窟での捜索、派手な戦闘などを行ったせいで疲れており、寝にくい長椅子でも即眠りに落ちてしまった。
 それから、どれくらいの時間が経ったか。
 不意に何か圧力のようなモノと妙に柔らかい感触を感じて、目を覚ました。
 ――なんだ?
 うっすら目を開くと、徐々に焦点があっていく。ぼやけた視界に、やけにきらびやかな光がチラつくのが見える。
 ん?と目を凝らしてみる。そこには、踊り子の装束……を来たティーカがいた。
「え!?」
 俺は突然の事に驚き、状況を確認する。そこには確かにティーカがいて、彼女は今、眠っていた俺に馬乗りになっている。互いの服を挟んで、体と体が完全に密着している。
 何、コレ? 何がどうしたの?
「ティーカ?」
「しーッ。お静かに」
 ティーカはそう言って、人差し指を唇に当てる。彼女はそのまま、身に纏う装束の胸元を少し開いた。そこから、二つの柔らかそうな膨らみが揺れる。
「じっとなさってて下さい。すぐ済みますから」
「済むって何する気だ? ってか、何故服をはだける?」
「何故って……それは殿方ならお分かりではありませんか? 今から夜のお相手をと思いまして」
 上ずった声で尋ねた結果、一番恐れていた答えが返ってきた。瞬間、俺は慌てて止めにかかる。
「いやいやいやいやいや、待った待った待った待った待った! 夜のお相手ってなんだよ? 何血迷った事言い出してんだ、お前は。早まるな! 落ち着け!」
「早まってなどおりません。私は踊り子です。殿方から請われて夜の御供を務めるのも職務の内なのですから」
「いや、俺頼んでないよ。頼むから、そんな早まった事しないでほしいんだけど。ダメだって。自分を大事にしようよ。ねぇ」
「そのような事おっしゃらないで下さいまし。貴方は私達の命の恩人。そのような方に満足な礼もせずに済ますなど、私の気持ちが収まりません。どうか私の体でお楽しみ下さい」
 と、必死で制止する俺に対し、ティーカはまるで意にも介さず体を摺り寄せながら告げる。彼女の頬は心なしか紅潮しており、ただでさえ綺麗な顔に深い色香が加わって余計魅力的に見える。その上、柔らかな胸の感触が胸板に当たって心臓が異様な勢いで高鳴っていくのを感じる。男の本能的に、この感触は色々ヤバい。まだ服の上からだというのに、とてつもなく心地よい。
 って、そんな事言ってる場合じゃない。
 とにかくこの状況を何とかしなければ。そう思い、彼女を引きはがそうと腕を動かそうとする。しかし、腕はピクリとも動かなかった。
「え? あれ? 体が、動かない?」
「すみません。少しの間大人しくしていただく為に、暗器の痺れ薬を使わせていただきました。暫くの間は手足は動かせません。抵抗されては元も子もありませんので」
「待って! そんな事にそんなの使わないで! 暗殺の時は普通に殺そうとしたのに、何で今薬盛ってるの? そんな事の為に……ってか、そこまでするか? いや、マジで止めて。こんな事しないで!! 落ち着け! 考えなおせって!! 自分を大切にしてくれぇぇ!」
 あまりにわけの分からない状況に、俺は破れかぶれで叫ぶ。その口をティーカの手が塞ぐ。
「騒がないで下さい。ミリさんとユーゴが起きてしまいます。それに、何故そんなに抵抗なさるのですか? 私がお相手では不服でしょうか?」
「うぅ、うぐ……い、いや。不服とかじゃなくて寧ろ願ったりかなったりだけど……って、そういう事じゃなくて。そういう事はちゃんとしないとっていうか。ちゃんと正しく恋人になってからするものじゃないかと」
「まぁ、随分と潔白なお考えをお持ちなのですね。私どもなど、妻帯者であろうと踊り子と一夜を共にする事など日常のようなものですのに……大丈夫。たとえ一夜を共にしようとも、何も変わりませんから」
「俺の心情的に変わるって。これから先どうするのか分からないけど、色々変わるんだって。頼むから勘弁して! ってか、近くでミリもユーゴも寝てるんだって。そんな状況でおっぱじめないで! お願いだからぁぁ!」
 ああいえばこういう、謎の問答を繰り返し、俺は首から上しか動かないのでどうにか彼女を止めようと必死で説得し、逆に彼女は此方側の世界での常識やらで攻め立て、更に胸を大きくはだけていく。そこから見える膨らみは、夜の青い光に照らされて光沢のような光を放ち、とても美しく魅惑的だ。
 その悪魔的な魅力に、俺の理性がグラグラ揺れてしまう。
 そうこうしている間に、ティーカの指は俺のシャツの裾を掴み、そのままシャツは上まではだけさせられて胸板があらわになる。
「ああ、逞しいお体ですね。見ているだけで、私もどうにかなってしまいそうです」
 その胸板を、ティーカは愛おしそうになでる。その手つきも妙に蠱惑的で、どうしようもない魔力のようなものがある。
 そうこうする内に、ティーカは遂に胸を覆う布を脱ぎ捨てにかかる。
 やべぇ! それ以上露出が増えると理性が保てるか分からない。
 そのあまりに淫靡な状況に、俺はどうにかして助けを呼ぶしかないと悟った。このまま行くと、俺の貞操―正直、そこはどうでもいい―とティーカの純潔―さっきの口ぶりだとまったく純潔なわけじゃないかもだけど―が失われてしまう。
 こんな事はいけない。例え俺が彼女の弟を助け出したとして、そのお礼がこんなけしからん事で良いとは思えない。助けたもらったお礼に体を差し出すとか、前時代も真っ青だ。いや、ここ中世っぽい世界だけども。
 もうこうなったらやけだ。
「ああ、もう! やめろって! 絶対ダメだってこんな事! 誰か助けてくれぇぇ~~!!」
 そうして、俺は思い切り叫んだ。痺れ薬のせいで腹にも微妙に力が入らなかったが、それでも力を振り絞って思い切り叫んだ。ミリでもユーゴでも、他の客とかでもいいからとにかく誰か助けてくれ!
「ん~。ソーマ。どうしたの?」
 と、その祈りが通じたか、ミリが体を起こした。彼女は寝台から立ち上がると、俺が寝ている長椅子の方を向く。
 そのまま俺達の状況を見て、ミリは完全に固まる。
 それを見て、俺は安堵し、とりあえず体から力を抜いた。
 あ~、助かった。
 そう思い、固まったままのミリを見つめる。彼女はきょとんとした顔で、俺とその上に覆いかぶさるティーカの姿を眺めていた。そして、不意に彼女は首を傾げ、俺達を凝視する。
「二人とも何してるの?」
「あ、こ、これは……」
 ミリの問いに答えあぐねるティーカ。彼女は明らかに慌てた様子で、彼女を見ていた。
 が、不意にミリは得心したように手を叩いた。
「あ~、ティーカはソーマと一緒に寝ようとしてたんだね」
「へ?」
 不意に告げられた謎の答えに、俺は思わず変な声が漏れる。一緒に寝ようとしてるとは、一体……。
「そっか~。二人は一緒に寝るのか。ならさ~。あたしも一緒に寝ようかな?」
「え? ちょっと……何言って?」
「じゃあ、いくよ~~。え~~~い!」
 彼女の意味不明な言葉に困惑する俺をよそに、突如ミリが跳躍した。その跳躍は、寝ている誰かの元へと飛ぶ、某有名な泥棒キャラがやるダイブ、すなわちルパンダイブという奴だった。
「え? おい! ちょ……待って! 何してんの! ねぇ!」
 頭上から一直線に迫るミリの体。俺は動きを封じられた状態でその飛び込みを待ち受けるしかなく。
「ゲハッ!」
 ミリの体は、そのまま重なっている俺とティーカに激突した。
 ちょうど飛び込んできた頭と俺の頭が激突し強い衝撃が走り、俺の意識はまた深淵へといざなわれてしまった。

 それから、どれくらいの時間が経過したのか。
 不意に俺の意識は目覚める。同時に感じる長椅子とは違う固い感触に、自分が床で倒れていた事を理解する。
 と同時に、腰に鈍い痛みが走る。
「いってぇ~。何だろう。異世界に到着した瞬間もこんな感じだったかな」
 そんな事を呟き、痛みに堪えて体を起こし、
 ……不意に床に着いた筈の手に柔らかな感触を覚えた。それも両手ともに……。
 待って。嫌な予感がする。
 頬から流れる冷や汗をそのままに、恐る恐る自分の手を見る。
 そこには俺と同じように床で倒れた美少女二人の姿があり、俺の手は何故か二人の胸のふくらみに置かれていた。
「うひゃぁぁぁ~~~!!」
 慌てて両手を離し、俺はその場から腰を抜かしたまま遠ざかる。
 そのまま、俺がさっきまでいた場所の状況を確認する。
 そこでは、ミリとティーカがそれぞれ穏やかな寝息を立てていた。俺を真ん中に、左にミリ、右にティーカがその美しい顔にあどけない寝顔を浮かべている。美少女である二人の寝顔は、それはもう可愛くて、カメラでもあったら写真に収めてしまいたいと思える程で、俺はひそかに脳内の記憶にこの映像を刻み込んだ。
 ってか、俺はこんな美少女二人を左右に侍らせて寝てたのかよ。
 その有り得ない状況に、俺は顔を引き攣らせる。正直言って、生前のどうしようもなく不幸だった自分からしたら考えられないような、とんでもない光景だ。まぁ、単に気絶しちゃっただけだけど。
 その状況で、無意識とは言え、そんな美少女二人の胸を掴んでしまったという罪悪感で、俺は自分で自分を殴りたくなった。あんな二人と一晩同室で寝てただけでも有り得ない幸運だってのに、胸を触るなんて、マジ有り得ない。
 恐ろしく柔らかくて、とんでもなく心地よかったが。
「いやいや、んな事言ってる場合か、バカ。眠ってる女の子の胸を無断で触るとか最低だろ。そんなのただの痴漢じゃねぇか。こういうの、ラノベとかだとラッキースケベだとか言うんだったっけ? 確かに起こった事自体、ラッキーかもしれないけど、倫理上有り得んだろ! 二度とするな! 絶対だぞ、俺!!」
 頭を激しくかきむしり、俺はそんな事を自分に言い聞かせた。
「んッ、う~~ん。ソーマ―?」
 と、そんな事していると、ミリが目を覚ました。彼女は寝そべったまま、大きく伸びをし、体を起こした。
「あ、おはよ、ソーマ」
「ああ、おはよう、ミリ。それと、ごめん!」
「ん? 何? 何か謝られるような事されたっけ~?」
 寝ぼけた声で首を傾げるミリ。そのあどけない仕草に、俺は更に罪悪感を増す。ただ、自分から胸を触ったとかいうのはどうしても憚られて、俺はその事を言えずにもう一度ごめんと頭を下げた。村の宴の後から、何も進歩してねぇな、俺。最低だわ。
「ん……あ!」
 そんな事を言っている間に、ティーカも目を覚ます。トロンとした寝ぼけ眼のまま、ゆっくり体を起こした彼女は俺と目が合った途端にビクっと目を見開く。
「あ! その……おはようございます」
 そう言って、頬を染めて目線を反らすティーカ。彼女はそのまま、もじもじとした様子で視線を泳がせる。
「昨夜は……その、申し訳ありませんでした。嫌がっているのに無理やり」
 そう言われ、昨晩の事を思い出してしまった。具体的には彼女の柔らかな胸の感触とか、滑らかな手の感触とか、その他色々と……。
 って! だから、そうじゃねぇだろ、俺!! いつからそんなスケベになったんだ! 死ぬ前の俺は、その手の事なんて全く考えようともしてなかった癖に。まぁ、貧乏過ぎたり、色々きつすぎて余裕無かっただけかもしれないけど。
「あ、いや。その……俺も、なんかごめん」
 そういうやましくやらしい思考を浮かべた事も含めて、俺もとりあえず謝罪する。それこそ、さっき無断で胸を触った事についての謝罪も込みで。
 そんなやりとりをしていると、一人で眠っていたユーゴも目を覚ます。
 そうして俺達は階下の食堂兼酒場へ降り、朝食をとる事にした。急に押し掛けた割に、店主も気さくに話しかけてくれて、俺達はゆっくりと朝食を楽しむ事が出来た。
「それで、この先の事なんだけどさ……俺とミリは王都を目指すつもりだけど、ティーカ達はこれからどうするんだ?」
 一通り腹を満たして一息ついた後、俺は二人に問う。その問いに、ティーカは少し思案するように顔を伏せ、ゆっくりと答える。
「そうですね。私達も王都を目指したいと思います。幼いユーゴを連れて旅暮らしも今の時代では危険だと身に沁みましたし、ユーゴを王都の神殿で預かってもらおうかと」
「そっか。なら、一緒に行くか? どうせ行き先も一緒だしさ」
 そう俺は笑顔で答えると、ティーカは弾かれたように顔を上げ、驚いた様子で俺を見つめる。
「え? 良いのですか?」
「ああ。今の時期は魔族やら魔獣やら増えてるっていう話だし、女の子と子供だけで旅ってのは流石に危険だからな。また襲われたり捕まったりしたら大変だしさ」
「そうだね。あたし達が一緒なら、何があっても安全安心。ソーマもだけど、アタシも結構強いんだよ~。何かあっても、二人の事守ってあげるよ」
 えいやーとパンチの素振りをして笑うミリ。彼女の言う通り、俺達がいれば魔族やら魔獣の襲撃があっても対処してやれるだろう。いざとなれば、俺が怒りに任せて暴れれば万事解決できる……と思う。
「でも……助けていただいたばかりか、そこまでしていただくのは……私はソウマさんを、その……」
 ただ、俺達がそうして誘っても、ティーカは申し訳なさそうに恐縮してしまう。
 まぁ、彼女の言う事も最もで、自分が一度は殺そうとした相手にここまでされると、うしろめたさが強いのだろう。俺自身は、殺されかけた事なんて何とも思ってないのだが、現実、こうして生きてるわけだし、彼女にも止むにまれぬ事情があったわけだから責める気も起きない。あんだけ恨みたらたらだった生前の俺だったらこうはならなかっただろうけど、好き勝手暴れていられる今の状態でそんな事はまるで思いもしない。
「旅は道連れ世は情け、袖すりあうも多少の縁ってな。ここで会ったのも、何か縁あっての事だろ。な?」
「うん。一緒に行こうよ。人が多い方がきっと旅も楽しいよ~」
 普段使えそうもないことわざを口にして歯を見せて笑いかける俺と天真爛漫に笑うミリ。
 そんな俺達を、ティーカは戸惑った様子で眺めていた。彼女はそのまま口を固く結び、俯いてしまう。
 そうして、少しの沈黙の後、彼女は意を決したように顔を上げる。
「分かりました。では、私達もお二人に同行させていただきます。まだ何のお礼もできていませんが、必ず受けたご恩に報いてみせます。どうか宜しくお願いします」
 そうして、深々と頭を下げるティーカ。まだ幼いユーゴは、わけも分からず頭を下げる姉を見て、きょとんとしていたが、不意に彼女をまねて頭を下げる。
「ああ。宜しくな、ティーカ、ユーゴ」
 その光景を微笑ましく眺め、俺はなるべくさわやかに聞こえるように告げた。それから、頭を下げるティーカの耳元に口を寄せ、そっと告げる。
「ただ、昨日の夜みたいな事は考えないでくれよな。自分を大事にしてくれ」
「あ! はい。分かりました」
 俺の言葉に、頬を赤らめながら答えるティーカ。その表情に、妙な艶めかしさを感じつつ、俺は自分の中にあったスケベ心を必死に押し殺した。

 こうして、俺達の旅は二人から四人になった。
 その内、同行者二人は美少女。あれ? これ、ちょっとしたハーレムじゃね?
 いやいや、ハーレムって言うのは、王様とかが世継ぎを残す為にいろんな女性を後宮っていう場所に住まわせて、夜には体と体の繋がりで子作りに励む的なあれだから、美少女に囲まれたからってハーレムじゃない筈!
 それに、ティーカには釘は刺したし、ミリはそういう気配が微塵もないし、きっと変な事は起きない筈!
 そうだ! 健全が一番。スケベな事はそういうメディアの妄想だけで十分。
 そういう事はちゃんとお付き合いしてから! 勿論、そういうお店でお金払ってなら構わないっちゃ構わないけど、俺はそういう事は絶対にしないぞ!!
 俺はこの世界で良い事を沢山して、死んだら天国に連れてってもらうんだから。いかがわしい事、ダメ絶対!
 そう心に誓いつつ、俺達四人はいろんな事が起きた商業都市から王都に向けて旅に出たのだった。
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