57 / 87
【4】百鬼夜行……㉓
しおりを挟むーー僕は、おじさんに何をしてあげられる……?
「あ……ッ」
両手は、越乃の腕を掴み上げていた。
最初は自然に射精し、採取された。が、精神的なものか、勃起も射精もできなくなった。そんな佐加江の精子を絞り取るように、越乃が持って来たのは搾乳機を改造したものだった。
それは、佐加江の父親にも使っていたもの。搾乳部がガラス管になっており、そこへ性器を挿入する。採取された精液は保存処理を施して、スピッツ試験管で窒素凍結するらしい。
『浩太君のおかげで、隠し立てする必要がなくなったから、感謝をしなければいけないね』
下腹部にチリチリとした痛みがあり、もうすぐ発情が近いのでは、と佐加江は予感していた。
『オメガは番ができるとただでさえ少ないのに、さらに射精量が減るからね。今しかないんだ、協力してくれるね。もし、採取量が期待できないようなら、精巣生検するから』
越乃は研究に魂を売った狂人のようだった。
浩太に傷つけられた身体も癒えていないと言うのに、佐加江の陰茎は赤くただれたようになっている。
「ヒ……ッ」
「そろそろ乳首をいじって欲しいだろう」
唾液で濡らした指先で越乃に乳首を捏ねられ、佐加江は腹が引きつって声にならぬ叫び声をあげた。この装置に初めてつながれた時は、なかなか達する事が出来ず、越乃に尻を叩かれると同時に射精した。
青藍との激しくも甘やかだった営みを思い出せない。佐加江の身体はいつしか、恐怖や痛みが伴わないと射精できない身体となっていた。
「母乳がちゃんと出るか、確認してみないとな」
「乳首、ダメ……ッ」
佐加江は爪を噛む。ザラついた舌でレロッと舐められ、吸われた乳首は唇で甘噛みされた。
「佐加江」
越乃がうわごとのように呟き、そこへむしゃぶりつく。佐加江の名を呼ぶたびに、越乃は亡き初恋の人を思い出しているのかもしれない。
「イ……ッッ」
歯先で乳首をギリっと噛まれ、試験管が白く染まった。精液を吸引するために、内部の空気を抜く。その過程で性器も引っ張られるのだ。
「痛い、そんなに吸わないで」
少量であったが、精液が吸い出され一滴も残らず搾り取られる。そんな混沌とした日々の中で佐加江は正常な判断ができなくなって行った。
――研究を終わりにしてもらいたい。
第二の性に囚われている越乃を救ってあげたい。そんな事を考えてはいるが、何も思い浮かばなかった。
「毎日こればかりじゃ、さすがに量が取れないな。後で血液も採らせてな」
今までの保護者としての仮面が外れた越乃は、幼い子供がブロック遊びにでも夢中になるかのように瞳を輝かせていた。
浩太のように手荒な事をする訳ではない。
研究材料として後世にオメガのサンプルを残そうとしているのだ。が、その越乃には後継ぎがいない。第二の性の研究も越乃の代で終わりなのだ。言うなれば、越乃と佐加江は運命共同体ーー。
「……おじさん」
「ああ、少し強く吸い過ぎたな。ごめんな、佐加江。軟膏を塗っておこうか」
佐加江の股の間でガラス管を外し、後処理まで丁寧にしている越乃の姿が滲んで見えた。
「おじさん」
言いたくはなかった。
「ん?」
「跡継ぎ、欲しい……?」
誰からも認められることのない研究を、白髪が交じるまでしてきた越乃が哀れで仕方なかった。
決して心移りした訳ではない。
情に絆され、こぼれ落ちるように口から出た言葉だった。
「うん。佐加江との赤ちゃんが欲しい」
越乃は満面の笑みで何度も頷いていた。
鬼の紋がありながら、それはとても恐ろしい事だとすぐに気付いた。が、心の底でいつからか思っていた事だった。
1
お気に入りに追加
388
あなたにおすすめの小説
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
君がいないと
夏目流羽
BL
【BL】年下イケメン×年上美人
大学生『三上蓮』は同棲中の恋人『瀬野晶』がいても女の子との浮気を繰り返していた。
浮気を黙認する晶にいつしか隠す気もなくなり、その日も晶の目の前でセフレとホテルへ……
それでも笑顔でおかえりと迎える晶に謝ることもなく眠った蓮
翌朝彼のもとに残っていたのは、一通の手紙とーーー
* * * * *
こちらは【恋をしたから終わりにしよう】の姉妹作です。
似通ったキャラ設定で2つの話を思い付いたので……笑
なんとなく(?)似てるけど別のお話として読んで頂ければと思います^ ^
2020.05.29
完結しました!
読んでくださった皆さま、反応くださった皆さま
本当にありがとうございます^ ^
2020.06.27
『SS・ふたりの世界』追加
Twitter↓
@rurunovel
公爵に買われた妻Ωの愛と孤独
金剛@キット
BL
オメガバースです。
ベント子爵家長男、フロルはオメガ男性というだけで、実の父に嫌われ使用人以下の扱いを受ける。
そんなフロルにオウロ公爵ディアマンテが、契約結婚を持ちかける。
跡継ぎの子供を1人産めば後は離婚してその後の生活を保障するという条件で。
フロルは迷わず受け入れ、公爵と秘密の結婚をし、公爵家の別邸… 白亜の邸へと囲われる。
契約結婚のはずなのに、なぜか公爵はフロルを運命の番のように扱い、心も身体もトロトロに溶かされてゆく。 後半からハードな展開アリ。
オメガバース初挑戦作なので、あちこち物語に都合の良い、ゆるゆる設定です。イチャイチャとエロを多めに書きたくて始めました♡ 苦手な方はスルーして下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる