スキルテスター!本来大当たりなはずの数々のスキルがハズレ扱いされるのは大体コイツのせいである

騎士ランチ

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第四章カマヤロウ考察編

考察9:カマヤロウ、変態を見せつけられる

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「いやー、バチバチやりあってるな。俺、手伝った方が良い?」

 駆けつけたのはテスターだった。勝ち筋が見えたジェニファーは安堵し、肉ちゃん達は冷や汗を流す。

「ジェニファーさん怪我してんじゃん。ホラ、エリクサー使いなよ」
「サンキューなのだ」

 テスターから赤い薬を受け取り飲み干すジェニファー。数秒後、体内で破裂音がして口から火を噴いた。

「のだー!?」

 プスプスと焦げる音を口から出し、倒れるジェニファーを見て、テスターは親指を立ててニッコニコだった。

「しゃあーっ!ドッキリ大成功や!おう、お前らやったれや!」
「分かりましたー!」

 テスターが何でジェニファーを裏切ったのかは分からない。が、こういう時の肉ちゃんの判断は速い。真っ直ぐに転がりジェニファーを押し潰していく。

「グエー!僕がここで死んだら誰がこの話のラスボスをするのだー!テスター!エリクサーはよなのだ!さっきのじゃない方!青のやつ!」

 肉ちゃんが通過してペラペラになったジェニファーが最後の力を振り絞りテスターに手を伸ばす。

「はいな、受け取れや!」

 ジェニファーの手に二本目の爆薬ポーションが渡される。

「青って言ったのだー!なんで赤なのだぁー!!」

 彼は自分がここで死ぬ事と、テスターのガチ裏切りを確信し狼狽する!

「テスター!何で僕と敵対するのだ!?というか裏切れるはずないのだ!契約はどうなってるのだ!」
「いや、テスターやマーガレットはともかく、『アタシは』あんたなんかと契約しとらんからな」
「『アタシは』?そ、そうなのだ!お前なのだ?」

 ジェニファーからの問いかけにテスターは頷くと、両手で自身の顎を上下に開き始めた。

「ンンンンンンー!」

 一瞬で顎が外れ、口が限界まで開くが、テスターは更に力を込め続ける。遂には口が耳まで裂けて、顔の上下が鍋蓋の様にパッカリと開くと、口の奥から金髪の女性型天使が飛び出して来た。

「ふぃ~、久々のシャバの空気は最高や~。はじめましての人ははじめまして!知ってる人は久しぶり!アタシがスキルを司る四天使の長女ヒースちゃんや!」

 ちゅどーん!

 爆薬ポーションによる爆発をバックに、華麗にポーズを決めるヒース。

「さよならなのだー!」

 ジェニファーは死んだ。堕天使は天使と違い、制約無しでフルパワーで戦える利点があるが、基本死んだらそれまでである。雇用主の力が神様>魔王だし、しょうがないね。

「ブラボー!何だかわかりませんが、肉ちゃん達と天狗様の合せ技で最大の敵である悪い天狗様を打倒したのですね!」
「状況的に、テスタメント殿下と契約していた天使とは思うのだけど、今まで何をしていたのよ?そして、何なのよこの状況!?」
「家族や同族の仇を倒せたけど、何だか複雑な気分ゴブ…。鑑定しても天使としか出ないし」
「知ってた。全ては私の計算通りだよ。良くやったヒース。この者達にも分かる様に説明してやれ」

 テスターの中から出てきたヒースに対し、四者四様のリアクション。

「全く、相変わらずやなカスヤロウは。まあええわ。アタシととマーガレットとそこで倒れとる馬鹿金髪が、堕天使ジェニファーに捕まった所さんから説明すればええか?」
「ああ、そこまでの話は私がこの者達に伝えた」
「いえっ、肉ちゃんは初耳ですよ!テスターさんは魔王軍幹部エルダーリッチじゃないんですか?」
「ちゃうわ。黙って聞いとれデブ」

 以前と変わらぬ失礼な口調でヒースは己の視点で今まで何があったかを語り始めた。

 ちなみに、テスターは口が裂けて全身脱臼と脱水症状の上に爆発の余波を受けていたが、めずらしく死んでいなかった。下手に治療するとまた自害しそうだし、今の彼が敵か味方か不確定なので、アレックス達はテスターに注意しつつ基本放置の方向でヒースの話に耳を傾ける事にした。
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