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第四章カマヤロウ考察編
考察1:カマヤロウ、スキルが広まる未来を危険視する
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天からやってきた少女により、彼の人生は一変する。具体的に言うと、的の数が足りず報酬は無し。更に仕事も貰えなくなってしまった。
「依頼未達成の違約金については、無事な的の代金で相殺しておきます。では契約はこれまでという事で」
的が足りない事を知った依頼人は、無慈悲な言葉を残して帰って行ってしまった。
「はあ、とうとう無職になってしまったわ」
「へー、オジサン暇になっちゃったんだ」
アレックスが稼ぎを失ったというのに、その原因であるしのぶはニッコニコだ。他の天使もあまり人間の都合を考えないタイプだが、神に甘やかされていたしのぶは特に自己中だった。
「アンタのせいでこうなったのよ。というか、アンタ誰なの?」
「あ、ゴタゴタしてて自己紹介が遅れた~。ウチはしのぶ。一応天使してま~す」
「天使ぃ?そんなはず…いや、天使だわアンタ」
常識的に考えて嘘だと言おうとしたアレックスだったが、しのぶが擬態と暗示を解除したのを見て、天使だと認めるしかなくなった。納得して貰えたしのぶは再び羽を隠すと、毎度お馴染みの契約者を取り出す。
「オジサン当分暇になるじゃん?ちょっちスキル試用のお手伝いしてくんね?」
「それ、神の契約書じゃない!見せなさい!」
しのぶの手から契約書を取り上げ、高速で目を通していく。本業が契約魔術の研究であるアレックスは、サクサクと全文に目を通し内容を理解していく。
「そう、貴女は聖女の力を民に与えるとどうなるかを確かめに来たのね」
「ま~そんな感じ?ウチはこの国で一番力を求め困ってる人を検索して、ここに来たワケだし~、当然サインしてくれるよね?」
「お断りよ」
「うんうん、サインしてくんないんだ。…マ?」
予想外の展開にビックリするしのぶ。困ってる人の所さんに降臨して偉そうに契約書出して、お前は神に選ばれたんやでって言えばまず上手くいく。そう教わっていたしのぶには、ここでノーと言われるのは理解出来なかった。
「何でぇ?オジサン困ってたんじゃないの~、あ、もしかしてウチが的を踏んで壊したの怒ってる?メンゴメンゴ。でもスキルを使えば億万長者になれるから契約しなって!今だけのチャンスだし」
「そのスキルというのが問題なのよ。この契約書には、いずれ全人類に聖女の力の一部であるスキルが与えられると書かれているわよね?」
「そ~そ~、そんな感じ~」
「そうなったら、スキルの差で人生が決まるクソみたいな時代が来るに決まってるじゃない。スキルを手にした未来の人達は、魔王そっちのけで足を引っ張り合って衰退していくわ」
アレックスは、人類にスキルが与えられる様になった未来が明るいものではないと考えた。
アレックスは知っている。聖女の力にすがり、そのおこほれで成り上がろうとした者達の醜さを知っている。アレックス自身、その醜い存在の一人だった。
そして、そんな自分達が特別な人間で無い事も理解していた。とてつも無い力に触れ、妬み争い利用しようとするのは、この世の人間の大半に当てはまる。彼らは力に触れる機会が無かったから、身の丈に合った生活をする善人でいられただけだ。
「聖女の力は例え数十に分散しても圧倒的なものよ。しかも、スキル毎の力は均一じゃないのよね?」
「そだね」
「そうなると、強いスキルが貰えた奴が王を倒し支配者になる修羅の時代になるわ。この大陸全土がインゲンみたいになるって事よ。魔王の支配の方がマシだわ。だから、私は試用者にはならな…」
「うっさーい!」
突如しのぶは飛び上がってアレックスに覆いかぶさると、豊満な胸を顔面に押し付けた。
「人間如きが天使に逆らうんじゃねー!せっかくウチが選んてやったんだから大人しく言う事聞け!ホラホラ、オッパイだよ~」
「ムゴー!」
しのぶは本当に自己中かつ、頭の悪い天使だった。人間の男は美人で天使で巨乳な自分に絶対従うと思い込んでいた。だから、中々契約しないアレックスに苛立ち、こんな事をしてしまうのだ。
「ウチはオメーが力を欲しがってたから来てやったんだよ!それなのに、な~にを渋ってるんだっての!」
「モガー!モガー!」
このままでは胸で窒息してしまう。その危機に遂にリブが動いた。
「何か難しい話をしていたからずっと黙っていたけど、パパが死にそうになってるゴブ!」
リブにはスキル試用者契約の事は分からない。ただ、目の前の女が契約を求めていて、床に放置された契約書にサインを貰うまではパイ固めを続行するだろう事は分かった。
「サインが欲しいなら、リブが書くから、パパを離すゴブー!」
「えっ」
予想外の展開に驚愕したしのぶが振り返る。今まで眼中に無かったお手伝いゴブリンが突然叫びだし、契約書にペンを走らせている。
「ちょ、マ!?」
「マ!ゴブ!」
止めようとしたしのぶだったが、既にリブは名前を契約書に書き終わっていた。
【私は契約内容を理解した上で神との本契約を結び、スキル試用者として励む事を誓います。リブート・カーマン】
「さあ、契約したからパパを苦しめるのは辞めるゴブ!」
「「こ、こいつやりやがったー!!」」
アレックスとしのぶの意見が初めて一致した。今回のプロジェクト的に、ゴブリンが試用者になるのはマズイというのは、流石にしのぶでも理解出来た。
「ゴブ?」
分かってないのはリブだけだった。
「依頼未達成の違約金については、無事な的の代金で相殺しておきます。では契約はこれまでという事で」
的が足りない事を知った依頼人は、無慈悲な言葉を残して帰って行ってしまった。
「はあ、とうとう無職になってしまったわ」
「へー、オジサン暇になっちゃったんだ」
アレックスが稼ぎを失ったというのに、その原因であるしのぶはニッコニコだ。他の天使もあまり人間の都合を考えないタイプだが、神に甘やかされていたしのぶは特に自己中だった。
「アンタのせいでこうなったのよ。というか、アンタ誰なの?」
「あ、ゴタゴタしてて自己紹介が遅れた~。ウチはしのぶ。一応天使してま~す」
「天使ぃ?そんなはず…いや、天使だわアンタ」
常識的に考えて嘘だと言おうとしたアレックスだったが、しのぶが擬態と暗示を解除したのを見て、天使だと認めるしかなくなった。納得して貰えたしのぶは再び羽を隠すと、毎度お馴染みの契約者を取り出す。
「オジサン当分暇になるじゃん?ちょっちスキル試用のお手伝いしてくんね?」
「それ、神の契約書じゃない!見せなさい!」
しのぶの手から契約書を取り上げ、高速で目を通していく。本業が契約魔術の研究であるアレックスは、サクサクと全文に目を通し内容を理解していく。
「そう、貴女は聖女の力を民に与えるとどうなるかを確かめに来たのね」
「ま~そんな感じ?ウチはこの国で一番力を求め困ってる人を検索して、ここに来たワケだし~、当然サインしてくれるよね?」
「お断りよ」
「うんうん、サインしてくんないんだ。…マ?」
予想外の展開にビックリするしのぶ。困ってる人の所さんに降臨して偉そうに契約書出して、お前は神に選ばれたんやでって言えばまず上手くいく。そう教わっていたしのぶには、ここでノーと言われるのは理解出来なかった。
「何でぇ?オジサン困ってたんじゃないの~、あ、もしかしてウチが的を踏んで壊したの怒ってる?メンゴメンゴ。でもスキルを使えば億万長者になれるから契約しなって!今だけのチャンスだし」
「そのスキルというのが問題なのよ。この契約書には、いずれ全人類に聖女の力の一部であるスキルが与えられると書かれているわよね?」
「そ~そ~、そんな感じ~」
「そうなったら、スキルの差で人生が決まるクソみたいな時代が来るに決まってるじゃない。スキルを手にした未来の人達は、魔王そっちのけで足を引っ張り合って衰退していくわ」
アレックスは、人類にスキルが与えられる様になった未来が明るいものではないと考えた。
アレックスは知っている。聖女の力にすがり、そのおこほれで成り上がろうとした者達の醜さを知っている。アレックス自身、その醜い存在の一人だった。
そして、そんな自分達が特別な人間で無い事も理解していた。とてつも無い力に触れ、妬み争い利用しようとするのは、この世の人間の大半に当てはまる。彼らは力に触れる機会が無かったから、身の丈に合った生活をする善人でいられただけだ。
「聖女の力は例え数十に分散しても圧倒的なものよ。しかも、スキル毎の力は均一じゃないのよね?」
「そだね」
「そうなると、強いスキルが貰えた奴が王を倒し支配者になる修羅の時代になるわ。この大陸全土がインゲンみたいになるって事よ。魔王の支配の方がマシだわ。だから、私は試用者にはならな…」
「うっさーい!」
突如しのぶは飛び上がってアレックスに覆いかぶさると、豊満な胸を顔面に押し付けた。
「人間如きが天使に逆らうんじゃねー!せっかくウチが選んてやったんだから大人しく言う事聞け!ホラホラ、オッパイだよ~」
「ムゴー!」
しのぶは本当に自己中かつ、頭の悪い天使だった。人間の男は美人で天使で巨乳な自分に絶対従うと思い込んでいた。だから、中々契約しないアレックスに苛立ち、こんな事をしてしまうのだ。
「ウチはオメーが力を欲しがってたから来てやったんだよ!それなのに、な~にを渋ってるんだっての!」
「モガー!モガー!」
このままでは胸で窒息してしまう。その危機に遂にリブが動いた。
「何か難しい話をしていたからずっと黙っていたけど、パパが死にそうになってるゴブ!」
リブにはスキル試用者契約の事は分からない。ただ、目の前の女が契約を求めていて、床に放置された契約書にサインを貰うまではパイ固めを続行するだろう事は分かった。
「サインが欲しいなら、リブが書くから、パパを離すゴブー!」
「えっ」
予想外の展開に驚愕したしのぶが振り返る。今まで眼中に無かったお手伝いゴブリンが突然叫びだし、契約書にペンを走らせている。
「ちょ、マ!?」
「マ!ゴブ!」
止めようとしたしのぶだったが、既にリブは名前を契約書に書き終わっていた。
【私は契約内容を理解した上で神との本契約を結び、スキル試用者として励む事を誓います。リブート・カーマン】
「さあ、契約したからパパを苦しめるのは辞めるゴブ!」
「「こ、こいつやりやがったー!!」」
アレックスとしのぶの意見が初めて一致した。今回のプロジェクト的に、ゴブリンが試用者になるのはマズイというのは、流石にしのぶでも理解出来た。
「ゴブ?」
分かってないのはリブだけだった。
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