スキルテスター！本来大当たりなはずの数々のスキルがハズレ扱いされるのは大体コイツのせいである

第三章キモヤロウ暴走編

暴走6:キモヤロウ、依頼は出す側

　初代ホーガンの話を聞き終わったレーゼは、なるほどと納得した顔をした。

「聖女を中心とした社会を歪めない為に、過去のホーガンは魔王に直接挑まなかった。そして、ニクちゃんもその教えを守って魔王に挑んでなかったッスね」
「はい！ですが、天狗様が留守の間ニクちゃんは己と向き合い考えを改めたのです！」

　この発言に嘘は無い。相手に本当の意味は全く伝わって無いが。

「聖女の時代が終わりになるから天狗様がニクちゃんの所さんに来てくれたのですよね？ならば、そろそろお婿さん探しの為にも魔王討伐に動いてもいいかもって最近思ってるんですよー」
「婚活の一環で魔王討伐ッスか」

　冗談の様な話だが、準備さえ万全なら本当に魔王倒せそうなのは、これまでの観察で分かっている。

「あ、でも昔のホーガンは当時の天使と契約して魔王と戦わない事になったんスよね？今のホーガンのニクちゃんもその契約対象ならヤバくないッスか？」
「ご心配なく！魔王と戦わなきゃ結婚出来ないと判断出来たなら、その瞬間ニクちゃんはホーガン流を捨て、一般人アイリス・オーヤマとして参戦しますから！」

　ニクちゃんにとっての優先順位は、結婚>強くなる=ホーガン流存続>お金>天狗様>その他。よって、結婚の目処が付きかつその為にホーガン流を捨てねばならないなら捨てられる。

　ついこの間、未来の自らと対話し結婚フラグと魔王戦が密接に関わっていると分かった事で最優先すべき結婚への欲求が更に高まったニクちゃんは、遂に具体的に動く決意したのだった。

「さて、実際に魔王とやるのかやらないのかはその時が来たら結婚出来そうな選択を取るとしましてー」
「あくまでも結婚第一なんスね」
「うーん、船が要りますね！多分、魔王倒しに行くって言っても普通の人は船を出してくれないでしょうし」

　正解である。実際、この頃にテスターが航海手段を得られず足留めをされていた。(前章参照)

「と、言うわけで船を作ります！天狗様、手伝って下さい！」
「作るッス？買うしゃなくて？」
「そうです！そして、こういう時こそツワモノ酒場なんですよ！」

　ツワモノ酒場とはインゲンに住むツワモノ達が依頼を受け魔物退治や薬草などを集める場所。

「どこに連れて行かれるかと思ったら、冒険者ギルドじゃないッスか」
「他国の人からはそう呼ばれています！では、ニクちゃんは船大工さんと雑用さんを雇って来ますので！」

　ニクちゃんが受付嬢に依頼書を持っていくと、ギルド職員の間でどよめきが起こる。

「ええっ、道場の裏山で材木を運搬するだけでこの金額を！」
「こちらには、凄く割高な船大工の依頼！更にヨコヅナ級ツワモノの募集まで！」
「こんな美味しい依頼を持ってくるなんて、あんた一体…ニクちゃんじゃねえか！ニクちゃんなら普通にやるわ！」

　ニクちゃんが職員にチヤホヤされている間、暇になったレーゼは何気なく掲示板を見ていた。

【神の契約書を持ちし者、アーモンド王国へ来たれ】
『私達は三人の人間を探しています。それは、天使と契約し神の恩恵を日替わりで受ける不死身の人間です。心当たりのある方は、アーモンド王国中央ギルドまでお越し下さい。力を合わせ魔王を倒しましょう』

「なんスかこれは？」

　掲示板に書かれた内容、そこにはスキル試用者を求めるかの様な事が書かれていた。

「受け付けさん、この掲示板のやつは誰が貼ったんスか？」
「ああ、その広告は聖女会のお偉いさんの使いが持ってきたものですよ。新たな聖女が魔王退治に旅立つとかなんとか広めているから、その関係でしょうね」

　聖女というワードを聞いて、レーゼはこの話をインチキだと即座に判断した。聖女はもういない。それはレーゼが持つ確実な情報。そしてレーゼは天使である。天使は物事に対し真実か嘘かのみで判断してしまう癖がある。なので、彼はこの情報に大きな嘘がある時点で思考が固まり、関わらない方が良い詐欺として無視してしまう。

　そして、受付嬢と話してる間にテスターとヒースが後ろをコソコソ通り過ぎて行ったが、それにも気付かなかった。